2018年12月に見たい展覧会〜吉村芳生・扇の国・廃墟の美術史

冬とは思えないほど暖かい日が続いていますが、早いもので今年も残すところあと1ヶ月となりました。

11月に見た展覧会では、絵本のみならず、美術家としての活動を丹念に追った「ブルーノ・ムナーリ」(世田谷美術館)をはじめ、同時代の芸術家なども取り上げ、互いの影響関係も明らかにした「駒井哲郎」(横浜美術館)、油彩の熱気に包まれ、特に宗教画の迫力に心を打たれた「ルーベンス展」(国立西洋美術館)、水墨の多彩な技が光った「斉白石」(東京国立博物館)などが印象に残りました。

また現在、都内各地では、「フェルメール」、「ムンク」、「ルーベンス」、「フィリップス・コレクション」など、大規模な西洋美術展が立て続けに開催されています。いずれも充実していますが、日時指定制の「フェルメール」はもとより、特に「ムンク」が大変に人気を集め、土日を中心に入場待ちの行列が発生しています。いずれも会期末に向けて混み続けそうです。

12月に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「神々のやどる器―中国青銅器の文様」 泉屋博古館分館(~12/24)
・「言語と美術―平出隆と美術家たち」 DIC川村記念美術館(~2019/1/14)
・「エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し」 東京都庭園美術館(~2019/1/14)
・「列島の祈り―祈年祭・新嘗祭・大嘗祭―」 國學院大學博物館(~2019/1/14)
・「5RoomsⅡ — けはいの純度」 神奈川県民ホールギャラリー(12/17~2019/1/19)
・「カタストロフと美術のちから展」 森美術館(~2019/1/20)
・「霧の抵抗 中谷芙二子」 水戸芸術館(~2019/1/20)
・「辰野登恵子展」 埼玉県立近代美術館(~2019/1/20)
・「皇室ゆかりの美術―宮殿を彩った日本画家」 山種美術館(~2019/1/20)
・「吉村芳生 超絶技巧を超えて」 東京ステーションギャラリー(~2019/1/20)
・「扇の国、日本」 サントリー美術館(~2019/1/20)
・「建築 × 写真 ここのみに在る光」 東京都写真美術館(~2019/1/27)
・「国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア」 Bunkamura ザ・ミュージアム(~2019/1/27)
・「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」 渋谷区立松濤美術館(12/8~2019/1/31)
・「国宝 雪松図と動物アート」 三井記念美術館(12/13~2019/1/31)
・「タータン展 伝統と革新のデザイン」 三鷹市美術ギャラリー(12/8~2019/2/17)

ギャラリー

・「森淳一展 山影」 ミヅマアートギャラリー(~11/24)
・「CITIZEN "We Celebrate Time" 100周年展」 スパイラルガーデン(12/7~12/16)
・「桑山忠明」 タカ・イシイギャラリー東京(~12/22)
・「大堀相馬焼167のちいさな豆皿」 クリエイションギャラリーG8(~12/22)
・「田根剛|未来の記憶」 TOTOギャラリー・間(~12/23)
・「企(たくらみ)展—ちょっと先の社会をつくるデザイン」 東京ミッドタウン・デザインハブ(~12/24)
・「“In Goude we trust!” ジャン=ポール グード展覧会」 CHANEL NEXUS HALL(~12/25)
・「絵と、 vol.4 千葉正也」 ギャラリーαM(~2019/1/12)
・「鈴木理策 写真展:知覚の感光板」 キヤノンギャラリーS品川(~2019/1/16)
・「続々 | 三澤遥」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(12/3~2019/1/26)
・「富士屋ホテルの営繕さん—建築の守り人」 LIXILギャラリー(12/6~2019/2/23)
・「木下直之全集—近くても遠い場所へ」 ギャラリーA4(12/7~2019/2/28)
・「それを超えて美に参与する 福原信三の美学」 資生堂ギャラリー(~2019/3/17)

一見、風変わりなチラシに目がとまった方も多いのではないでしょうか。画家、吉村芳生の回顧展が、東京ステーションギャラリーでスタートしました。



「吉村芳生 超絶技巧を超えて」@東京ステーションギャラリー(~2019/1/20)

1950年に山口県で生まれた吉村は、自画像や身近な風景をモノトーンの版画やドローイングで表した一方、のちに色彩豊かな花の絵を描き、一定の評価を得て来ました。また東京では、2007年の「六本木クロッシング」にも参加し、かなり注目を集めました。



チラシの作品は「新聞と自画像」と題した、いわゆる自画像ですが、顔だけでなく、新聞紙面も、色鉛筆と鉛筆で描いています。まさに写実的ですが、制作は写真や版画を取り込んだ、機械的とも呼べる技法に基づいていて、超絶技巧とは異なっていました。中国、四国地方以外の美術館では、初めての回顧展でもあります。

続いて日本美術です。サントリー美術館で「扇の国、日本」が開催されます。



「扇の国、日本」@サントリー美術館(~2019/1/20)

今も身近に用いられる扇は、少なくとも10世紀末には日本で発展し、中国や朝鮮半島へ輸出されました。


その扇にスポットを当てたのが、「扇の国、日本」で、扇のみならず、扇の描かれた屏風や巻物、さらに工芸や染織などが、約160件超(展示替えあり)ほど出品されます。重要文化財で、島根の佐太神社に伝わる「彩絵檜扇」(平安時代)をはじめ、貴重な扇を目の当たりに出来る良い機会となりそうです。

美術ファンのみならず、端的に「廃墟」なる言葉に心惹かれる方も多いかもしれません。渋谷区立松濤美術館にて「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」が開催されます。



「終わりのむこうへ:廃墟の美術史」@渋谷区立松濤美術館(12/8~2019/1/31)


これは「廃墟」をテーマに、西洋の古典絵画から、現代日本の美術作品までを俯瞰する展覧会で、ユベール・ロベール、ピラネージをはじめ、コンスタブル、ルソー、マグリット、デルヴォー、さらにはそ藤島武二に岡鹿之助、そして元田久治や大岩オスカールなどの作品が一堂に公開されます。「廃墟」を切り口に、洋の東西を超えた、美術の歴史が紡がれるかもしれません。



来年を見据え、年間の展覧会の特集を組んだ雑誌が目立って来ました。どこかのタイミングでブログでもご紹介したいと思います。(リンクは、左から日経おとなのOFF、芸術新潮、100%ムックシリーズ)

更新がやや滞っていますが、当面は現状のペースでブログを続ける予定です。お付き合いくだされば嬉しいです。

それでは今月もどうぞ宜しくお願いします。
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