コスチューム・ジュエリーが一堂に。アクセサリーミュージアムへ行ってきました

貴金属や宝石などで作るジュエリーとは異なり、ファッション性を重視し、素材を問わずに作られた装身具であるコスチューム・ジュエリー。ファッションに関心のある方であれば、身近に触れる機会も少なくないかもしれません。


アクセサリーミュージアム
http://acce-museum.main.jp

コスチューム・ジュエリーを国内最大級のスケールで展示するミュージアムが、東京の目黒区上目黒にあります。


「アクセサリー・ミュージアム」入口。祐天寺の閑静な住宅地の中に位置します。

その名はアクセサリーミュージアムで、田中美晴、元子夫妻のコレクションを公開するため、個人の邸宅を改装し、2010年に開館しました。最寄りは東急東横線の祐天寺駅で、住宅街を経由し、細い路地を抜けた先に位置していました。駅からは歩いて10分もかかりませんでした。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM1 アール・デコ)

受付の先にはアール・デコを模した展示室が広がり、1920年から30年代にかけ流行した、アール・デコのアクセサリーが展示されていました。この時代は、女性の社会進出や交通手段の発達により、シンプルな服装が求められ、幾何学的なデザインや、オリエンタルなモチーフをアレンジしたアクセサリーが好まれました。直線のモチーフや、色の対比などが、特徴としてあげられるそうです。


ペーストによるアクセサリー

宝石の代用品であった、ペーストのアクセサリーも目を引くかもしれません。ガラスをカットして作られていて、安価なジュアリーとして、アール・デコ以前から人気を博していました。


「ペークライトブレスレット」 1920年〜1930年 フランス

合成樹脂の初期の形であるペークライトが登場したのもアール・デコの時代で、色々な形に成形しやすいこともあり、モダンなデザインのアクセサリーが生み出されました。


「スコティッシュジュエリー」 ほか

最も古いコレクションは、1837年から1901年のヴィクトリア朝のアクセサリーでした。イギリスの貴族文化の価値観を重視し、荘厳でかつ華麗な装飾を特徴としていて、前期にはロマンテックなものや自然、後期には過去の文物やデザインを取り込んだモチーフが流行しました。


「モーニング(喪)・ブレスレット」

またヴィクトリア女王が、長く夫のアルバート公の喪に服したことから、黒が広く着用されました。さらに象牙も流行し、カメオも作られました。ケルトのデザインのアクセサリーも魅惑的かもしれません。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM4 アール・ヌーボー)

19世紀末から20世紀初頭のアール・ヌーヴォーに関したアクセサリーも充実していました。イスラムや中国、日本の文化の影響を顕著に受けていて、動物や植物などの流動的な曲線を特徴としていました。さらに当時としては新しい素材であった、ガラスや鋼鉄も積極的に取り入れられました。


「虫ブローチ」 1850年〜1900年 フランス

中には、本物のタマムシをブローチに仕立てた「虫ブローチ」もありました。またベルトを身につける習慣があり、バックルが多いのも特徴の1つでした。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM4 オートクチュール)

ヴィクトリアン、アール・ヌーボー、アール・デコに続くのは、1940年から60年の間のオートクチュールの時代でした。1940年代は第二次世界大戦の影響でミリタリー風のファッションが流行しました。そして戦後にパリでオートクチュールが再開すると、1947年にディオールが最初のコレクションを発表して、世の中に衝撃を与えました。


「ブローチ」 1950年代 アメリカ ほか

1950年代には、正統派のクチュールと若者のファッションが対峙していていて、1960年代に入ると、オートクチュールメゾンにプレタポルテの波が押し寄せました。またヤングファッションも革命期を迎え、ジーンズやミリタリー、アイビー・ルックなど、新たなカルチャーを反映したファッションが生み出されました。一方のアクセサリーでは、自然の素材として、象牙などが好まれました。


「ハートブローチ」 1970年代 フランス

1970年代に入ると、プレタポルテでは若いデザイナーが台頭し、豪華なクチュールのモードは一部の人のものとなりました。また同時にアンチモードへの時代でもあり、ヒッピーなどの文化もファッションに影響を与えました。ヤングアクセサリーのポップなモチーフも目を引くかもしれません。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM6 プレタポルテ)

時代の最先端をいくような前衛的なモチーフが好まれたのが、アヴァンギャルドの時代とされる1980年代でした。トレンドは目まぐるしく変化していく中、人々は自分の好きなスタイルでファッションを表現し、ファッションを楽しみました。日本ではバブル景気を反映し、派手で華美なコスチューム・ジュエリーが人気を博しました。いわゆる「デコ盛り」の先駆けとも言えるようなジュエリーも目立っていました。


シャネル・オートクチュール アクセサリー

あくまでも個人の邸宅であるため、スペースとしては必ずしも広くありませんが、地下1階、地上1階、2階の3層の建物には、合計9の展示室があり、いずれも所狭しとアクセサリーで埋め尽くされていて、総数は2000以上にも及び、想像以上に見応えがありました。サンローラン、ディオール、シャネルと、よく知られたブランドのアクセサリーも少なくありません。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM6 プレタポルテ)

一部では絵画の参照があったり、衣装のコレクションも目に付くなど、アクササリーを通じて、1850年から2000年へと至った、各時代の文化や風俗がよく伝わるような展示でした。アクササリーファンだけでなく、美術ファンにも見ておきたい内容と言えるかもしれません。


「アクセサリーミュージアム」展示風景(ROOM6 プレタポルテ)

入館料は一般1000円ですが、ぐるっとパスを利用すると、フリーで入場出来ます。お得なパスの利用をおすすめします。


ミュージアムショップ

ミュージアムショップも充実していました。ヴィンテージから現代のコスチューム・ジュエリーやアクセサリーパーツだけでなく、アクセサリーに関したカタログやグッズなどが数多く販売されていました。また横のスペースでは、少人数制のアクセサリー教室が開催されるほか、アクセサリークリニックとして、アクセサリーのアフターケアについての相談も受け付けていました。


館内では、「アメリカンドリーマー ミリアム・ハスケル」と題し、コスチューム・ジュエリーの創始者とも呼ばれる、ミリアム・ハスケルの企画展も開催されていました。そちらも次のエントリでご紹介したいと思います。

「アクセサリーミュージアム」@acce_museum
休館:月曜・第4、5日曜日。
 *冬季休館(12月23日〜1月16日)、及び8月休館(8/1~8/31)
時間:10:00~17:00
 *入館は16時半まで。
料金:一般1000円、学生(小学生以上)600円。ぐるっとパスでフリー。
住所:目黒区上目黒4-33-12
交通:東急東横線祐天寺駅中央改札口側西口1より徒歩7分。

注)写真は美術館の許可を得て撮影しました。
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