「リー・キット 僕らはもっと繊細だった。」 原美術館

原美術館
「リー・キット 僕らはもっと繊細だった。」
9/16〜12/24



原美術館で開催中の「リー・キット 僕らはもっと繊細だった。」を見てきました。

1978年に香港に生まれ、現在は台北を拠点に活動するリー・キットは、絵画やドローイングをはじめ、プロジェクターによる映像などを用い、空間全体を絵画のように仕上げた作品を制作してきました。

国内の美術館としては初めての個展です。原美術館のために新しく作られたインスタレーションが公開されていました。



窓から淡い光が差し込んできました。その光は室内に入り込み、プロジェクターの光と交わっては、一枚の絵画を照らしていました。しかし自然光は、カーテンロール越しのため弱く、館内はかなり薄暗く感じました。実際に、照明はほぼ消えていて、自然光とプロジェクターの光のみが空間を満たしていました。



リーはサイトスペシフィック、すなわち特定の場所に存在するために制作することを特徴としていて、今回の個展でも、おおよそ10日間、美術館に通っては、作品を作り上げました。



光のみならず、影の存在も、空間にとって重要な要素と言えるかもしれません。というのも、プロジェクターによる映像は、時に四方の壁に展開し、光や色を映していますが、プロジェクターの前を横切ると、当然ながら、人の影が現れました。そして、観客は自由に作品の前を行き来しては、影を生み出していましたが、この影と映像とが妙に関係しあっているように感じられるのも不思議でなりませんでした。

中には影自体が、映像を構成する一部として見えるような場合もありました。これほど影を通して、自分、そして他者の存在を意識する展示も少ないかもしれません。



がらんとした室内には、日用品も置かれ、一見、映像と無関係にも思えましたが、必ずしもそうではありませんでした。例えばマグカップの置かれた窓がありましたが、同じ窓を捉えた映像も映されていました。また1階の絵画を映した映像が2階で展開するなど、各々の作品は、緩やかに繋がっているようにも見えました。



さらに映像と思い、眺めていた絵画が、実際に存在していたりするなど、そもそも一体、自分が目の当たりにしている光景が、どこに存在し、あるいは存在しないのかが、分からなくなることもありました。



木漏れ日を映した映像に目がとまりました。朧げな樹々は僅かに揺れていましたが、隣には扇風機が回っていて、その音がまるで木を揺らす風の音にも聞こえました。



絵画にはテキストも示され、男女の間の物語の気配を感じましたが、何か特定のストーリーがあるわけではありません。あくまでも全ては意味ありげでありながら、不思議と収まり良く自然に場を満たしていました。



ほぼ自然光の展示のため、時間帯によってかなり見え方が変化するのではないでしょうか。私は昼間の晴天時に行きましたが、日没後、外光のない夜間では雰囲気が一変するかもしれません。原美術館では、毎週水曜日のみ、夜8時まで開館しています。



カーテンロールで遮られた窓の外がとても気になりました。空間は断片化しながらも、外へと連続しているように思えなくもありません。



1階と2階を行き来しては、リーの生み出した空間に身を委ねている自分に気がつきました。光や淡い色調を帯びた抽象絵画のように広がっても見えます。


撮影も出来ました。12月24日まで開催されています。*写真はいずれも「リー・キット 僕らはもっと繊細だった。」会場風景。

「リー・キット 僕らはもっと繊細だった。」 原美術館@haramuseum
会期:9月16日(日)〜12月24日(月・祝)
休館:月曜日。但し祝日にあたる9月17日、24日、10月8日、12月24日は開館。9月18日、25日、10月9日は休館。
時間:11:00~17:00。
 *水曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで
料金: 一般1100円、大高生700円、小中生500円
 *原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料。
 *20名以上の団体は1人100円引。
住所:品川区北品川4-7-25
交通:JR線品川駅高輪口より徒歩15分。都営バス反96系統御殿山下車徒歩3分。
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