都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 春信一番!写楽二番!」 三井記念美術館
三井記念美術館
「フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 春信一番!写楽二番!」
6/20-8/16

三井記念美術館で開催中の「フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 春信一番!写楽二番!」を見てきました。
フィラデルフィア美術館の浮世絵コレクションが日本でまとめて公開されるのは初めてのことだそうです。
アメリカはペンシルベニア州のフィラデルフィア美術館。創立は1877年です。既に130年以上もの歴史を誇ります。コレクションは膨大です。洋の東西を問わず、古代から現代美術までを網羅しています。その数、約30万点です。うち浮世絵を4000点ほど所蔵しています。
今回の開催の切っ掛けは、昨年、同美術館で行われた浮世絵の調査でした。その成果披露の機会ということなのでしょう。「選りすぐり」(チラシより)の150点が紹介されています。(展示替えあり。)
さてフィラデルフィア美術館浮世絵名品展、展示にはいくつか特徴があります。

二代鳥居清倍「今やうやくしゃふう」 寛保(1741~44)期 フィラデルフィア美術館
展示期間:7月22日~8月16日
まずは浮世絵の通史をほぼ俯瞰出来ることです。初期の鳥居派や奥村政信に始まり、春信、勝川春章へと続きます。もちろん人気の鳥居清長、歌麿、写楽も登場します。さらには北斎、広重も網羅しつつ、ラストにはともすると馴染みのない上方の浮世絵師までを視野に入れているのです。
中でもタイトルにもあるように、春信と写楽が極めて充実しています。春信は全30点です。一度の展示替えを挟むため、現会期(前期)では約15点ほどが出ています。
写楽の大首絵は10点です。こちらも展示替えのため、前後期でほぼ5点ずつ並んでいました。

鈴木春信「やつし芦葉達磨」 明和2~4年(1765~67)頃 フィラデルフィア美術館
展示期間:全期間
春信好きにはたまらないラインアップではないでしょうか。例えば「やつし芦葉達磨」です。何やら川面の上に浮いているような女性の立ち姿。風がやや強く吹いているのかもしれません。左手で衣を支えています。紅色、いや桃色の彩色も美しい。足元には一葉の芦が広がっています。そして女性はこの芦に乗っているのです。もちろん実際にはあり得ませんが、何でも元は中国の高僧の伝記によるとか。それをやつし絵、つまり見立て描いています。
総じて発色が良い作品が多いのも特徴かもしれません。写楽です。有名な「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」も素晴らしいもの。背景となる雲母の煌めきも美しく、状態は見るからに上々です。何度も目にする作品ではありますが、前にぐいと手を出しては見得を切る江戸兵衛の迫力もより増しているように見えました。
写楽の展示室も効果的です。と言うのも写楽作は一揃えで展示室6、つまり同館で最も狭いスペースに集められていますが、そこのガラスケースはいずれも薄く、作品を目と鼻の先で味わえるのです。もちろん狭いゆえに多少混み合う場合もありますが、これほど状態の良い浮世絵を間近で見られる機会もなかなかありません。

初代喜多川歌麿「歌撰恋之部 稀ニ逢恋」 寛政5~6年(1793~94)頃 フィラデルフィア美術館
展示期間:6月20日~7月20日
大首絵といえば歌麿の「歌撰恋之部 稀ニ逢恋」も絶品でした。町家の女性をモチーフにした大首絵シリーズの一枚。同連作の中では一番若い女性が描かれています。うっすらと紅色がかった雲母は瑞々しく、ツヤのある髪の毛はまだ濡れているかのような質感をたたえています。袖口から垣間見える小さな手先は何とも可憐でした。
清長の「菖蒲の池」にも魅せられました。いわゆる屋外の群像美人画、大判2枚続のワイド画面です。菖蒲の花を愛でる女性たちが描かれていますが、得意のすらりとした7頭身、8頭身のプロポーションも流麗極まりないもの。キセルを加えたり、花に触ったりと、思い思いにポーズをとっては花見を楽しんでいます。

