「記憶の珍味 諏訪綾子展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「記憶の珍味 諏訪綾子展」
2020/1/18~2/29 8/25~9/26



資生堂ギャラリーで開催中の「記憶の珍味 諏訪綾子展」を見てきました。

新型コロナウイルス感染症対策のため、半年間休止を余儀なくされた「記憶の珍味 諏訪綾子展」が、いわゆるコロナ禍を踏まえて新たに内容を変えた展示を行っています。



まるで銀座の地下に森が広がったような景色と言えるかもしれません。まずホワイトキューブに足を踏み入れて目に飛び込んできたのが、緑色の葉を茂らせた樹木の枝で、テーブルセットを中心にぐるりと一周、いずれも芳しい香りを放ちながら、全部で8つほど吊り下がっていました。



そしてスマホの音声ガイドに誘われながら、それぞれに異なった樹木を香りをかぎつつ、何らかの記憶を呼び覚ますものを選んでは、会場の奥へと進みました。



私自身、何度か樹木の周囲を巡りつつ、香りと記憶を結び付けようと試みたものの、どうしてもイメージが浮かび上がらなかったため、好きな香りを選ぶことにしました。



ちょうど樹木の下の白い柱にはAからHまでの文字がつけられていて、私はGの香りを選んでは、壁にかけられていた「記憶の珍味をあじわう素」を一つ取りました。そして袋を開けると、香りのついた丸いシールが現れ、さらに音声ガイドの指定によって、シールをマスクの内側に貼って持ち帰りました。今回の展示ではスマホの音声ガイドが、いわば観客の行動を導くように作られていました。



「食」をテーマにした表現に取り組む作家、諏訪綾子は、記憶が香りによって引き出されることに着目し、記憶を珍味として味わうべく、今回のインスタレーションを発表しました。

しかし新型コロナウイルス感染拡大のため2月末に一度展示が休止されると、諏訪は東京を離れて創作の拠点を森の中へと移しました。そして多くの出会いや気づきがあったとして、当初の「自然からのインスピレーション」というコンセプトこそ同一に、森での生活を反映させた展示へと作り変えました。



再開前はテーブル上の8つの透明ケースの中に香りのついたサンプルが置かれていて、観客自身の記憶を呼び起こす香りを係員に伝えると、香りの詰まった小さな珍味を供されて口にしていたそうです。しかし再開後は感染症対策に伴う接触防止のため、誘導も係員からスマホの音声ガイドとなり、口にして味わう行為そのものもなくなりました。また鉱石などに似たサンプルも樹木へと大きく変わりました。



ただマスクの内側で口元に広がる香りを嗅いでいると、あたかも口でも香りを味わっているような気持ちにもさせられました。それに帰宅して展示の内容を家族に話すと、香りが「祖父母のつけていた香水の匂いを思い出す。」と言われました。マスクで香りを持ち帰ることによって、自分では思いもつかなった記憶が呼び覚まされることも、1つの新たな気づきと言えるのかもしれません。


観覧は完全予約制です。ギャラリーの公式サイトを経由してArtStickerより事前にチケットを手配しておく必要があります。



9月26日まで開催されています。

「記憶の珍味 諏訪綾子展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2020年1月18日(土)~2月29日(土)/ 8月25日(火)~9月26日(土)
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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