「美の競演-静嘉堂の名宝-」 静嘉堂文庫美術館

静嘉堂文庫美術館
「美の競演-静嘉堂の名宝-」
2020/6/27~9/22



三菱創業150周年を期し、岩崎家の蒐集してきた東洋の古美術品を有する静嘉堂文庫美術館が、絵画、茶道具、陶磁器、漆器、刀剣などの名品を公開する「美の競演-静嘉堂の名宝-」を開催しています。

まず目を引いたのが南北朝時代の「春日宮曼荼羅」で、春日社の祭神や本地仏の元、花咲く桜に覆われた春日大社や御蓋山を鮮やかな色遣いにて描いていました。ともかく仏の金彩や野山の群青が際立っていて、色彩そのものの迫力にのまれるかのようでした。

中国・元時代の「文殊・普賢菩薩像」は東福寺に伝来したと言われていて、ともに真正面から両菩薩像を極めて精緻に表していました。ほぼ左右対象の姿をしていて、かつて伊藤若冲が「動植綵絵」とともに相国寺に寄進した「釈迦三尊像」の原画としても知られています。修復後、初公開とのことで、心なしかより着衣の紋様なども際立っているように思えました。


江戸絵画で目立っていたのは、六曲一双の大画面に波が広がる酒井抱一の「波図屏風」でした。得意の銀を背景に墨一色にて波を描いていて、まるで人の手や触手を思わせるような波頭がうねるようになびいていました。その姿は天をかける龍を思わせるかもしれません。

「波図屏風」は、抱一自身も「自慢心」と呼んだ会心作ではありますが、絵師とは異色と言えるほどに荒々しく激しい作品ではないでしょうか。しばし屏風の前に立ちながら、波頭が砕け散り、ごうごうと海の飛沫が散る様子を想像しては見入りました。

抱一では「絵手鑑」も見逃せない作品かもしれません。全72図のうちの16面が開いていて、円山四条派や土佐派、南画などに倣いつつ、精緻に描かれた山水や花鳥などを愛でることができました。

この他、深海に生きる魚の姿を淡い色彩で表した渡辺華山の「遊魚図」をはじめ、羽を振り上げた孔雀が艶やかな岡本秋暉の「牡丹孔雀図」、はたまた重厚感のある佇まいに迫力を覚える長曽祢虎徹の刀など、心に引かれた作品をあげればきりがありません。


「藍釉粉彩桃樹文瓶」 清時代(18世紀) *展示室外の作品は撮影可

タイトルに「名宝」とありましたが、何ら誇張のない、まさしくお宝揃いの展覧会でもありました。

6月24日よりスタートした展示は、8月4日より後期に入りました。今後、作品の入れ替えはありません。

新型コロナウイルス感染症に関する情報です。入館時はマスクの着用、手指の消毒の他、検温が実施されています。原則、37.5度以上ある場合は入館できません。



さて静嘉堂文庫美術館は2022年、丸の内の明治生命館1階にギャラリーが移転します。



移転対象施設はギャラリーのみのため、美術品の保管管理や研究業務、また敷地の管理などは継続して行われますが、世田谷での展示活動は残すところ1年強となりました。



岡本の高台から見晴らしの良い眺めを楽しめるのも、もうしばらくすると見納めとなりそうです。



9月22日まで開催されています。

「美の競演-静嘉堂の名宝-」 静嘉堂文庫美術館@seikadomuseum
会期:2020年6月27日(土)~ 9月22日(火・祝)
休館:火曜日。但し8月10日、9月21日は開館。8月11日(火)は休館。
時間:10:00~16:30
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000円、大学・高校生700円、中学生以下無料。
場所:世田谷区岡本2-23-1
交通:東急線二子玉川駅バスターミナル4番のりばから東急コーチバス「玉30・31・32系統」に乗り「静嘉堂文庫」下車、徒歩5分。二子玉川駅よりタクシー代200円キャッシュバックサービスあり。
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