都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「アール・ヌーヴォーのガラス展」 パナソニック汐留ミュージアム
パナソニック汐留ミュージアム
「アール・ヌーヴォーのガラス展」
7/4~9/6
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パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「アール・ヌーヴォーのガラス展」を見て来ました。
ヨーロッパ随一のガラスコレクションを誇るドイツのデュッセルドルフ美術館。そのガラス作品が日本でまとめて公開されるのは初めてのことだそうです。
出品は135点。実のところかなりあります。そして必ずしも広いとは言えないパナソニックのスペースです。所狭しと作品が並んでいました。
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「象の頭の飾付花器」 1883~1885年頃
デザインおよび制作:不詳 販売:パニエ兄弟商会エスカリエ・ド・クリスタル、パリ
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
始まりはパリです。ジャポニスムを反映しています。例えば「象の頭の飾付花器」、文字通り上部には象の鼻を象ったような取っ手が付いていますが、下部には何と北斎の木版画から引用された布袋図がほぼ丸々描かれているのです。
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「台付蓋付花器」 1885~1889年頃
デザイン:ウジェーヌ・ルソー、パリ 制作:アペール兄弟、クリシィ 台と蓋:パニエ兄弟商会エスカリエ・ド・クリスタル、パリ
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
ウジェーヌ・ルソーのデザインによる「台付蓋付花器」はどうでしょうか。台と蓋には荒々しき波飛沫が象られ、中央には大きな鯉がまさに滝登りさながらに彫られています。装飾は浮き彫りです。鯉はやはり北斎の木版に倣ったものとも言われています。このようにルソーは北斎漫画を「発見」したフェリックス・ブラックモンと協同し、ほぼ日本の木版を元にした陶器セットを生み出しました。
ガレは50点ほど出ています。ガレが活動したのは、フランス北東部のナンシーを中心にするアルザス=ロレーヌ地方。元々、手工業が盛んで、鉱物資源にも恵まれていたことから、ガラス制作に適していたそうです。
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「筒型花器」 1895年頃
エミール・ガレ、ナンシー 制作:ブルグン、シュヴェーラー商会、マイゼンタール
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
透明感のあるブルーが目に染みます。「筒型花器」です。花はハーブの一種、ヤネバンダイソウを描いたもの。浅い浮き彫りでクリアに浮かび上がってきます。
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「台付鉢」 1903年頃
エミール・ガレ、ナンシー
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
「台付鉢」にも目を奪われました。無色のガラスに黄色のガラスを引き伸ばし、さらに赤色ガラスを付着させたという作品です。色がマーブル、大理石の模様のように変化していますが、実は本作、一部ではキャベツの葉と呼ばれていたこともあったそうです。確かに半円状にうねりのある造形はキャベツのようにも見えなくありません。
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「銀飾金具付花器(オダマキ)」 1898~1900年頃
ドーム兄弟、ナンシー
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
同じくナンシーで活動したドーム兄弟も優品揃いです。例えば「銀飾金具付花器(オダマキ)」、うっすら紫色を帯びた表面には三輪のオダマキの花や蕾があしらわれています。そして器の下にはとぐろを巻く蛇の姿が見えました。銀製の彫刻です。アール・ヌーヴォーのガラス器には植物だけではなく、こうした小さな生き物がたくさん登場します。
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「花器(ブドウとカタツムリ)」 1904年
ドーム兄弟、ナンシー アンリ・ベルジェ(ナンシー)のデザインに基づく
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Walter Klein
カタツムリもいました。ドーム兄弟の「花器(ブドウとカタツムリ)」です。リエージュで行われた万国博覧会のために制作された器、ともかく鮮烈なオレンジから深い青、そして生々しい白を混ぜ合わせたような色彩感覚に目を引かれますが、確かに両側にカタツムリが這っています。大変にデコラティブです。
ちなみに今回のガラス器はいずれもドイツの実業家であるゲルダ・ケプフ夫人が1960年頃に集めたもの。その後、1998年にデュッセルドルフ美術館へ寄贈されたコレクションです。
元々、彼女はプライベートな室内を飾るためにガラス器を収集していました。ゆえにコレクションからはケプフ夫人の審美眼、つまりコレクターとしての視点を伺い知れるとも言えるのではないでしょうか。どちらかとすれば過度に華美ではない、やや穏やかな表情の作品が多いかもしれません。
さすがに脆いガラス器ということだけあり、露出展示はありませんでしたが、照明に一部仕掛けがありました。というのも幾つかの作品の照度を変えることによって、一つのガラス器から異なる光や色を引き出しているのです。
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「花器(スイセン)」1897年
ドーム兄弟、ナンシー デザイン:エドモン・ラシュナル、パリ
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
ガラスの小宇宙で花開いたアール・ヌーヴォーの装飾芸術。効果的な展示です。その多彩な魅力を味わうことが出来ました。
9月6日まで開催されています。
「アール・ヌーヴォーのガラス展」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:7月4日(土)~9月6日(日)
休館:水曜日。及びお盆休み(8/10~14)。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般1000円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料。
*65歳以上900円、20名以上の団体は各100円引。
*ホームページ割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分。