鳥居清長「吉原の花見」 天明5年(1785) フィラデルフィア美術館
展示期間:7月22日~8月16日
なお後期にはさらに1枚増えた3枚続の「吉原の花見」が出品されるそうです。そちらもまた目を引くのではないでしょうか。
改めて展示替えの情報です。一部作品を除き、会期中に一度、作品が入れ替わります。
フィラデルフィア美術館浮世絵名品展出品目録(PDF)
前期:6月20日~7月20日
後期:7月22日~8月16日
相当数の入れ替えです。ほぼ前後期ほ2つで1つの展覧会と捉えて差し支えありません。なお後期の観覧にはリピーター割が有用です。会期中、一般券ないしは学生券を提示すると、2度目は団体料金で入場出来ます。
東京駅周辺の美術館にて「七夕フェア」が開催されています(はろるど)
「七夕フェア」のフェア内容(三井記念美術館)
また以前、拙ブログでもご紹介しましたが、現在、同館では期間限定で「七夕フェア」を開催しています。うち特にお得なのは「カップル割」です。7月7日までにペアで入場すると1名分の料金が無料になります。
[フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 巡回予定]
静岡市美術館:8月23日(日)~9月27日(日)
あべのハルカス美術館:10月10日(土)~12月6日(日)
浮世絵展は展示室4以降での展開でした。順路に先立つ同館自慢の立体展示室では「三井記念美術館所蔵の工芸品ー夏に寄せて」を開催中。江戸後期から昭和へ至る蒔絵やタバコ入れ、それに自在置物などを紹介しています。
中でも安藤緑山の「染象牙果菜置物」は要注目ではないでしょうか。昨年の「超絶技巧!明治工芸の粋」でも驚きをもって迎えられた緑山の置物。柿や蜜柑がまさしく本物と見間違えるほどに精巧に作られています。改めて目を奪われました。

葛飾北斎「富嶽三十六景 凱風快晴」 天保元~3年(1830~32)頃 フィラデルフィア美術館
展示期間:全期間
会場内、食い入るように一点一点の作品を見ている方が多いのが印象に残りました。まだ余裕がありましたが、ひょっとすると後半にかけて混雑してくるやもしれません。
8月16日まで開催されています。
「特別展 錦絵誕生250年 フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 春信一番!写楽二番!」 三井記念美術館
会期:6月20日(土)~8月16日(日)
休館:月曜日、7月21日(火)。但し7/20(月・祝)は休館。
時間:10:00~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300(1100)円、大学・高校生800(700)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*70歳以上は1000円。
*リピーター割引:会期中、一般券、学生券の半券を提示すると、2回目以降は団体料金を適用。
*割引引換券
場所:中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅A7出口より徒歩1分。JR線新日本橋駅1番出口より徒歩5分。
「フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 春信一番!写楽二番!」
6/20-8/16

三井記念美術館で開催中の「フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 春信一番!写楽二番!」を見てきました。
フィラデルフィア美術館の浮世絵コレクションが日本でまとめて公開されるのは初めてのことだそうです。
アメリカはペンシルベニア州のフィラデルフィア美術館。創立は1877年です。既に130年以上もの歴史を誇ります。コレクションは膨大です。洋の東西を問わず、古代から現代美術までを網羅しています。その数、約30万点です。うち浮世絵を4000点ほど所蔵しています。
今回の開催の切っ掛けは、昨年、同美術館で行われた浮世絵の調査でした。その成果披露の機会ということなのでしょう。「選りすぐり」(チラシより)の150点が紹介されています。(展示替えあり。)
さてフィラデルフィア美術館浮世絵名品展、展示にはいくつか特徴があります。

二代鳥居清倍「今やうやくしゃふう」 寛保(1741~44)期 フィラデルフィア美術館
展示期間:7月22日~8月16日
まずは浮世絵の通史をほぼ俯瞰出来ることです。初期の鳥居派や奥村政信に始まり、春信、勝川春章へと続きます。もちろん人気の鳥居清長、歌麿、写楽も登場します。さらには北斎、広重も網羅しつつ、ラストにはともすると馴染みのない上方の浮世絵師までを視野に入れているのです。
中でもタイトルにもあるように、春信と写楽が極めて充実しています。春信は全30点です。一度の展示替えを挟むため、現会期(前期)では約15点ほどが出ています。
写楽の大首絵は10点です。こちらも展示替えのため、前後期でほぼ5点ずつ並んでいました。

