「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」 東京都写真美術館

東京都写真美術館
「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク インターネットアートへの再接続」 
2020/8/18~10/11



東京都写真美術館で開催中の「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク インターネットアートへの再接続」を見てきました。

ニューヨークを拠点に活動するアート・ユニット、エキソニモは、1990年代からインターネットそのものを素材に、メディアアートの分野などで活動してきました。

そのエキソニモの初めての大規模な回顧展が「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク」で、最初期より初公開の新作「UN-DEAD-LINK 2020」など約20点の作品が展示されていました。



まず会場で目を引くのが、水色、黄色、緑、青、赤の5色のケーブルが、さながら路面電車の線路のように床に張り巡らされていることでした。



これらはいずれも展示の5つのキーワードである#Internet(インターネット)、#Platform(プラットフォーム)、#Interface(インターフェース)、#Random(ランダム)、#Boundary(境界)に対応していて、各作品との関係を頭に入れながら鑑賞していく仕掛けとなっていました。電子部品の基盤の上を歩いているような気持ちにさせられるかもしれません。

端的にインターネットとはいえども、いわゆるネットアートの黎明期から制作しているゆえか、今となっては懐かしさを覚える作品が少なくないのも特徴と言えるかもしれません。


「KAO」 1996年

ブラウン管のモニターを用いた「KAO」は、エキソニモが初めてネットを用いて制作したインタラクティブな作品で、ウェブ上へ顔のパーツを送信すると、既に作られた顔と混じりつつ、次々と作成するようにできていました。ウェブの福笑いと呼んで良いのではないでしょうか。


「DISCODER」 1999年

たくさんのマウスがキーボードから垂れているのが「DISCODER」で、キーボードを操作することで、WEB状のプログラムにバグが発生し、ページそのものが変化して崩れるように作られていました。いずれのマウスも有線で変色していて、長い年月の経過を思わせるものがありました。(展示は記録映像)


「断末魔ウス」 2007年 東京都写真美術館

同じくマウスを素材にしたのが「断末魔ウス」で、マウスを破壊する映像とともに、その際にデスクトップ上で動いたマウスカーソルが記録されていました。いわばマウスのデジタルと物理の両面での死を扱った作品でしたが、駄洒落風のタイトルなど、ユーモアや遊び心も感じられました。


「Antibot T-shirts」 2010年

「Antibot T-shirts」は、ネット上の認証用に開発された「CAPTCHA(キャプチャ)」をグラフィックに見立て、Tシャツに仕上げた作品で、カラフルなシャツが宙につられていました。キャプチャと気がつかなければ、何らかの新しいロゴタイプが生み出されているかのようでした。


「HEAVY BODY PAINT」 2016年 東京都写真美術館

一見するところ絵具のボトルの絵画のように見えるのが「HEAVY BODY PAINT」で、青、黄色、それに肌色に近い色の3種のボトルが描かれていました。


「HEAVY BODY PAINT」(部分) 2016年 東京都写真美術館

しばらく眺めていると絵具のボトルにブレが生じて、液晶モニター上の映像であることが分かりました。つまりボトルを映したモニターの一部を絵具で直に塗り潰していて、まるで実物が目の前にあるような錯覚に囚われました。

今回の展覧会の最大の特徴は、写真美術館の実会場の他に、リアルな作品とも連動したインターネット会場(https://un-dead-link.topmuseum.jp)があることでした。そしてオンライン展示と連動したのが、ともに今年に制作された「UN-DEAD-LINK 202」と「Realm」の2つのインスタレーションでした。


「UN-DEAD-LINK 2020」 2020年

一台のグランドピアノとスマートフォンからなるのが「UN-DEAD-LINK 2020」で、時折、スマートフォンが反応したかと思うと、ピアノが自動で力強く鍵盤を打ち鳴らしていました。これはオンラインのシューティングゲームの空間と連動していて、ゲーム上でキャラクターが死ぬとピアノが鳴るようにプログラムされていました。


「Realm」 2020年

もう一方の「Realm」は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ニューヨークでロックダウンを経験したエキソニモが、自身の近隣の墓地を訪ねる経験から生まれた作品で、一面のスクリーンには美しい墓地ともに中央の白に覆われた風景が映されていました。


スマートフォンでインターネット会場にアクセスし、画面をタップすると、スクリーンの白い部分に指紋のイメージが広がって風景が隠されていきました。「Realm」とは「領域」を意味しますが、2つの異なった環境の接続を表現しているのかもしれません。


「Spiritual Computing Series - 祈」 2009年 東京都写真美術館

この他、2つに合わせたマウスに「祈り」を見出した「Spiritual Computing Series - 祈」も興味深く感じられました。ネットを通して生まれるエキソニモのアイデア自体が面白く、リアルと両面にて楽しめる展示と言えそうです。



10月11日まで開催されています。

「エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク インターネットアートへの再接続」 東京都写真美術館@topmuseum
会期:2020年8月18日(火)~10月11日(日)
休館:月曜日。但し月曜日が祝日・振替休日の場合は開館し、翌平日休館。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
 *10月1日の都民の日は無料。
料金:一般700円、大学生560円、中学・高校生・65歳以上350円。
場所:目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
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