都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「篠山紀信展」 東京オペラシティアートギャラリー
東京オペラシティアートギャラリー
「篠山紀信展 写真力」
10/3-12/24
東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「篠山紀信展 写真力」へ行ってきました。
名だたる写真家の中でも抜群の知名度を誇る篠山紀信。各方面での活躍にも関わらず、意外にも美術館では一度も回顧展が開かれたことがありませんでした。
断言します。失礼ながら篠山紀信の写真を殆ど追っかけなかった私でも、この展覧会は驚くほどに魅力的であり、また感動的ですらありました。
さてともかくエネルギッシュでまた生気に満ち溢れた写真を撮る紀信、まずは何を提示するのかと思いきや、冒頭は「GOD:鬼籍に入られた人々」、つまり既に亡くなられた方を捉えた作品です。
紀信は写真家を「時の死」の立会い人であると看破します。
「吉永小百合」1988年
しかしながら亡くなられた方々とはいえ、モデルの生き生きとした表情、また次の「STAR:すべての人々に知られる有名人」にも通じる、言わば最もかっこ良い姿を取り出すのが紀信流。
逆にスターがまさにスターとして輝く「STAR」では、時にスターらしからぬ姿、ようは何気ない日常の仕草を切り取るところも興味深いところです。
人間の持つ日常と非日常、また内と外の双方を抉り取ってのポートレート、まさに全人格的とも言える写真の展開に圧倒されました。
「篠山紀信 at 東京ディズニーリゾート New MAGIC/講談社」
フィクション、つまり作られた空間を、本来的に作られる平面としてある写真へ切り出した「SPECTACLE:私たちを異次元に連れ出す夢の世界」も、写真の本質を問いただす意欲的なシリーズと言えるのかもしれません。
ここで印象深いのはディズニーランドを写したいくつかの作品です。そこには来場者の姿はなく、あの作り込んだ建物とお馴染みのマスコット、そしてキャストだけが登場。まさに夢の国、究極の異世界のみを、何ら違和感なく、有り体に示しています。
「坂東玉三郎 『籠釣瓶花街酔醒』 八ツ橋」1999年
それは歌舞伎を写した作品でも同様。時にアクロバティックな動きをとる生身の人間の身体性も切り出していますが、やはり歌舞伎の世界をまさにワンダーランドとして包み隠されずに演出。
それにしてもディズニーしかり歌舞伎しかり、紀信の捉える写真は何故にこれほど色に力があるのでしょうか。画家ならぬ、写真家としてのカラリスト紀信、舞い乱れる色の美しさ、激しさに酔ってしまうほどでした。
「MANUEL LEGIS」1999年
もちろん「BODY:裸の肉体、美とエロスの闘い」からヌードも圧巻の一言。甘酸っぱい官能を感じながらも、人体とはかくも逞しくまた美しいのか。終始そう思ってなりませんでした。
ラストに控えるのは、一転してモノクロームで統一された「ACCIDENTS:2011年3月11日、東日本大震災で被災された人々の肖像」のシリーズ。いうまでもなく先の3.11で被災された方々を写したシリーズに他なりません。
「大友瑠斗(9) 大友乃愛(7) 名取市」2011年
それこそ全身で向き合うかのように真っ正面から向き合った人の姿。そして背後におぼろげに写る瓦礫の山。無残なまでの状況と、その一方での人の生活。そして静かなる生への意思。
私の拙い言葉で今更どう表現しても虚しいばかりですが、一点一点、必ずしも雄弁ではないにしろ、作品を超えて語りかけてくる人の想いを感じずにはいられません。
ATOKATA(あとかた)/篠山紀信/日経BP社」
写真から伝わってくる時代性や人間の意思。うまく表現で出来ないのがもどかしいところですが、タイトルにもある「写真力」、そうしたものに打ちのめされるような展覧会でした。
「芸術新潮2012年10月号/新潮社」
ミュージアムショップで流される紀信のインタビュー映像がまた見応え十分です。ラストの一言に思わずにやりとさせられました。
会場はかなり賑わっていました。会期末に向けて混雑してくるかもしれません。
「THE PEOPLE by KISHIN/パイインターナショナル」
12月24日までの開催です。おすすめします。
「篠山紀信展 写真力」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:10月3日(水)~12月24日(月・祝)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大・高生800(600)円、中・小生600(400)円。
*( )内は15名以上の団体料金。土・日・祝は小中学生無料。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
