都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「あしたのひかり 日本の新進作家 vol. 17」 東京都写真美術館
東京都写真美術館
「あしたのひかり 日本の新進作家 vol. 17」
2020/7/28~9/22
東京都写真美術館で開催中の「あしたのひかり 日本の新進作家 vol. 17」を見てきました。
2002年より「将来性のある作家」(公式サイトより)の活動を紹介する「日本の新進作家」展も、今年度で17回目を迎えました。
今回のテーマは「象徴としての光」と「いまここを超えていく力」で、岩根愛、赤鹿麻耶、菱田雄介、原久路&林ナツミ、鈴木麻弓の5組6名の作品が展示されていました。
さてそれぞれの作家が写真や映像を用いて多様に表現していましたが、私が強く心に残ったのが岩根愛の「あたらしい川」と鈴木麻弓の「The Restoration Will」でした。
2018年度の第44回木村伊兵衛写真賞を受賞した岩根愛は、今年の春に一関や北上、遠野、それに八戸などの東北各地で撮影した桜の風景と、家族の記憶や過去の旅の場面などを写真に収めていて、過去と現在の折り重なる一つの物語を綴っているかのようでした。
また1930年代の回転式パノラマカメラを用いたという8メートルの大型のプリントや、3画面の映像プロジェクションも用いていて、体感的なインスタレーションを築き上げていました。
写真が宙に浮く空間を歩きつつ、主に夜に咲き誇る桜の花々を見ていると、華やかな花見というよりも刹那的と呼べるような感情が湧き上がってきて、不思議と物悲しく感じられました。
「My Cherry」と題した80点組のスライドフィルムにも目が止まりました。一切の解説こそないものの、おそらくは作家と近しい人物の日常が次々と写されていて、さながらロードムービーを見るかのようでした。しかしながら終盤における一枚の写真はショッキングで、何とも言い難い感情が込み上げるのを覚えました。そこには大切な人の一生が写されていたのかもしれません。
1977年に宮城県で生まれた鈴木麻弓は、「復元の意思」を意味する「The Restoration Will」を出展していました。
いずれもモノクロームやカラーなどによって家やポートレートなどが写されていましたが、めちゃくちゃに壊れた家屋や灰燼に化した街並みも捉えられていて、そもそも写真自体がダメージを受けて白く破損しているものもありました。
鈴木は2011年の東日本大震災の大津波によって、宮城県女川町で写真館を営んでいた父と母を亡くしたそうです。
そして破壊された写真館の跡地には、父の使っていたレンズや泥まみれのポートフォリオに家族写真などが残され、丁寧に拾い集めたとしています。
そのレンズで街の風景を撮った写真は暗くぼんやりとしていて、鈴木自身も「亡くなった人たちが見ている景色」(キャプションより)と語るように、あたかも彼岸をのぞき込んでいるかのような錯覚に囚われるかもしれません。
さらにダメージを受けた写真を復元する取り組みを行なっているそうです。あまりにも辛い両親との別れに身をつまされるとともに、家族の記憶を呼び戻しつつ、父と同じく写真に挑もうとする作家の強い意志に感じ入るものがありました。
ここ数年の「日本の新進作家展」はほぼ欠かさず見ているつもりですが、これほど深い印象を受ける作家と作品に出会ったのは久々だったかもしれません。
会場内の撮影も可能です。9月22日まで開催されています。*掲載写真は「あしたのひかり 日本の新進作家 vol. 17」会場風景
「あしたのひかり 日本の新進作家 vol. 17」 東京都写真美術館(@topmuseum)
会期:2020年7月28日(火)~9月22日(火・祝)
休館:月曜日。但し8月10日、9月21日は開館、8月11日は休館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700円、大学生560円、中学・高校生・65歳以上350円。
場所:目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
「あしたのひかり 日本の新進作家 vol. 17」
2020/7/28~9/22
東京都写真美術館で開催中の「あしたのひかり 日本の新進作家 vol. 17」を見てきました。
