「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生−石と木の超建築」 角川武蔵野ミュージアム

角川武蔵野ミュージアム
「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生−石と木の超建築」
2020/8/1~10/15



角川武蔵野ミュージアムで開催中の「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生−石と木の超建築」を見てきました。



2020年8月1日、埼玉県所沢市の「ところざわサクラタウン」に、美術、博物、図書機能の複合施設である角川武蔵野ミュージアムがプレオープンしました。



それを期して開かれているのが「隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生−石と木の超建築」で、同ミュージアムを設計した建築家、隈研吾の手掛けた建築作品が、模型や写真、映像などで紹介されていました。



まず目を引いたのは角川武蔵野ミュージアムに関する内容で、外観を特徴付ける石のデザイン構成やサンプル、そして「ところざわサクラタウン」の模型が展示されていました。



石は表面を滑らかに磨くことなく、割り出した荒々しさを保った「割肌」なる仕上げを用いていて、武蔵野の大地の奥深くに眠る地層の火山堆積物が、地中より足元を割って出てきたようなイメージをもって設計されました。



この他では近年に手掛けたスコットランドのヴィクトリア・アルバート・ミュージアムの分館や、東京・晴海のパビリオン、それに本来であれば今年の東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場になる予定だった国立競技場の模型も紹介されていました。



角川武蔵野ミュージアム同様、石造りの建物であるのが栃木県那須町の石の美術館で、かつて米を貯蔵していた80年前の古い建物を再利用して設計されました。



今年11月にミュージアム内にオープン予定の本棚劇場のモックアップも公開されていて、木組の棚へ本を並べた様子を見ることができました。現在、劇場自体は完成したものの、棚の区分を示す見出しの入れ方や、プロジェクションマッピングが行われるなど、オープンに向けて実験が行われているそうです。



会場内の椅子も隈研吾のデザインによるもので、「クマヒダ」、「GC」、「KA」といった椅子を手にして感触を確かめたり、自由に腰掛けることも可能でした。



今回の展覧会で一番目立っていたのは、壁面全体を用いた映像インスタレーション「往還の風景 1961-2020」でした。写真家の新津保建秀が、隈の作品集「東京 TOKYO」のために撮り下ろした写真を再構成したもので、首都圏に点在する隈建築が流れるように映されていました。



ここで新津保は隈建築の撮影に際して、隈が少年時代より通った街並みも写真に記録していて、端的な建築写真だけでなく、建築を取り込んだ街の風景や行き交う人々の様子を見られました。ロードムービー風の展開も垣間見えたかもしれません。



細かな図面やスケッチなどはなく、広い会場ゆえかがらんとした印象もありましたが、角川武蔵野ミュージアムを中心とした近年の隈の活動を追うことができました。



さて隈研吾展にあわせて、角川武蔵野ミュージアムの館内も一部見学してきました。



プレオープンの段階のため、私が出向いた8月最終週の日曜に見られたのは、ともに1階に位置する隈研吾展会場のグランドギャラリーとマンガ・ラノベ図書館でした。



マンガ・ラノベ図書館は、KADOKAWAのほぼ全てのライトノベルを所蔵する図書館で、いずれの作品も手にとって自由に閲覧することが可能でした。



インフォメーションとチケットブースは2階に位置していて、ロックミュージアムショップがクローズしていたものの、角カフェはオープンしていました。



ともかく黒を基調した内装デザインが独特で、網目状のパーティションや、建物外観をイメージした透明の飛沫防止カウンターなども印象に残りました。



一方で3階のEJアニメミュージアム、4階の荒俣ワンダー秘宝館、4階から5階の本棚劇場、5階のレストランやギャラリーは全て未開業のために立ち入ることが叶いませんでした。



それらの全ての見学は、グランドオープン予定の11月6日以降となりそうです。(9月4日からは、隈研吾展会期中の金曜と土曜に限り、本棚劇場見学ツアーを実施。)



この夏にプレオープンした「角川武蔵野ミュージアム」は、JR武蔵野線東所沢駅より歩いて10分強の「ところざわサクラタウン」のランドマーク的な施設です。



駅舎工事中の東所沢駅の改札を出て、駅前通りを北方向にしばらく歩いていると「ところざわサクラタウン」の案内看板が見えてきました。



あたりは東京郊外の住宅地といった様相を呈していて、ロードサイドにはドラッグストアやファミレスなどが立ち並んでいました。



その駅前通りとサクラタウンの間に広がるのが東所沢公園で、遊具広場や芝生広場の他に、チームラボの「どんぐりの森の呼応する生命」が展示された武蔵野樹林パークがありました。(どんぐりの森の体験は事前予約制。)



公園中央の園路をさらに進み、道路を挟んだ先にそびえ立つのが角川武蔵野ミュージアムで、1200トンもの花崗岩で覆われた外観は、まるで石の要塞や巨大な隕石を目にするかのようでした。



「ところざわサクラタウン」は、角川武蔵野ミュージアムの他に、ジャパンパビリオンやEJアニメホテル、それにオフィスや商業施設、さらには神社などで構成されたコンテンツモールで、KADOKAWAと所沢市が「COOL JAPAN FOREST構想」の元、日本最大のポップカルチャーの発信地として築かれました。



ただし新型コロナウイルス感染症対策に伴い、角川武蔵野ミュージアムと同様にプレオープンの段階のため、9月初めでも一部施設が開業しているに過ぎず、ショップとレストランはほぼクローズしていました。今後、EJアニメホテルは10月1日にオープンし、全館グランドオープンはミュージアムと同じく11月6日を予定しています。



角川武蔵野ミュージアムと並び、敷地内で異彩を放っていたのは、武蔵野坐令和神社(むさしのにます うるわしき やまとの みやしろ)でした。



隈研吾がデザインし、令和の考案者とされる国文学者の中西進氏が「武蔵野の神様をお招きして恵みの花を育てる」との願いで命名した神社で、赤い複数の鳥居と大きな屋根を広げた社殿が美しいコントラストを描いていました。



ミュージアムの建物の横に水盤があり、おそらくは地元の人々の子どもたちが楽しそうに水遊びをしている光景が印象に残りました。



まだ全面オープンを迎えていないため、大きな賑わいを創出しているとまでは言えないかもしれませんが、今後のグランドオープンを控えて、街全体を変えうるようなポテンシャルを秘めた施設ではないでしょうか。また改めて出向きたいと思いました。


入場には完全事前予約制が導入されました。ミュージアムの公式サイトより予め日時を指定し、チケットを購入しておく必要があります。



10月15日まで開催されています。

「角川武蔵野ミュージアム竣工記念展 隈研吾/大地とつながるアート空間の誕生 − 石と木の超建築」 角川武蔵野ミュージアム1Fグランドギャラリー(@Kadokawa_Museum
会期:2020年8月1日(土)~10月15日(木)
休館:火曜日。
時間:10:00~18:00
 *金・土は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1600円、中学・高校生1000円、小学生700円、未就学児無料。
 *完全事前予約制。
 *9月4日より本棚劇場見学ツアーのセット券(金土のみ)を販売。一般2000円。
場所:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3
交通:JR線東所沢駅から徒歩約10分。ところざわサクラタウン有料駐車場あり。
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