都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「第22回 秘蔵の名品 アートコレクション展」 ホテルオークラ東京
ホテルオークラ東京
「第22回 秘蔵の名品 アートコレクション展 旅への憧れ、愛しの風景ーマルケ、魁夷、広重の見た世界」
7/27~8/18

ホテルオークラ東京で開催中の「第22回 秘蔵の名品 アートコレクション展 旅への憧れ、愛しの風景」を見てきました。
毎年夏恒例、ホテルオークラ東京のチャリティーイベントのアートコレクション展。今年のテーマは旅、そして風景です。
出品は計70点。タイトルにもあるようにマルケ、魁夷、広重に着目しているのが特徴です。
さてそのマルケ、何と18点も出ていました。これほどまとまってマルケが展示されたことは近年なかったのではないでしょうか。ミニマルケ展としても差し支えありません。

アルベール・マルケ「コンフラン=サント=オノリーヌの川船」 1911年 公益財団法人吉野石膏美術振興財団(山形美術館に寄託)
「コンフラン=サント=オノリーヌの川船」はどうでしょうか。舞台はマルケの描き続けたセーヌ河畔の街です。河川輸送が盛んでした。川に浮かぶのは一隻の貨物船です。遠くの吊り橋の上には馬車が行き交います。川岸の緑も眩しい。水色の空には雲がわいていました。ほぼ晴天。透明な川面には空色が反射しています。

アルベール・マルケ「霧のリーヴ・ヌーヴ、マルセイユ」 1918年 公益財団法人上原美術館
セーヌだけでなく、マルセイユもマルケが見続けた水の景色でもあります。「霧のリーヴ・ヌーヴ、マルセイユ」は同地の港を描いた作品です。たくさんの船が停泊しています。霧はやや深く、遠くの建物は煙に霞んでいます。マストでしょうか。縦のラインが特徴的です。全体を覆う水色はかなりグレーを帯びています。

アルベール・マルケ「アルジェの港、ル・シャンポリオン」 1944年頃 ヤマザキマザック美術館
北アフリカのアルジェも画家の愛した土地でした。「アルジェの港、ル・シャンポリオン」も魅惑的です。広く見開かれた港。かなり高い地点から俯瞰して描いています。蒸気船は煙を吹いています。奥が外洋で手前が湾、そして陸と続きます。水面の色はエメラルドグリーンです。光は強い。同地の輝かしい陽を表しているのかもしれません。

アルベール・マルケ「ポン・ヌフ夜景」 1938年 サントリーコレクション
夜景を描いた一枚に目が留まりました。「ポン・ヌフ夜景」です。パリのセーヌに架かる橋。しかしながら闇に覆われ、川の姿を見ることは出来ません。ともかく強いのは建物のネオンサインです。黄色い明かりが粒状になって点々と連なっています。水景で知られるマルケですが、このような作品があったとは知りませんでした。
東山魁夷は全11点です。まず印象深いのは「スオミ」でした。北欧シリーズの一枚です。森林がはるか彼方へと連なり、湖が広がっています。舞台はフィンランドです。木々の緑青の質感は豊かで、水を示す白も銀色に輝いていて美しい。雄大な山河を澱みのない筆触で描いています。

東山魁夷「山峡朝霧」 1983年
唯一の屏風装である「山峡朝霧」に惹かれました。深い山を立ち上がる朝霧。山肌を隠しては辺りを潤しています。右手前に滝の白い筋が見えました。冬の景色なのでしょうか。寒々しい。水墨のニュアンスが絶妙です。幻影的とも呼べるかもしれません。
さてアートコレクション、「秘蔵」とあるように、思いがけない画家に魅惑的な作品があるのも嬉しいところです。

牧野義雄「テームス河畔」 制作年不詳 東京藝術大学
例えば牧野義雄です。名は「テームス河畔」。明治30年、画家がイギリスの地に渡った頃に描いた一枚です。場所はテムズ。川岸の小径です。街路樹の木立が手前の上から垂れています。そして語らう人々。穏やかな夜の景色です。何よりも美しいのはうっすら紫色を帯びた霧の描写でした。牧野自身、ロンドンの霧の印象に強く感化されていたそうです。それゆえの表現かもしれません。遠景は色が滲み出ていて明瞭ではありません。何とも叙情的な作品ではないでしょうか。

赤松麟作「夜汽車」 1901年 東京藝術大学
赤松麟作の「夜汽車」も力作です。時は明治時代、汽車に乗る人々を捉えています。煙草を吸い、談笑し、外の景色を眺める者などがいます。よく見ると床にはミカンの皮が転がっていました。誰か食べたものをそのまま捨ててしまったのかもしれません。手前の母子が目立っています。子は疲れてしまったのか母の膝を枕に眠りこけています。母も目はうつろです。長旅なのかもしれません。とはいえ、しっかりと子を毛布にくるんでは抱いていました。
広重はラストでの展開です。「東海道五十三次」が全点揃い踏みしています。四季折々、人々の営みや土地の風土を交えての東海道の旅。追って楽しむことが出来ました。
お盆休み中に出掛けましたが、場内は空いていました。間もなく会期末ですが、ゆっくり楽しめると思います。
8月18日まで開催されています。
「第22回 秘蔵の名品 アートコレクション展 旅への憧れ、愛しの風景ーマルケ、魁夷、広重の見た世界」 ホテルオークラ東京
会期:7月27日 (水) ~8月18日 (木)
休館:会期中無休。
時間:10:30~18:30(入場は18時まで)*初日のみ12時開場。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
住所:港区虎ノ門2-10-4 ホテルオークラ東京 アスコットホール (地下2階)
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅改札口より徒歩5分。東京メトロ日比谷線神谷町駅4b出口より徒歩8分。
「第22回 秘蔵の名品 アートコレクション展 旅への憧れ、愛しの風景ーマルケ、魁夷、広重の見た世界」
7/27~8/18