鈴木春信「やつし芦葉達磨」 明和2~4年(1765~67)頃 フィラデルフィア美術館
展示期間:全期間
春信好きにはたまらないラインアップではないでしょうか。例えば「やつし芦葉達磨」です。何やら川面の上に浮いているような女性の立ち姿。風がやや強く吹いているのかもしれません。左手で衣を支えています。紅色、いや桃色の彩色も美しい。足元には一葉の芦が広がっています。そして女性はこの芦に乗っているのです。もちろん実際にはあり得ませんが、何でも元は中国の高僧の伝記によるとか。それをやつし絵、つまり見立て描いています。
総じて発色が良い作品が多いのも特徴かもしれません。写楽です。有名な「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」も素晴らしいもの。背景となる雲母の煌めきも美しく、状態は見るからに上々です。何度も目にする作品ではありますが、前にぐいと手を出しては見得を切る江戸兵衛の迫力もより増しているように見えました。
写楽の展示室も効果的です。と言うのも写楽作は一揃えで展示室6、つまり同館で最も狭いスペースに集められていますが、そこのガラスケースはいずれも薄く、作品を目と鼻の先で味わえるのです。もちろん狭いゆえに多少混み合う場合もありますが、これほど状態の良い浮世絵を間近で見られる機会もなかなかありません。

初代喜多川歌麿「歌撰恋之部 稀ニ逢恋」 寛政5~6年(1793~94)頃 フィラデルフィア美術館
展示期間:6月20日~7月20日
大首絵といえば歌麿の「歌撰恋之部 稀ニ逢恋」も絶品でした。町家の女性をモチーフにした大首絵シリーズの一枚。同連作の中では一番若い女性が描かれています。うっすらと紅色がかった雲母は瑞々しく、ツヤのある髪の毛はまだ濡れているかのような質感をたたえています。袖口から垣間見える小さな手先は何とも可憐でした。
清長の「菖蒲の池」にも魅せられました。いわゆる屋外の群像美人画、大判2枚続のワイド画面です。菖蒲の花を愛でる女性たちが描かれていますが、得意のすらりとした7頭身、8頭身のプロポーションも流麗極まりないもの。キセルを加えたり、花に触ったりと、思い思いにポーズをとっては花見を楽しんでいます。

鳥居清長「吉原の花見」 天明5年(1785) フィラデルフィア美術館
展示期間:7月22日~8月16日
なお後期にはさらに1枚増えた3枚続の「吉原の花見」が出品されるそうです。そちらもまた目を引くのではないでしょうか。
改めて展示替えの情報です。一部作品を除き、会期中に一度、作品が入れ替わります。
フィラデルフィア美術館浮世絵名品展出品目録(PDF)
前期:6月20日~7月20日
後期:7月22日~8月16日
相当数の入れ替えです。ほぼ前後期ほ2つで1つの展覧会と捉えて差し支えありません。なお後期の観覧にはリピーター割が有用です。会期中、一般券ないしは学生券を提示すると、2度目は団体料金で入場出来ます。
東京駅周辺の美術館にて「七夕フェア」が開催されています(はろるど)
「七夕フェア」のフェア内容(三井記念美術館)
また以前、拙ブログでもご紹介しましたが、現在、同館では期間限定で「七夕フェア」を開催しています。うち特にお得なのは「カップル割」です。7月7日までにペアで入場すると1名分の料金が無料になります。
[フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 巡回予定]
静岡市美術館:8月23日(日)~9月27日(日)
あべのハルカス美術館:10月10日(土)~12月6日(日)
浮世絵展は展示室4以降での展開でした。順路に先立つ同館自慢の立体展示室では「三井記念美術館所蔵の工芸品ー夏に寄せて」を開催中。江戸後期から昭和へ至る蒔絵やタバコ入れ、それに自在置物などを紹介しています。
中でも安藤緑山の「染象牙果菜置物」は要注目ではないでしょうか。昨年の「超絶技巧!明治工芸の粋」でも驚きをもって迎えられた緑山の置物。柿や蜜柑がまさしく本物と見間違えるほどに精巧に作られています。改めて目を奪われました。

葛飾北斎「富嶽三十六景 凱風快晴」 天保元~3年(1830~32)頃 フィラデルフィア美術館
展示期間:全期間
会場内、食い入るように一点一点の作品を見ている方が多いのが印象に残りました。まだ余裕がありましたが、ひょっとすると後半にかけて混雑してくるやもしれません。
8月16日まで開催されています。
「特別展 錦絵誕生250年 フィラデルフィア美術館浮世絵名品展 春信一番!写楽二番!」 三井記念美術館
会期:6月20日(土)~8月16日(日)
休館:月曜日、7月21日(火)。但し7/20(月・祝)は休館。
時間:10:00~17:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1300(1100)円、大学・高校生800(700)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*70歳以上は1000円。
*リピーター割引:会期中、一般券、学生券の半券を提示すると、2回目以降は団体料金を適用。
*割引引換券
場所:中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7階
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線三越前駅A7出口より徒歩1分。JR線新日本橋駅1番出口より徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )