「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」 原美術館

原美術館
「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」 
2012/12/7-2013/3/10



原美術館で開催中の「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」へ行ってきました。

映像と彫刻。その異なる素材と表現の志向からすると、同じ空間に取り合わせることは滅多にないかもしれません。

しかしながら本展では双方をほぼ同一の場で等しく展示。結果、映像の「動」と彫刻の「静」が対峙し、時に響き合うという、これまでにはなかった空間を作りあげることに成功しました。


ルイ・シャフェス「虚無より軽く」2012年 鉄にペイント

それではまず作家の紹介から。映画監督として国際的に活躍するペドロ・コスタ(映像)と、ヴェネチア・ビエンナーレなどにも出品歴のあるルイ・シャフェス(彫刻)。ようは二人展の形式をとっています。


作家:ペドロ・コスタ

二人はともにポルトガル人。2005年に現地で開催された展覧会をきっかけに親交を深め、今回、全く場所を移し、ここ日本、東京の原美術館にて展示を行うことになりました。

さてともかく原美術館といえば空間そのものの面白さ。実は彼らもこの場を一度見てから展示プランを練っています。


ペドロ・コスタ「火の娘たち」2012年 3チャンネルプロジェクションおよびサウンド
ルイ・シャフェス「私が震えるのを見よ」2005年 鉄にペイント セラルヴィス美術館


早速、エントランス先からコラボレーション。3面スクリーンによるコスタの「火の娘たち」とシャフェスの彫刻「私が震えるのを見よ」が対峙。

私の拙い写真では分かりにくいかもしれませんが、シャフェスは映像のあるスペースにおいて作品を舞台装置とも言える無機的なフォルムに仕立て上げているのもポイントです。


ペドロ・コスタ「カザル ダ ボバ地区」2005年 1チャンネルプロジェクションおよびサウンド セラルヴィス美術館

それはメインのスペース、ギャラリー2でも同様。まるでモノリスを思わせるような一枚の板が起立するシャフェス「私は寒い」の向こうに、コスタの映像「カザル ダ ボバ地区」が。シャフェスの彫刻には幾つかの穴があり、そこから映像を眺めるのもまた面白いかもしれません。

さてシャフェス、映像のない空間では趣きを一変、有機的なフォルムへと転化させています。


ルイ・シャフェス「燃やされた声の灰塵」2012年 鉄にペイント

直線から曲線、そして立方体から球体へ。階段の壁に連なる「燃やされた声の灰燼」、あたかも建物に寄生する何らかの生物だと言えないでしょうか。


ルイ・シャフェス「香り(眩惑的にして微かな)3」2012年 鉄にペイント

またおすすめは2階の「香り(眩惑的にして微かな)3」。この見事な曲線と効果的なライティングによる影の美しさ。

実は彼の作品はいずれも鉄によって出来ています。その素材に由来する重厚さをあえて打ち消しての浮遊感、そして独特の生命感も魅力だと言えそうです。

さてラストにコスタの映像をあげましょう。2階最奥部のギャラリー5には、スクリーンの表と裏に投影された「少年という男、少女という女」という映像作品が展示されています。


ペドロ・コスタ「少年という男、少女という女」2005年 2チャンネルプロジェクションおよびサウンド セラルヴィス美術館

映像の具体的な内容について触れるのは控えますが、コスタの魅力として、本来的には全く異なるものの、画面の時に絵画的とも言うべき展開があります。伝統的な静物画やホッパーの室内空間を連想させるシーン、それ自体が強いイメージとして目に焼きつきました。

またもう一つ重要なのは映像から流れる効果音です。直接的に出処が描かれないにも関わらず、音がシーンを牽引し、画面の中、もしくは画面に連続する外の空間の事件性を喚起させます。

なおコスタ映像、長いもので1時間弱、またもう一点は40分ほどあります。時間に余裕をもっての観覧がおすすめです。

ちなみにタイトルの「無」とは映画監督の小津安二郎の墓碑に刻まれた文字に由来するそうです。美術ファンだけでなく、映画ファンにとっても見逃せない展示かもしれません。

@taktwiさんが@haramuseumさんによる作家記者会見のツイートをまとめて下さいました。

「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」展@原美術館 記者会見



関連のプログラムが大変に充実しています。

「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」開催概要、及び関連イベント情報

2013年3月10日まで開催されています。

「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」 原美術館@haramuseum
会期:2012年12月7日(金)~2013年3月10日(日)
休館:月曜日。(但し祝日にあたる12月24日、1月14日、2月11日は開館し、翌12月25日、1月15日、2月12日は休館)。年末年始(12/28~1/4)。
時間:11:00~17:00。*毎週水曜日は20時まで開館。
料金: 一般1000円、大高生700円、小中生500円
 *原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。

注)写真は内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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