都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「世界報道写真展2015」 東京芸術劇場ギャラリー1
東京芸術劇場ギャラリー1
「世界報道写真展2015」
6/27-8/9
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東京芸術劇場ギャラリー1で開催中の「世界報道写真展2015」のプレスプレビューに参加してきました。
1956年にオランダ・アムステルダムで始まった世界報道写真展。今年で58回目です。コンテストには131の国と地域から計5692名のプロのカメラマンが参加。応募総数は97912点にも及びます。
うち選定された8部門41名の受賞作品を紹介する展覧会です。作品数は62点。コンテスト8部門には単写真(写真1枚)と組写真(複数の写真で構成)に分かれています。
うち全部門から最も優れた写真を1点選定。「世界報道写真大賞」が贈られました。今年の大賞受賞者はデンマークのカメラマン、マッズ・ニッセンです。
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マッズ・ニッセン(デンマーク)「Scanpix/Panos Pictures」 ロシア、サンクトペテルブルク
まるでバロック絵画のワンシーンを切り取ったかのような一枚。被写体はサンクトペテルブルクの同性愛のカップルです。現在のロシアでは、レズビアンやゲイ、トランスジェンダーらの暮らしが困難になっているとのこと。社会的差別やヘイトクライムの被害に遭うことも少なくないそうです。
審査員の一人をして「世界のあらゆる問題に対する答えは愛だという主張が含まれている」と評された作品。確かにその姿は美しく、強く訴えかけてくるものがあります。
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マッシモ・セスティーニ リビア沖(2014年6月7日)
地中海においてアフリカ人をのせたボート難民を捉えています。一般ニュースの部で2位を受賞したマッシモ・セスティーニは、リビア沖でイタリアの巡洋艦に救助された難民を写し出しました。
参考リンク:「地中海に殺到するボート難民、イタリアは悲鳴」(THE WALL STREET JOURNAL)
2014年には何と15万名もの難民が保護されたそうです。もちろん航路は大きな危険を伴います。問題の根本には北アフリカ地域全体の政情不安もあります。貧困もあるでしょう。青い海に浮くボートにひしめきあうように乗る難民たち。もはや身動きすらとれそうもありません。急増する難民にどのように対処していくのか。解決の難しさを改めて感じました。
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アル・ベッロ(アメリカ)「Getty Images」 アメリカ、ニュージャージー州イーストラザフォード
一転しての躍動感のある写真に目を奪われました。スポーツの部です。同部門で2位を受賞したアメリカのアル・ベッロの作品、ご覧の通りアメフトです。片手でタッチダウンを決めた選手の動きといったら凄まじい。大きく反り返ってはボールを掴みます。まさに神業と言っても良いのかもしれません。
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右:アミ・ヴィタール(アメリカ) ナショナルジオグラフィック誌 ケニア北部、レワダウンズ自然保護区
自然の部では1位に中国の儲永志、2位にアメリカのアミ・ヴィタールが選ばれました。ともに動物保護の問題です。儲が写したのは中国のサーカスで芸を仕込まれたサル。実は既に同国ではサーカスに動物を出すことを禁じていますが、実際には多くの調教師が依然として動物を使っているそうです。
一方、アミが写したのがケニアのクロサイです。優し気に撫でているのは地域の先住民族の人々。クロサイは密猟によって絶滅の危機に瀕していますが、今、こうした先住民族の人々が密猟を防ぐために立ち上がっているそうです。その取り組みを伝えてもいます。
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「世界報道写真展2015」(東京)会場風景
部門はほかにポートレートや日常生活、スポットニュース、そして現代社会の問題の部と多岐に渡ります。また今回からは長期取材の部も新設されました。単年度だけでなく、長期的なプロジェクトによって撮影された作品です。一人のアメリカの貧しい女性に取材しながら、貧困、エイズ、薬物、暴力などの問題を引き出したダーシー・パディーラの「ジュリーの物語」が1位を受賞しました。
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「世界報道写真展2015」(東京)会場風景
ほかにはISの空爆やイランの公開処刑を捉えたものなど、思わず目を背けてしまうような作品も少なくありません。しかしながらだからこそ見入り、また考えさせられるもの。辛くまた厳しく、時に胸に詰まるような光景も全て現実の一端であります。
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トゥーリ・カラファート(イタリア)
