都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「八木良太展 サイエンス/フィクション」 神奈川県民ホールギャラリー
神奈川県民ホールギャラリー
「八木良太展 サイエンス/フィクション」
2014/12/21-2015/1/17
神奈川県民ホールギャラリーで開催中の「八木良太展 サイエンス/フィクション」を見て来ました。
いわゆるメディア・アーティストとして多方面で活動中の八木良太。近年にはヨコハマトリエンナーレやMOTでのグループ展、また「日常/オフレコ」(2014年、神奈川芸術劇場。)にも出展がありました。代表的な「氷のレコード」や「ヴィデオ・スフィア」などには馴染みのある方も多いかもしれません。
これほど大規模な個展は初めてではないでしょうか。延べ床面積は1300平方メートル。しかも天井高6メートルの大展示室といった、個性的な空間が持ち味のギャラリーでもあります。
会場内、撮影が出来ました。
八木良太展 Room1「Threshold/知覚の扉」
さて聴覚や視覚の細やかな部分に働きかける八木のアプローチ、それは1階冒頭の「知覚の扉」にも良く表れていたと言えるかもしれません。
台の上に置かれているのは小さな目覚まし時計や砂時計です。そこからヘッドホンが繋がっています。まずは耳に当てて聞いてみました。
いきなりネタバレになりますが、これらはいずれも時計の内部の音を聞かせているもの。砂時計の砂の落ちる音や、チクタク動く時計の針の音がクリアに聞こえてきます。
「Cicada」 2008年 蝉、真鍮、オーディオプレイヤー、イヤホン
蝉の鳴き声がしました。とは言え、ここは建物の中、蝉などいるはずもありません。やはりイヤホンです。録音された蝉の声が館内に響きわたります。構造そのものは至ってシンプル、天井から蝉の抜け殻付きのイヤホンが吊るされるだけですが、不思議と夏の情景も浮かび上がってきます。思わず目を閉じて耳を澄ませてしまいました。
「Still Life」 2013年 紙にシルクスクリーン、3Dメガネ
聴覚から視覚への展開です。備付けの二つの眼鏡を手にとりましょう。3D眼鏡です。それをかけて平面やオブジェを眺めるとどうなるのか。ずばり奥行きが生じます。かなりアナログ。どこか懐かしい感じもしますが、飛び出す絵本さながらの仕掛けです。ついつい眼鏡をかざしては見比べてしまいます。
「Chroma Depth」 2013・2014年 スーパーボール、クロマデプスメガネ
こうした目覚まし時計やスーパーボール、それに後に登場するレコードなど、既製品を多く用いているのも特徴です。身近な素材にアイデアを加えては思いもよらない感覚的な刺激を呼び起こす。何気ないアイデアが「場」をがらりと変化させます。タイトルの「サイエンス/フィクション」はSFの意味ですが、それを藤子不二雄は「すこしふしぎ」と解釈したとか。この「すこしふしぎ」。確かに八木の作品を表した言葉だと言えそうです。
「Mirror and Chair」 2012年 オーディオプレイヤー、ヘッドホン、椅子
鏡と椅子の「Mirror and Chair」も楽しめました。椅子に座ってヘッドホンで音を聞くだけの作品ですが、その音から意外な世界が生み出されます。是非とも試してください。
「Sky/Sea」 2007/2014年 レコード、水槽 ほか
ヘッドホンといえば暗室の「Sky/Sea」も秀逸ではないでしょうか。暗室に並ぶテーブル上には波の映像が映し出され、中央のプールにはレコード盤も浮いています。ヘッドホンを耳に当ててみました。
するとゴウゴウと波の音が轟きますが、実はそれだけではないのです。ヘッドホンを付けながら机の下の方へとしゃがんでみましょう。すると驚くことに水の中の音へと変化します。海上と海中の音を身を屈めるだけで聞き分けられる。まるで実際に海に潜ったかのような臨場感です。ある意味では音の生み出すバーチャルリアリティーと言えるかもしれません。
ラストは階段のある大展示室です。レコードをモチーフとした大型のインスタレーションを展開しています。
八木良太展 Room5「Spin/回転と撹拌」
床で回転するのは巨大なレコード。中央の部分の映像は時折、変化し、意外なものも映し出されます。そして壁面で沿ってのびるのもレコードです。盤面がジグザクに繋がっては幾何学模様を描いています。それにしても一体、何メートルあるのでしょうか。これほど巨大な「Circuit」を見たのは初めてでした。
八木良太展 Room2「Modality/感覚学」
ただ全般としてスケール感のあるインスタレーションよりも、シンプルな小品の方に惹かれたのも事実でした。個性的な展示空間とは、裏を返せば展示泣かせの難しい空間でもあります。全体を通してどう効果的に見せていたのか。その辺については判断が分かれるかもしれません。
図録が作成中でした。会場にて予約を受け付けています。(限定数)
2015年1月17日まで開催されています。*年末年始休館:12/29~1/3
「八木良太展 サイエンス/フィクション」 神奈川県民ホールギャラリー(@kanaken_gallery)
会期:2014年12月21日(日)~2015年1月17日(土)
休館:年末年始(12/29~1/3)。
時間:10:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般700円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。
*10名以上の団体は100円引。
住所:横浜市中区山下町3‐1