2002年より「将来性のある作家」(公式サイトより)の活動を紹介する「日本の新進作家」展も、今年度で17回目を迎えました。
今回のテーマは「象徴としての光」と「いまここを超えていく力」で、岩根愛、赤鹿麻耶、菱田雄介、原久路&林ナツミ、鈴木麻弓の5組6名の作品が展示されていました。
さてそれぞれの作家が写真や映像を用いて多様に表現していましたが、私が強く心に残ったのが岩根愛の「あたらしい川」と鈴木麻弓の「The Restoration Will」でした。
2018年度の第44回木村伊兵衛写真賞を受賞した岩根愛は、今年の春に一関や北上、遠野、それに八戸などの東北各地で撮影した桜の風景と、家族の記憶や過去の旅の場面などを写真に収めていて、過去と現在の折り重なる一つの物語を綴っているかのようでした。
また1930年代の回転式パノラマカメラを用いたという8メートルの大型のプリントや、3画面の映像プロジェクションも用いていて、体感的なインスタレーションを築き上げていました。
写真が宙に浮く空間を歩きつつ、主に夜に咲き誇る桜の花々を見ていると、華やかな花見というよりも刹那的と呼べるような感情が湧き上がってきて、不思議と物悲しく感じられました。
「My Cherry」と題した80点組のスライドフィルムにも目が止まりました。一切の解説こそないものの、おそらくは作家と近しい人物の日常が次々と写されていて、さながらロードムービーを見るかのようでした。しかしながら終盤における一枚の写真はショッキングで、何とも言い難い感情が込み上げるのを覚えました。そこには大切な人の一生が写されていたのかもしれません。
1977年に宮城県で生まれた鈴木麻弓は、「復元の意思」を意味する「The Restoration Will」を出展していました。
いずれもモノクロームやカラーなどによって家やポートレートなどが写されていましたが、めちゃくちゃに壊れた家屋や灰燼に化した街並みも捉えられていて、そもそも写真自体がダメージを受けて白く破損しているものもありました。
鈴木は2011年の東日本大震災の大津波によって、宮城県女川町で写真館を営んでいた父と母を亡くしたそうです。
そして破壊された写真館の跡地には、父の使っていたレンズや泥まみれのポートフォリオに家族写真などが残され、丁寧に拾い集めたとしています。
そのレンズで街の風景を撮った写真は暗くぼんやりとしていて、鈴木自身も「亡くなった人たちが見ている景色」(キャプションより)と語るように、あたかも彼岸をのぞき込んでいるかのような錯覚に囚われるかもしれません。
さらにダメージを受けた写真を復元する取り組みを行なっているそうです。あまりにも辛い両親との別れに身をつまされるとともに、家族の記憶を呼び戻しつつ、父と同じく写真に挑もうとする作家の強い意志に感じ入るものがありました。
ここ数年の「日本の新進作家展」はほぼ欠かさず見ているつもりですが、これほど深い印象を受ける作家と作品に出会ったのは久々だったかもしれません。
【あしたのひかり】9/22(火祝)まで将来性のある作家を発掘、紹介する新進作家展今年のテーマは光です。5組の作家たちが自身を取り巻く世界と向き合い、見出した光をぜひご覧ください▽岩根愛、赤鹿麻耶、菱田雄介、原久路&林ナツミ、鈴木麻弓https://t.co/kNm5winblz
— 東京都写真美術館 (@topmuseum) September 5, 2020
会場内の撮影も可能です。9月22日まで開催されています。*掲載写真は「あしたのひかり 日本の新進作家 vol. 17」会場風景
「あしたのひかり 日本の新進作家 vol. 17」 東京都写真美術館(@topmuseum)
会期:2020年7月28日(火)~9月22日(火・祝)
休館:月曜日。但し8月10日、9月21日は開館、8月11日は休館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700円、大学生560円、中学・高校生・65歳以上350円。
場所:目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
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