今年は日本人の応募が60件あったそうですが、残念ながら入賞作には選ばれませんでした。しかしただ1点、舞台を日本に取材した作品があります。イタリア人のトゥーリ・カラファートの作品です。舞台は名古屋のファストフード店。包装紙からしてマクドナルドでしょうか。ブラインド越しに並んでは食する人々。我々にとっては馴染みのある光景ですが、この一人用の席にカメラマンは反応したようです。そこに何とも言い難い「孤独」を見出しています。
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「世界報道写真展2015」(東京)会場風景
世界45カ国、100会場(2014年度実績)を巡る世界最大規模の写真展。展示の形態からプリントはオリジナルというわけにはいきませんが、それでも写真パネル自体の迫力も並々ならぬものがあります。
ところで世界報道写真展はこれまで恵比寿の都写真美術館で開催されていましたが、現在、同館は大規模改修工事のため休館中。そのため今年は会場を池袋の芸術劇場(5階のギャラリー)に移しています。なお来年の2016年展は、リニューアルを終えた都写真美術館で再び行われるそうです。
[世界報道写真展2015 巡回予定]
ハービスHALL(大阪):8月11日(火)~8月20日(木)
イオンレイクタウンkaze(埼玉):8月23日(日)~9月6日(日)
立命館大学国際平和ミュージアム(京都):9月9日(水)~10月4日(日)
立命館大学びわこ・くさつキャンパス(滋賀):10月6日(火)~10月18日(日)
立命館アジア太平洋大学(大分):10月21日(水)~11月4日(水)
イオンモール広島祇園(広島):11月7日(土)~11月18日(水)
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「世界報道写真展2015」(東京)会場入口
8月9日まで開催されています。
「世界報道写真展2015」(@wppjapan) 東京芸術劇場ギャラリー1
会期:6月27日(土)~8月9日(日)
休館:7月6日、7月27日。
時間:10:00~17:00
*毎週金・土曜日は20時まで。
*入館は閉館30分前まで。
料金:一般800(700)円、学生600(500)円、中高生・65歳以上400(350)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
場所:豊島区西池袋1-8-1 東京芸術劇場5階
交通:JR線・東京メトロ・東武東上線・西武池袋線池袋駅西口より徒歩5分。駅地下通路2b出口と直結。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
「世界報道写真展2015」
6/27-8/9
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東京芸術劇場ギャラリー1で開催中の「世界報道写真展2015」のプレスプレビューに参加してきました。
1956年にオランダ・アムステルダムで始まった世界報道写真展。今年で58回目です。コンテストには131の国と地域から計5692名のプロのカメラマンが参加。応募総数は97912点にも及びます。
うち選定された8部門41名の受賞作品を紹介する展覧会です。作品数は62点。コンテスト8部門には単写真(写真1枚)と組写真(複数の写真で構成)に分かれています。
うち全部門から最も優れた写真を1点選定。「世界報道写真大賞」が贈られました。今年の大賞受賞者はデンマークのカメラマン、マッズ・ニッセンです。
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マッズ・ニッセン(デンマーク)「Scanpix/Panos Pictures」 ロシア、サンクトペテルブルク
まるでバロック絵画のワンシーンを切り取ったかのような一枚。被写体はサンクトペテルブルクの同性愛のカップルです。現在のロシアでは、レズビアンやゲイ、トランスジェンダーらの暮らしが困難になっているとのこと。社会的差別やヘイトクライムの被害に遭うことも少なくないそうです。
審査員の一人をして「世界のあらゆる問題に対する答えは愛だという主張が含まれている」と評された作品。確かにその姿は美しく、強く訴えかけてくるものがあります。
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マッシモ・セスティーニ リビア沖(2014年6月7日)
地中海においてアフリカ人をのせたボート難民を捉えています。一般ニュースの部で2位を受賞したマッシモ・セスティーニは、リビア沖でイタリアの巡洋艦に救助された難民を写し出しました。
参考リンク:「地中海に殺到するボート難民、イタリアは悲鳴」(THE WALL STREET JOURNAL)
2014年には何と15万名もの難民が保護されたそうです。もちろん航路は大きな危険を伴います。問題の根本には北アフリカ地域全体の政情不安もあります。貧困もあるでしょう。青い海に浮くボートにひしめきあうように乗る難民たち。もはや身動きすらとれそうもありません。急増する難民にどのように対処していくのか。解決の難しさを改めて感じました。