「アール・ヌーヴォーのガラス展」
7/4~9/6
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パナソニック汐留ミュージアムで開催中の「アール・ヌーヴォーのガラス展」を見て来ました。
ヨーロッパ随一のガラスコレクションを誇るドイツのデュッセルドルフ美術館。そのガラス作品が日本でまとめて公開されるのは初めてのことだそうです。
出品は135点。実のところかなりあります。そして必ずしも広いとは言えないパナソニックのスペースです。所狭しと作品が並んでいました。
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「象の頭の飾付花器」 1883~1885年頃
デザインおよび制作:不詳 販売:パニエ兄弟商会エスカリエ・ド・クリスタル、パリ
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
始まりはパリです。ジャポニスムを反映しています。例えば「象の頭の飾付花器」、文字通り上部には象の鼻を象ったような取っ手が付いていますが、下部には何と北斎の木版画から引用された布袋図がほぼ丸々描かれているのです。
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「台付蓋付花器」 1885~1889年頃
デザイン:ウジェーヌ・ルソー、パリ 制作:アペール兄弟、クリシィ 台と蓋:パニエ兄弟商会エスカリエ・ド・クリスタル、パリ
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
ウジェーヌ・ルソーのデザインによる「台付蓋付花器」はどうでしょうか。台と蓋には荒々しき波飛沫が象られ、中央には大きな鯉がまさに滝登りさながらに彫られています。装飾は浮き彫りです。鯉はやはり北斎の木版に倣ったものとも言われています。このようにルソーは北斎漫画を「発見」したフェリックス・ブラックモンと協同し、ほぼ日本の木版を元にした陶器セットを生み出しました。
ガレは50点ほど出ています。ガレが活動したのは、フランス北東部のナンシーを中心にするアルザス=ロレーヌ地方。元々、手工業が盛んで、鉱物資源にも恵まれていたことから、ガラス制作に適していたそうです。
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「筒型花器」 1895年頃
エミール・ガレ、ナンシー 制作:ブルグン、シュヴェーラー商会、マイゼンタール
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
透明感のあるブルーが目に染みます。「筒型花器」です。花はハーブの一種、ヤネバンダイソウを描いたもの。浅い浮き彫りでクリアに浮かび上がってきます。
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「台付鉢」 1903年頃
エミール・ガレ、ナンシー
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
「台付鉢」にも目を奪われました。無色のガラスに黄色のガラスを引き伸ばし、さらに赤色ガラスを付着させたという作品です。色がマーブル、大理石の模様のように変化していますが、実は本作、一部ではキャベツの葉と呼ばれていたこともあったそうです。確かに半円状にうねりのある造形はキャベツのようにも見えなくありません。
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「銀飾金具付花器(オダマキ)」 1898~1900年頃
ドーム兄弟、ナンシー
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
同じくナンシーで活動したドーム兄弟も優品揃いです。例えば「銀飾金具付花器(オダマキ)」、うっすら紫色を帯びた表面には三輪のオダマキの花や蕾があしらわれています。そして器の下にはとぐろを巻く蛇の姿が見えました。銀製の彫刻です。アール・ヌーヴォーのガラス器には植物だけではなく、こうした小さな生き物がたくさん登場します。
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「花器(ブドウとカタツムリ)」 1904年
ドーム兄弟、ナンシー アンリ・ベルジェ(ナンシー)のデザインに基づく
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Walter Klein
カタツムリもいました。ドーム兄弟の「花器(ブドウとカタツムリ)」です。リエージュで行われた万国博覧会のために制作された器、ともかく鮮烈なオレンジから深い青、そして生々しい白を混ぜ合わせたような色彩感覚に目を引かれますが、確かに両側にカタツムリが這っています。大変にデコラティブです。
ちなみに今回のガラス器はいずれもドイツの実業家であるゲルダ・ケプフ夫人が1960年頃に集めたもの。その後、1998年にデュッセルドルフ美術館へ寄贈されたコレクションです。
元々、彼女はプライベートな室内を飾るためにガラス器を収集していました。ゆえにコレクションからはケプフ夫人の審美眼、つまりコレクターとしての視点を伺い知れるとも言えるのではないでしょうか。どちらかとすれば過度に華美ではない、やや穏やかな表情の作品が多いかもしれません。
さすがに脆いガラス器ということだけあり、露出展示はありませんでしたが、照明に一部仕掛けがありました。というのも幾つかの作品の照度を変えることによって、一つのガラス器から異なる光や色を引き出しているのです。
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「花器(スイセン)」1897年
ドーム兄弟、ナンシー デザイン:エドモン・ラシュナル、パリ
デュッセルドルフ美術館
©Museum Kunstpalast, Dusseldorf, Foto:Studio Fuis-ARTOTHEK
ガラスの小宇宙で花開いたアール・ヌーヴォーの装飾芸術。効果的な展示です。その多彩な魅力を味わうことが出来ました。
9月6日まで開催されています。
「アール・ヌーヴォーのガラス展」 パナソニック汐留ミュージアム
会期:7月4日(土)~9月6日(日)
休館:水曜日。及びお盆休み(8/10~14)。
時間:10:00~18:00 *入場は17時半まで。
料金:一般1000円、大学生700円、中・高校生500円、小学生以下無料。
*65歳以上900円、20名以上の団体は各100円引。
*ホームページ割引あり
住所:港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階
交通:JR線新橋駅銀座口より徒歩5分、東京メトロ銀座線新橋駅2番出口より徒歩3分、都営浅草線新橋駅改札より徒歩3分、都営大江戸線汐留駅3・4番出口より徒歩1分。
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