ホテルオークラ東京で開催中の「第22回 秘蔵の名品 アートコレクション展 旅への憧れ、愛しの風景」を見てきました。
毎年夏恒例、ホテルオークラ東京のチャリティーイベントのアートコレクション展。今年のテーマは旅、そして風景です。
出品は計70点。タイトルにもあるようにマルケ、魁夷、広重に着目しているのが特徴です。
さてそのマルケ、何と18点も出ていました。これほどまとまってマルケが展示されたことは近年なかったのではないでしょうか。ミニマルケ展としても差し支えありません。

アルベール・マルケ「コンフラン=サント=オノリーヌの川船」 1911年 公益財団法人吉野石膏美術振興財団(山形美術館に寄託)
「コンフラン=サント=オノリーヌの川船」はどうでしょうか。舞台はマルケの描き続けたセーヌ河畔の街です。河川輸送が盛んでした。川に浮かぶのは一隻の貨物船です。遠くの吊り橋の上には馬車が行き交います。川岸の緑も眩しい。水色の空には雲がわいていました。ほぼ晴天。透明な川面には空色が反射しています。

アルベール・マルケ「霧のリーヴ・ヌーヴ、マルセイユ」 1918年 公益財団法人上原美術館
セーヌだけでなく、マルセイユもマルケが見続けた水の景色でもあります。「霧のリーヴ・ヌーヴ、マルセイユ」は同地の港を描いた作品です。たくさんの船が停泊しています。霧はやや深く、遠くの建物は煙に霞んでいます。マストでしょうか。縦のラインが特徴的です。全体を覆う水色はかなりグレーを帯びています。

アルベール・マルケ「アルジェの港、ル・シャンポリオン」 1944年頃 ヤマザキマザック美術館
北アフリカのアルジェも画家の愛した土地でした。「アルジェの港、ル・シャンポリオン」も魅惑的です。広く見開かれた港。かなり高い地点から俯瞰して描いています。蒸気船は煙を吹いています。奥が外洋で手前が湾、そして陸と続きます。水面の色はエメラルドグリーンです。光は強い。同地の輝かしい陽を表しているのかもしれません。

アルベール・マルケ「ポン・ヌフ夜景」 1938年 サントリーコレクション
夜景を描いた一枚に目が留まりました。「ポン・ヌフ夜景」です。パリのセーヌに架かる橋。しかしながら闇に覆われ、川の姿を見ることは出来ません。ともかく強いのは建物のネオンサインです。黄色い明かりが粒状になって点々と連なっています。水景で知られるマルケですが、このような作品があったとは知りませんでした。
東山魁夷は全11点です。まず印象深いのは「スオミ」でした。北欧シリーズの一枚です。森林がはるか彼方へと連なり、湖が広がっています。舞台はフィンランドです。木々の緑青の質感は豊かで、水を示す白も銀色に輝いていて美しい。雄大な山河を澱みのない筆触で描いています。

東山魁夷「山峡朝霧」 1983年
唯一の屏風装である「山峡朝霧」に惹かれました。深い山を立ち上がる朝霧。山肌を隠しては辺りを潤しています。右手前に滝の白い筋が見えました。冬の景色なのでしょうか。寒々しい。水墨のニュアンスが絶妙です。幻影的とも呼べるかもしれません。
さてアートコレクション、「秘蔵」とあるように、思いがけない画家に魅惑的な作品があるのも嬉しいところです。

牧野義雄「テームス河畔」 制作年不詳 東京藝術大学
例えば牧野義雄です。名は「テームス河畔」。明治30年、画家がイギリスの地に渡った頃に描いた一枚です。場所はテムズ。川岸の小径です。街路樹の木立が手前の上から垂れています。そして語らう人々。穏やかな夜の景色です。何よりも美しいのはうっすら紫色を帯びた霧の描写でした。牧野自身、ロンドンの霧の印象に強く感化されていたそうです。それゆえの表現かもしれません。遠景は色が滲み出ていて明瞭ではありません。何とも叙情的な作品ではないでしょうか。

赤松麟作「夜汽車」 1901年 東京藝術大学
赤松麟作の「夜汽車」も力作です。時は明治時代、汽車に乗る人々を捉えています。煙草を吸い、談笑し、外の景色を眺める者などがいます。よく見ると床にはミカンの皮が転がっていました。誰か食べたものをそのまま捨ててしまったのかもしれません。手前の母子が目立っています。子は疲れてしまったのか母の膝を枕に眠りこけています。母も目はうつろです。長旅なのかもしれません。とはいえ、しっかりと子を毛布にくるんでは抱いていました。
広重はラストでの展開です。「東海道五十三次」が全点揃い踏みしています。四季折々、人々の営みや土地の風土を交えての東海道の旅。追って楽しむことが出来ました。
お盆休み中に出掛けましたが、場内は空いていました。間もなく会期末ですが、ゆっくり楽しめると思います。
8月18日まで開催されています。
「第22回 秘蔵の名品 アートコレクション展 旅への憧れ、愛しの風景ーマルケ、魁夷、広重の見た世界」 ホテルオークラ東京
会期:7月27日 (水) ~8月18日 (木)
休館:会期中無休。
時間:10:30~18:30(入場は18時まで)*初日のみ12時開場。
料金:一般1300円、大学・高校生1000円、中学生以下無料。
住所:港区虎ノ門2-10-4 ホテルオークラ東京 アスコットホール (地下2階)
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅改札口より徒歩5分。東京メトロ日比谷線神谷町駅4b出口より徒歩8分。
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