都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「風間サチコ展 没落THIRD FIRE」 無人島プロダクション
無人島プロダクション
「風間サチコ展 没落THIRD FIRE」
2012/12/8~2013/1/19

無人島プロダクションで開催中の「風間サチコ展 没落THIRD FIRE」へ行ってきました。
「没落」。このどこか不吉でかつ、マイナスのベクトルを持つ言葉をタイトルに掲げた展覧会。一体何を意味するのか、その全ては作品にこめられたメッセージにあります。
端的に述べればそれは、原子力発電とそれを取り巻く組織や人間の「没落」に他なりません。
まずは入って正面、横4メートルを超える新作の「噫!怒涛の閉塞艦」から。

風間サチコ「噫!怒涛の閉塞艦」
一目で誰もがあの戦慄の瞬間を思い出すイメージ。激しき波に揉まれ、今にも横転、沈没しそうになっている船の上に載っているものこそ、東日本大震災により未曾有の原子力災害をもたらした福島第一原発の建屋、その水素爆発の瞬間、そしてそれを管轄する東京電力の本店です。
左には過去、つまり広島・長崎の原爆と、ビキニ環礁で被爆した第五福竜丸の船影を、そして右には未来の姿として放射線の汚染を調査する観測船を原子力船むつの亡霊として描写。かの原子力災害を一つの大きな時間の流れの中で捉えています。
それにしてもこの猛烈な波、当然の如く、かの大津波の再現であるわけですが、元になるビジュアルがありました。

風間サチコ「噫!怒涛の閉塞艦」(部分)
実はこの波、そして船は、戦前に日本が「果敢に波をくぐり抜けて勇ましく進む軍艦」として描き、発行した絵葉書の図柄、そのものなのです。
風間は言わばプロパガンダ的な「戦争神話」を原子力の「安全神話」に置き換え、ご覧の通りその崩壊、そして没落というプロセスを表現しています。
そうして見た時に受ける恐ろしいまでの歴史の教訓。要するに神話は神話に過ぎず、結果としての現実は悲惨なものであったということが、それこそ平面上において時空を超えて重なり合います。
引きちぎれた日の丸、そして船に掲げられた東電のマーク。もちろん賛否はあるかもしれません。しかしながらこれほど直裁的に、しかも圧倒的な迫力をもってかの原子力事故を描き、また時代との関わりを捉えた作品があったのか。それを考えただけでも、頭がくらくらするほどの衝撃を受けました。
さて風間の原子力政策への強い批判的態度はこの作品だけにとどまりません。
痛烈なまでに政治色を帯びた「獄門核分裂235」。一体、何が描かれているのでしょうか。

風間サチコ「獄門核分裂235」
有り体に述べればそれは過去から今へと至る「原子力村」への強い怒りを帯びた糾弾です。
旧内務省、そして国会、また経産省などの「権力」を背景に飛び交う6つの顔。これこそ中央の原子核の周りに群がる戦前の大政翼賛会、そして戦後、原子力を日本に導入した政治家たちの姿なのです。
風間はキャプションでこう述べています。
アメリカの思惑として旧体制派の結託は「臨界」に達し、「平和利用」の美辞を建前に被爆国・日本は核分裂をはじめた。
風間によれば第五福竜丸事件の起きた1954年3月1日の翌日、日本で初めて原子力関連の予算が国会で可決されました。しかも予算の額はウラン235に因んでの2億3500万円。

風間サチコ「黎明のマーク1」
このブログでは原発の問題について云々するつもりはありません。
しかしこうした事実を読み解き、迫力ある作品として表現した風間のメッセージ。それは脱原発派に届くだけでなく、原発推進派を巻き込んでの議論を提起するきっかけになるのではないでしょうか。
さらにアップは自粛しますが、いくつかのスケッチにおいても風間のスタンスが明確に示されています。こちらも必見です。
2013年1月19日まで開催されています。強力におすすめします。
*年末年始(12/24~1/7)は休廊。年内の開廊は23日(日・祝)までです。ご注意下さい。
「風間サチコ展 没落THIRD FIRE」 無人島プロダクション(@mujipro)
会期:2012年12月8日(土)~2013年1月19日(土)
休廊:月・祝日。年末年始(12/24~1/7)。
時間:火~金、12:00~20:00 土~日、11:00~19:00
住所:江東区三好2-12-6 SNAC内
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩2分。都営大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩4分。
「風間サチコ展 没落THIRD FIRE」
2012/12/8~2013/1/19