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約6分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。横浜市営地下鉄関内1番出口より徒歩約15分。
「八木良太展 サイエンス/フィクション」
2014/12/21-2015/1/17
神奈川県民ホールギャラリーで開催中の「八木良太展 サイエンス/フィクション」を見て来ました。
いわゆるメディア・アーティストとして多方面で活動中の八木良太。近年にはヨコハマトリエンナーレやMOTでのグループ展、また「日常/オフレコ」(2014年、神奈川芸術劇場。)にも出展がありました。代表的な「氷のレコード」や「ヴィデオ・スフィア」などには馴染みのある方も多いかもしれません。
これほど大規模な個展は初めてではないでしょうか。延べ床面積は1300平方メートル。しかも天井高6メートルの大展示室といった、個性的な空間が持ち味のギャラリーでもあります。
会場内、撮影が出来ました。
八木良太展 Room1「Threshold/知覚の扉」
さて聴覚や視覚の細やかな部分に働きかける八木のアプローチ、それは1階冒頭の「知覚の扉」にも良く表れていたと言えるかもしれません。
台の上に置かれているのは小さな目覚まし時計や砂時計です。そこからヘッドホンが繋がっています。まずは耳に当てて聞いてみました。
いきなりネタバレになりますが、これらはいずれも時計の内部の音を聞かせているもの。砂時計の砂の落ちる音や、チクタク動く時計の針の音がクリアに聞こえてきます。
「Cicada」 2008年 蝉、真鍮、オーディオプレイヤー、イヤホン
蝉の鳴き声がしました。とは言え、ここは建物の中、蝉などいるはずもありません。やはりイヤホンです。録音された蝉の声が館内に響きわたります。構造そのものは至ってシンプル、天井から蝉の抜け殻付きのイヤホンが吊るされるだけですが、不思議と夏の情景も浮かび上がってきます。思わず目を閉じて耳を澄ませてしまいました。
「Still Life」 2013年 紙にシルクスクリーン、3Dメガネ
聴覚から視覚への展開です。備付けの二つの眼鏡を手にとりましょう。3D眼鏡です。それをかけて平面やオブジェを眺めるとどうなるのか。ずばり奥行きが生じます。かなりアナログ。どこか懐かしい感じもしますが、飛び出す絵本さながらの仕掛けです。ついつい眼鏡をかざしては見比べてしまいます。
「Chroma Depth」 2013・2014年 スーパーボール、クロマデプスメガネ
こうした目覚まし時計やスーパーボール、それに後に登場するレコードなど、既製品を多く用いているのも特徴です。身近な素材にアイデアを加えては思いもよらない感覚的な刺激を呼び起こす。何気ないアイデアが「場」をがらりと変化させます。タイトルの「サイエンス/フィクション」はSFの意味ですが、それを藤子不二雄は「すこしふしぎ」と解釈したとか。この「すこしふしぎ」。確かに八木の作品を表した言葉だと言えそうです。
「Mirror and Chair」 2012年 オーディオプレイヤー、ヘッドホン、椅子
鏡と椅子の「Mirror and Chair」も楽しめました。椅子に座ってヘッドホンで音を聞くだけの作品ですが、その音から意外な世界が生み出されます。是非とも試してください。
「Sky/Sea」 2007/2014年 レコード、水槽 ほか
ヘッドホンといえば暗室の「Sky/Sea」も秀逸ではないでしょうか。暗室に並ぶテーブル上には波の映像が映し出され、中央のプールにはレコード盤も浮いています。ヘッドホンを耳に当ててみました。
するとゴウゴウと波の音が轟きますが、実はそれだけではないのです。ヘッドホンを付けながら机の下の方へとしゃがんでみましょう。すると驚くことに水の中の音へと変化します。海上と海中の音を身を屈めるだけで聞き分けられる。まるで実際に海に潜ったかのような臨場感です。ある意味では音の生み出すバーチャルリアリティーと言えるかもしれません。
ラストは階段のある大展示室です。レコードをモチーフとした大型のインスタレーションを展開しています。
八木良太展 Room5「Spin/回転と撹拌」
床で回転するのは巨大なレコード。中央の部分の映像は時折、変化し、意外なものも映し出されます。そして壁面で沿ってのびるのもレコードです。盤面がジグザクに繋がっては幾何学模様を描いています。それにしても一体、何メートルあるのでしょうか。これほど巨大な「Circuit」を見たのは初めてでした。
八木良太展 Room2「Modality/感覚学」
ただ全般としてスケール感のあるインスタレーションよりも、シンプルな小品の方に惹かれたのも事実でした。個性的な展示空間とは、裏を返せば展示泣かせの難しい空間でもあります。全体を通してどう効果的に見せていたのか。その辺については判断が分かれるかもしれません。
図録が作成中でした。会場にて予約を受け付けています。(限定数)
2015年1月17日まで開催されています。*年末年始休館:12/29~1/3
「八木良太展 サイエンス/フィクション」 神奈川県民ホールギャラリー(@kanaken_gallery)
会期:2014年12月21日(日)~2015年1月17日(土)
休館:年末年始(12/29~1/3)。
時間:10:00~18:00 *入場は閉場の30分前まで。
料金:一般700円、学生・65歳以上500円、高校生以下無料。
*10名以上の団体は100円引。
住所:横浜市中区山下町3‐1
交通:みなとみらい線日本大通り駅3番出口より徒歩約6分。JR線関内、石川町両駅より徒歩約15分。横浜市営地下鉄関内1番出口より徒歩約15分。
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