「篠山紀信展 写真力」
10/3-12/24
東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「篠山紀信展 写真力」へ行ってきました。
名だたる写真家の中でも抜群の知名度を誇る篠山紀信。各方面での活躍にも関わらず、意外にも美術館では一度も回顧展が開かれたことがありませんでした。
断言します。失礼ながら篠山紀信の写真を殆ど追っかけなかった私でも、この展覧会は驚くほどに魅力的であり、また感動的ですらありました。
さてともかくエネルギッシュでまた生気に満ち溢れた写真を撮る紀信、まずは何を提示するのかと思いきや、冒頭は「GOD:鬼籍に入られた人々」、つまり既に亡くなられた方を捉えた作品です。
紀信は写真家を「時の死」の立会い人であると看破します。
「吉永小百合」1988年
しかしながら亡くなられた方々とはいえ、モデルの生き生きとした表情、また次の「STAR:すべての人々に知られる有名人」にも通じる、言わば最もかっこ良い姿を取り出すのが紀信流。
逆にスターがまさにスターとして輝く「STAR」では、時にスターらしからぬ姿、ようは何気ない日常の仕草を切り取るところも興味深いところです。
人間の持つ日常と非日常、また内と外の双方を抉り取ってのポートレート、まさに全人格的とも言える写真の展開に圧倒されました。
「篠山紀信 at 東京ディズニーリゾート New MAGIC/講談社」
フィクション、つまり作られた空間を、本来的に作られる平面としてある写真へ切り出した「SPECTACLE:私たちを異次元に連れ出す夢の世界」も、写真の本質を問いただす意欲的なシリーズと言えるのかもしれません。
ここで印象深いのはディズニーランドを写したいくつかの作品です。そこには来場者の姿はなく、あの作り込んだ建物とお馴染みのマスコット、そしてキャストだけが登場。まさに夢の国、究極の異世界のみを、何ら違和感なく、有り体に示しています。
「坂東玉三郎 『籠釣瓶花街酔醒』 八ツ橋」1999年
それは歌舞伎を写した作品でも同様。時にアクロバティックな動きをとる生身の人間の身体性も切り出していますが、やはり歌舞伎の世界をまさにワンダーランドとして包み隠されずに演出。
それにしてもディズニーしかり歌舞伎しかり、紀信の捉える写真は何故にこれほど色に力があるのでしょうか。画家ならぬ、写真家としてのカラリスト紀信、舞い乱れる色の美しさ、激しさに酔ってしまうほどでした。
「MANUEL LEGIS」1999年
もちろん「BODY:裸の肉体、美とエロスの闘い」からヌードも圧巻の一言。甘酸っぱい官能を感じながらも、人体とはかくも逞しくまた美しいのか。終始そう思ってなりませんでした。
ラストに控えるのは、一転してモノクロームで統一された「ACCIDENTS:2011年3月11日、東日本大震災で被災された人々の肖像」のシリーズ。いうまでもなく先の3.11で被災された方々を写したシリーズに他なりません。
「大友瑠斗(9) 大友乃愛(7) 名取市」2011年
それこそ全身で向き合うかのように真っ正面から向き合った人の姿。そして背後におぼろげに写る瓦礫の山。無残なまでの状況と、その一方での人の生活。そして静かなる生への意思。
私の拙い言葉で今更どう表現しても虚しいばかりですが、一点一点、必ずしも雄弁ではないにしろ、作品を超えて語りかけてくる人の想いを感じずにはいられません。
ATOKATA(あとかた)/篠山紀信/日経BP社」
写真から伝わってくる時代性や人間の意思。うまく表現で出来ないのがもどかしいところですが、タイトルにもある「写真力」、そうしたものに打ちのめされるような展覧会でした。
「芸術新潮2012年10月号/新潮社」
ミュージアムショップで流される紀信のインタビュー映像がまた見応え十分です。ラストの一言に思わずにやりとさせられました。
会場はかなり賑わっていました。会期末に向けて混雑してくるかもしれません。
「THE PEOPLE by KISHIN/パイインターナショナル」
12月24日までの開催です。おすすめします。
「篠山紀信展 写真力」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:10月3日(水)~12月24日(月・祝)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大・高生800(600)円、中・小生600(400)円。
*( )内は15名以上の団体料金。土・日・祝は小中学生無料。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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