「会田誠『GROUND NO PLAN』展」 青山クリスタルビル

青山クリスタルビル
「会田誠『GROUND NO PLAN』展」 
2/10~2/24



青山クリスタルビルで開催中の「会田誠『GROUND NO PLAN』展」を見てきました。

大林組の会長が理事長を務める大林財団は、国内外のアーティストに、従来とは異なる視点により、都市のあり方を提案してもらう、新たな助成制度、「都市のヴィジョン」プログラムをはじめました。

第一弾に会田誠が選ばれました。それにしても幅広く活動し、一見、都市に特段の関心があるようにも思えない会田は、一体、どのような表現で向き合ったのでしょうか。


「シェイキング・オベリスク」

冒頭からして会田節が炸裂していました。いきなり目の前では、「シェイキング・オベリスク」なるジオラマが、もの凄い勢いでブルブルと震えていました。中央に白くそびえたつのは、欧米の広場でよく見られるオベリスク、つまりモニュメントの一種で、それを地震大国日本に持ってきたことを想定していました。かなり素早く動くため、うまくカメラに収められませんでしたが、ジオラマに目を向けると、確かに地震に驚いては、尻もちする人の姿が見られました。


「シン日本橋」

その向こうにあるのが、「シン日本橋」なる作品で、既存の首都高の上を、これまた凄まじい角度で超えていく木製の日本橋の姿を描いていました。もはやスキーのジャンプ台のようで、おちおち人が渡ることは出来そうもありません。いかにも山口晃風の描写でしたが、先にプランを発表したのは山口で、それに敬意を示したのか、署名に「ニセ口晃」と記していました。


「新宿御苑大改造計画ジオラマ」

実のところ会田は、かつて都市に関する作品を発表していました。それが2001年の「新宿御苑大改造計画ジオラマ」で、かつて滞在していたニューヨークのセントラル・パークに着想を得て作られました。会田は、かの広大な新宿御苑を、高低差が50メートルもあり、大展望露天風呂を併設した、一大渓谷帯へと改造しようとしました。この山のようなジオラマが、思いがけないほど緻密に作られていて、しばらく見ていても飽きませんでした。


「新宿御苑大改造計画」

そして何よりも細かいのが、大きな黒板に描かれた、改造計画のテキストとスケッチでした。ここでは新宿御苑の見取り図とともに、そもそも何故に渓谷を作り上げる必要があるのかなどについて、事細かに記していました。


「新宿御苑大改造計画」

これが凄まじくマニアックで、茶店のデザインから、工事のあり方や使用する素材、そして夜間の開放などについても触れていました。何でもビオトープを目指すため、アスファルトやコンクリートは禁止し、夜間は全面閉園した上で、来場者を法螺貝で拭きながら追い払うのだそうです。テキストを読むだけでも大変ですが、さすがに会田流で、一捻りも二捻りもあり、日本の都市や公園に対する批評的な視点を持ち得ながらも、思わず笑ってしまうような箇所も少なくありませんでした。


「NEO出島」

旧作の新宿御苑に対し、霞ヶ関を改造しようとしたのが、新作「NEO出島」でした。ここでは国会議事堂や議員会館の立ち並ぶ霞ヶ関の上に人工地盤を築き、まさに「出島」を造ろうと提案していました。「出島」は国際社会で、公用語は英語であり、入るには厳密な審査を経たビザが必要で、その基準に「立派な人物」であるとしています。あくまでも「思いつき」とありましたが、あえて政府機関の真上に設置することに、アイロニカルな視点も伺えるのかもしれません。


「風の塔」改良案:「ちくわの女」完成予想図

アクアラインの人口島、「風の塔」を、新たに改良しようとしたのが、「ちくわ女」でした。会田は「風の塔」を可もなく不可もないデザインとし、おおよそ東京にある建造物を、「周りに合わせ、空気を読んで、空気のような無個性な存在」だとした上で、「ちくわの女」を提案しました。確かに全く空気を読まない奇抜なデザインで、海上に設置されれば、賛否両論、そして一躍、名所と化すに違いありません。また海水を組み上げて循環させたのか、目から涙が流れ落ちていたのも印象的でした。

さらに階下がカオスでした。キーワードはスラムで、実際にも、もはや廃墟かと見間違えるかのようなスペースが広がっていました。


「セカンド・フロアリズム」

「セカンド・フロアリズム」は、建物を2階以下に制限しようとするアイデアで、実際に会田自身も、海外での滞在を除くと、2階以上に住んだことがないそうです。さらに「快適なバラック」を究極の理想とし、そのシステムを構築するのがプロの仕事だとしていました。


「セカンド・フロアリズム」

そしてテキストのボリュームが半端ありません。殴り書きで、文字自体からも、会田の主張ならぬ、強いエネルギーが感じられました。ともかく相当に読ませます。


「発展途上国からはじめよう」

会田は「バカなことを考えたい。」としながらも、現実を見ると、「閉塞感があり」、「新しいものを作ったところで、たかが知れていて」、「頭の中を巡る、楽観と悲観、希望と絶望の混沌をそのまま見せる。」と語っています。(*「」内はチラシより。)確かにほかにも「北海道遷都」や「群馬県を巨大湖に」、また「発展途上国からはじめよう」と、ユニーク極まりないアイデアが垣間見えました。当然ながら実現云々の話ではありません。


「アーティスティック・ダンディ」

どこか刺激的でかつ、笑いを伴いながらも、時に真面目に現実を見据え、示唆にも富んだ、実に奇妙なバランスの上に成り立った展示ではないでしょうか。


「会田誠『GROUND NO PLAN』展」会場風景

早々に出かけてきましたが、思いがけないほど賑わっていました。会期は2週間の限定で、残すところ僅かです。最終日の24日はかなり混み合うかもしれません。


今後、大林財団では、アーティストを替え、2年に1度の頻度で「都市のヴィジョン」を開催していくそうです。初回は会田誠が、「100%本気でなく、徹頭徹尾冗談」(日刊建設工業新聞インタビューより)で、「ツッコミどころ満載」(チラシより)とする展示を行いました。今後は、どのような展開が待ち受けているのでしょうか。

入場は無料です。自由に撮影も出来ました。



2月24日まで開催されています。

「会田誠『GROUND NO PLAN』展」 青山クリスタルビル
会期:2月10日(土)~24日(土)
時間:10:30~18:30。
 *金曜は19時半まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:会期中無休。
料金:無料。
住所:港区北青山3-5-12 B1・B2F
交通:東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線表参道駅A3出口より徒歩3分。
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