都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」 東京国立博物館・平成館
東京国立博物館・平成館
「特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
10/2~12/9
東京国立博物館・平成館で開催中の「特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」を見てきました。
「千本釈迦堂」の名で知られる京都の大報恩寺は、釈迦信仰の中心地として親しまれ、多くの仏像彫刻を有してきました。
その大報恩寺より、「釈迦如来立像」と「十大弟子立像」、さらに「六観音菩薩像」など、主に慶派の仏像がまとめてやって来ました。うち「釈迦如来立像」が寺外で公開されるのは、初めてのことでもあります。
「釈迦如来立像」は、快慶の一番弟子である行快の手がけた仏像で、本堂の内陣に安置され、大報恩寺の本尊として伝わって来ました。同寺でも年に数回しか公開されないため、いわゆる秘仏として扱われています。
やや丸みを帯びた身体には量感もあり、肉付きの良い頭部と、釣り上がる目尻を特徴としていました。台座、光背とも当初のもので、金色のまばゆい光を放っていました。
その「釈迦如来立像」を取り囲むのが、釈迦の弟子を代表する10人の高僧を示した「十大弟子立像」で、快慶が晩年に造仏しました。現在は防災上の理由などにより、同寺の霊宝殿に収められていますが、今回は特別に当初の姿と同様、「釈迦如来立像」の周囲に並べられました。いずれもガラスケースなしの露出展示で、360度の角度から鑑賞することが出来ました。
この「十大弟子立像」が想像以上に存在感がありました。いずれも像高は1メートル弱と、さほど大きくないのにも関わらず、生気に満ち溢れた表情など、各僧の個性が実に見事に表現されていました。うち「天眼第一」の「阿那律立像」は、まるで見る者の心を見透かすかのように前を見据え、「蜜行第一」の「羅睺羅立像」は、口を開けては、さも語りかけるかのような仕草を見せていました。
さらに「説法第一」の「富楼那立像」は、やや横目を向き、深く思案するようでもあり、「論議第一」の「迦旃延立像」は、どこか物悲しい様で目を伏しているかのようでした。ともかくいずれの立像も驚くほどに臨場感があり、同じ表情をとる者は、一人としていませんでした。また一部は着衣に細やかな彩色も残っていて、往時の輝きも伺い知れました。
重要文化財に指定された唯一の六観音も見どころの1つでした。運慶の晩年の弟子である定慶による仏像で、像高はいずれも1メートル80センチほどありました。複雑に折られた着衣も特徴的で、6体の全ての光背と台座も当初のものが残されました。
重要文化財「聖観音菩薩立像」 肥後定慶作 鎌倉時代・承応3(1224)年 京都・大報恩寺
「聖観音菩薩立像」のみ撮影が可能でした。口元を引き締め、細い目で前を見やる姿は、どこか泰然としていて、右の指先は軽やかに屈曲し、洗練された作風も見られました。
重要文化財「聖観音菩薩立像」 肥後定慶作 鎌倉時代・承応3(1224)年 京都・大報恩寺
なお「六観音菩薩像」は10月28日まで光背付きの姿で展示されますが、10月30日からは光背が外されます。よって以降は、仏像の背中も観覧することが出来ます。
仏像以外では、「北野経王堂図扇面」が印象に残りました。北野経王堂とは、大報恩寺に近い、北野天満宮の南にあった仏堂で、足利義満が建立しました。かつては千人もの僧が参集した大規模な法事も行われていたものの、江戸時代には衰退し、宝物の多くは大報恩寺に移されました。先の「六観音菩薩像」も、元は北野経王堂に納められていたそうです。
その仏事、すなわち北野万部経会を舞台としたのが、「北野経王堂図扇面」で、大勢の人が集う中、僧侶が経典を読む姿が描かれていました。人物の表現は緻密で、彩色もまだ鮮やかでした。(*展示は10月28日で終了。)
特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」と同時開催の展覧会です。平成館のうち、正面右手の第3室と第4室で大報恩寺展が行われ、反対側の第1室と第2室にてデュシャン展が開かれています。(別料金。ただしセット券あり。)
繰り返しになりますが、快慶の「十大弟子立像」が、まさかこれほど迫力のある作品とは思いませんでした。一連の立像を見るだけでも、大変な充足感がありました。
金曜日の夜間開館を利用しましたが、会場には余裕がありました。ゆっくり楽しめます。
12月9日まで開催されています。
「特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」(@kaikeijokei2018) 東京国立博物館・平成館(@TNM_PR)
会期:10月2日(火) ~12月9日(日)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜、及び10月31日(水)、11月1日(木)は21時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し10月8日(月・祝)は開館し、10月9日(火)は休館。
料金:一般1400(1200)円、大学生1000(800)円、高校生800(600)円。中学生以下無料
*( )は20名以上の団体料金。
*同時開催の特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」との2展セット券あり。一般2000円。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
「特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」