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アル・ベッロ(アメリカ)「Getty Images」 アメリカ、ニュージャージー州イーストラザフォード
一転しての躍動感のある写真に目を奪われました。スポーツの部です。同部門で2位を受賞したアメリカのアル・ベッロの作品、ご覧の通りアメフトです。片手でタッチダウンを決めた選手の動きといったら凄まじい。大きく反り返ってはボールを掴みます。まさに神業と言っても良いのかもしれません。
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右:アミ・ヴィタール(アメリカ) ナショナルジオグラフィック誌 ケニア北部、レワダウンズ自然保護区
自然の部では1位に中国の儲永志、2位にアメリカのアミ・ヴィタールが選ばれました。ともに動物保護の問題です。儲が写したのは中国のサーカスで芸を仕込まれたサル。実は既に同国ではサーカスに動物を出すことを禁じていますが、実際には多くの調教師が依然として動物を使っているそうです。
一方、アミが写したのがケニアのクロサイです。優し気に撫でているのは地域の先住民族の人々。クロサイは密猟によって絶滅の危機に瀕していますが、今、こうした先住民族の人々が密猟を防ぐために立ち上がっているそうです。その取り組みを伝えてもいます。
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「世界報道写真展2015」(東京)会場風景
部門はほかにポートレートや日常生活、スポットニュース、そして現代社会の問題の部と多岐に渡ります。また今回からは長期取材の部も新設されました。単年度だけでなく、長期的なプロジェクトによって撮影された作品です。一人のアメリカの貧しい女性に取材しながら、貧困、エイズ、薬物、暴力などの問題を引き出したダーシー・パディーラの「ジュリーの物語」が1位を受賞しました。
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「世界報道写真展2015」(東京)会場風景
ほかにはISの空爆やイランの公開処刑を捉えたものなど、思わず目を背けてしまうような作品も少なくありません。しかしながらだからこそ見入り、また考えさせられるもの。辛くまた厳しく、時に胸に詰まるような光景も全て現実の一端であります。
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トゥーリ・カラファート(イタリア)
今年は日本人の応募が60件あったそうですが、残念ながら入賞作には選ばれませんでした。しかしただ1点、舞台を日本に取材した作品があります。イタリア人のトゥーリ・カラファートの作品です。舞台は名古屋のファストフード店。包装紙からしてマクドナルドでしょうか。ブラインド越しに並んでは食する人々。我々にとっては馴染みのある光景ですが、この一人用の席にカメラマンは反応したようです。そこに何とも言い難い「孤独」を見出しています。
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「世界報道写真展2015」(東京)会場風景
世界45カ国、100会場(2014年度実績)を巡る世界最大規模の写真展。展示の形態からプリントはオリジナルというわけにはいきませんが、それでも写真パネル自体の迫力も並々ならぬものがあります。
ところで世界報道写真展はこれまで恵比寿の都写真美術館で開催されていましたが、現在、同館は大規模改修工事のため休館中。そのため今年は会場を池袋の芸術劇場(5階のギャラリー)に移しています。なお来年の2016年展は、リニューアルを終えた都写真美術館で再び行われるそうです。
[世界報道写真展2015 巡回予定]
ハービスHALL(大阪):8月11日(火)~8月20日(木)
イオンレイクタウンkaze(埼玉):8月23日(日)~9月6日(日)
立命館大学国際平和ミュージアム(京都):9月9日(水)~10月4日(日)
立命館大学びわこ・くさつキャンパス(滋賀):10月6日(火)~10月18日(日)
立命館アジア太平洋大学(大分):10月21日(水)~11月4日(水)
イオンモール広島祇園(広島):11月7日(土)~11月18日(水)
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「世界報道写真展2015」(東京)会場入口
8月9日まで開催されています。
「世界報道写真展2015」(@wppjapan) 東京芸術劇場ギャラリー1
会期:6月27日(土)~8月9日(日)
休館:7月6日、7月27日。
時間:10:00~17:00
*毎週金・土曜日は20時まで。
*入館は閉館30分前まで。
料金:一般800(700)円、学生600(500)円、中高生・65歳以上400(350)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
場所:豊島区西池袋1-8-1 東京芸術劇場5階
交通:JR線・東京メトロ・東武東上線・西武池袋線池袋駅西口より徒歩5分。駅地下通路2b出口と直結。
注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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