無人島プロダクションで開催中の「風間サチコ展 没落THIRD FIRE」へ行ってきました。
「没落」。このどこか不吉でかつ、マイナスのベクトルを持つ言葉をタイトルに掲げた展覧会。一体何を意味するのか、その全ては作品にこめられたメッセージにあります。
端的に述べればそれは、原子力発電とそれを取り巻く組織や人間の「没落」に他なりません。
まずは入って正面、横4メートルを超える新作の「噫!怒涛の閉塞艦」から。

風間サチコ「噫!怒涛の閉塞艦」
一目で誰もがあの戦慄の瞬間を思い出すイメージ。激しき波に揉まれ、今にも横転、沈没しそうになっている船の上に載っているものこそ、東日本大震災により未曾有の原子力災害をもたらした福島第一原発の建屋、その水素爆発の瞬間、そしてそれを管轄する東京電力の本店です。
左には過去、つまり広島・長崎の原爆と、ビキニ環礁で被爆した第五福竜丸の船影を、そして右には未来の姿として放射線の汚染を調査する観測船を原子力船むつの亡霊として描写。かの原子力災害を一つの大きな時間の流れの中で捉えています。
それにしてもこの猛烈な波、当然の如く、かの大津波の再現であるわけですが、元になるビジュアルがありました。

風間サチコ「噫!怒涛の閉塞艦」(部分)
実はこの波、そして船は、戦前に日本が「果敢に波をくぐり抜けて勇ましく進む軍艦」として描き、発行した絵葉書の図柄、そのものなのです。
風間は言わばプロパガンダ的な「戦争神話」を原子力の「安全神話」に置き換え、ご覧の通りその崩壊、そして没落というプロセスを表現しています。
そうして見た時に受ける恐ろしいまでの歴史の教訓。要するに神話は神話に過ぎず、結果としての現実は悲惨なものであったということが、それこそ平面上において時空を超えて重なり合います。
引きちぎれた日の丸、そして船に掲げられた東電のマーク。もちろん賛否はあるかもしれません。しかしながらこれほど直裁的に、しかも圧倒的な迫力をもってかの原子力事故を描き、また時代との関わりを捉えた作品があったのか。それを考えただけでも、頭がくらくらするほどの衝撃を受けました。
さて風間の原子力政策への強い批判的態度はこの作品だけにとどまりません。
痛烈なまでに政治色を帯びた「獄門核分裂235」。一体、何が描かれているのでしょうか。

風間サチコ「獄門核分裂235」
有り体に述べればそれは過去から今へと至る「原子力村」への強い怒りを帯びた糾弾です。
旧内務省、そして国会、また経産省などの「権力」を背景に飛び交う6つの顔。これこそ中央の原子核の周りに群がる戦前の大政翼賛会、そして戦後、原子力を日本に導入した政治家たちの姿なのです。
風間はキャプションでこう述べています。
アメリカの思惑として旧体制派の結託は「臨界」に達し、「平和利用」の美辞を建前に被爆国・日本は核分裂をはじめた。
風間によれば第五福竜丸事件の起きた1954年3月1日の翌日、日本で初めて原子力関連の予算が国会で可決されました。しかも予算の額はウラン235に因んでの2億3500万円。

風間サチコ「黎明のマーク1」
このブログでは原発の問題について云々するつもりはありません。
しかしこうした事実を読み解き、迫力ある作品として表現した風間のメッセージ。それは脱原発派に届くだけでなく、原発推進派を巻き込んでの議論を提起するきっかけになるのではないでしょうか。
さらにアップは自粛しますが、いくつかのスケッチにおいても風間のスタンスが明確に示されています。こちらも必見です。
2013年1月19日まで開催されています。強力におすすめします。
*年末年始(12/24~1/7)は休廊。年内の開廊は23日(日・祝)までです。ご注意下さい。
「風間サチコ展 没落THIRD FIRE」 無人島プロダクション(@mujipro)
会期:2012年12月8日(土)~2013年1月19日(土)
休廊:月・祝日。年末年始(12/24~1/7)。
時間:火~金、12:00~20:00 土~日、11:00~19:00
住所:江東区三好2-12-6 SNAC内
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩2分。都営大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩4分。
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