10/2~12/9
東京国立博物館・平成館で開催中の「特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」を見てきました。
「千本釈迦堂」の名で知られる京都の大報恩寺は、釈迦信仰の中心地として親しまれ、多くの仏像彫刻を有してきました。
その大報恩寺より、「釈迦如来立像」と「十大弟子立像」、さらに「六観音菩薩像」など、主に慶派の仏像がまとめてやって来ました。うち「釈迦如来立像」が寺外で公開されるのは、初めてのことでもあります。
「釈迦如来立像」は、快慶の一番弟子である行快の手がけた仏像で、本堂の内陣に安置され、大報恩寺の本尊として伝わって来ました。同寺でも年に数回しか公開されないため、いわゆる秘仏として扱われています。
やや丸みを帯びた身体には量感もあり、肉付きの良い頭部と、釣り上がる目尻を特徴としていました。台座、光背とも当初のもので、金色のまばゆい光を放っていました。
その「釈迦如来立像」を取り囲むのが、釈迦の弟子を代表する10人の高僧を示した「十大弟子立像」で、快慶が晩年に造仏しました。現在は防災上の理由などにより、同寺の霊宝殿に収められていますが、今回は特別に当初の姿と同様、「釈迦如来立像」の周囲に並べられました。いずれもガラスケースなしの露出展示で、360度の角度から鑑賞することが出来ました。
この「十大弟子立像」が想像以上に存在感がありました。いずれも像高は1メートル弱と、さほど大きくないのにも関わらず、生気に満ち溢れた表情など、各僧の個性が実に見事に表現されていました。うち「天眼第一」の「阿那律立像」は、まるで見る者の心を見透かすかのように前を見据え、「蜜行第一」の「羅睺羅立像」は、口を開けては、さも語りかけるかのような仕草を見せていました。
さらに「説法第一」の「富楼那立像」は、やや横目を向き、深く思案するようでもあり、「論議第一」の「迦旃延立像」は、どこか物悲しい様で目を伏しているかのようでした。ともかくいずれの立像も驚くほどに臨場感があり、同じ表情をとる者は、一人としていませんでした。また一部は着衣に細やかな彩色も残っていて、往時の輝きも伺い知れました。
重要文化財に指定された唯一の六観音も見どころの1つでした。運慶の晩年の弟子である定慶による仏像で、像高はいずれも1メートル80センチほどありました。複雑に折られた着衣も特徴的で、6体の全ての光背と台座も当初のものが残されました。
重要文化財「聖観音菩薩立像」 肥後定慶作 鎌倉時代・承応3(1224)年 京都・大報恩寺
「聖観音菩薩立像」のみ撮影が可能でした。口元を引き締め、細い目で前を見やる姿は、どこか泰然としていて、右の指先は軽やかに屈曲し、洗練された作風も見られました。
重要文化財「聖観音菩薩立像」 肥後定慶作 鎌倉時代・承応3(1224)年 京都・大報恩寺
なお「六観音菩薩像」は10月28日まで光背付きの姿で展示されますが、10月30日からは光背が外されます。よって以降は、仏像の背中も観覧することが出来ます。
仏像以外では、「北野経王堂図扇面」が印象に残りました。北野経王堂とは、大報恩寺に近い、北野天満宮の南にあった仏堂で、足利義満が建立しました。かつては千人もの僧が参集した大規模な法事も行われていたものの、江戸時代には衰退し、宝物の多くは大報恩寺に移されました。先の「六観音菩薩像」も、元は北野経王堂に納められていたそうです。
その仏事、すなわち北野万部経会を舞台としたのが、「北野経王堂図扇面」で、大勢の人が集う中、僧侶が経典を読む姿が描かれていました。人物の表現は緻密で、彩色もまだ鮮やかでした。(*展示は10月28日で終了。)
特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」と同時開催の展覧会です。平成館のうち、正面右手の第3室と第4室で大報恩寺展が行われ、反対側の第1室と第2室にてデュシャン展が開かれています。(別料金。ただしセット券あり。)
繰り返しになりますが、快慶の「十大弟子立像」が、まさかこれほど迫力のある作品とは思いませんでした。一連の立像を見るだけでも、大変な充足感がありました。
皆さん、おは❤️本日から、後期展示開始です😊😊前期とは違った表情を見せる、六観音菩薩像を是非、見にいらして下さい🙏光背を後ろに展示したことで、影が格好いいです🤯#快慶・定慶展 pic.twitter.com/eRsPjMeK4o
— おかめちゃん@快慶・定慶展【公式】 (@kaikeijokei2018) 2018年10月30日
金曜日の夜間開館を利用しましたが、会場には余裕がありました。ゆっくり楽しめます。
12月9日まで開催されています。
「特別展 京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」(@kaikeijokei2018) 東京国立博物館・平成館(@TNM_PR)
会期:10月2日(火) ~12月9日(日)
時間:9:30~17:00。
*毎週金・土曜、及び10月31日(水)、11月1日(木)は21時まで開館。
*入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し10月8日(月・祝)は開館し、10月9日(火)は休館。
料金:一般1400(1200)円、大学生1000(800)円、高校生800(600)円。中学生以下無料
*( )は20名以上の団体料金。
*同時開催の特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」との2展セット券あり。一般2000円。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。
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