都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」 東京オペラシティアートギャラリー
東京オペラシティアートギャラリー
「ストーリーはいつも不完全……色を想像する ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」
2021/4/17~6/24
イギリスの現代アーティスト、ライアン・ガンダーが、東京オペラシティアートギャラリーの寺田コレクションをキュレーションする展覧会が、同館にて開かれています。
それが「ストーリーはいつも不完全……色を想像する ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」で、3階と4階の2つのフロアの展示室にはガンダーのセレクトした約190点の作品が展示されていました。
さていわゆるコレクション展ながらも、過去に同館で今回ほどユニークな展示手法がとられていたことはなかったかもしれません。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」4階展示室風景
まず最初の「色を想像する」と題した4階の展示室では、故寺田氏が収集のテーマとしていた「ブラック&ホワイト」に因み、モノクロームの作品のみが展示されていて、一部の立体を除き、版画や絵画といった平面の作品にて統一されていました。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」4階展示室風景
さらに独特なのは全ての作品が壁の一方のみに並べられていることで、反対側の壁には対応する作品の大きさを示すフレームとキャプションのみが置かれていました。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」4階展示室風景
これらは欧米の美術館で伝統的な展示方法である「サロン・スタイル」に倣っていて、一見、モノクローム以外に共通項は見れないものの、配置に対称性があるなど工夫が凝らされていました。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」4階展示室風景
寺田氏が「ブラック&ホワイト」をテーマとしたのは、自身の幼少期に映画がモノクロからカラーに変わった際、がっかりしたという経験に基づいているそうです。シンプルなモノクロームの世界ながらも、作品同士の関係など多様に想像を膨らませる展示と言えるかもしれません。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」3階展示室風景
*スマートフォンカメラの補正が入っているため明るく見えますが、実際はもっと暗く感じられました。
一方で続く3階の「ストーリーはいつも不完全」も極めて大胆な展示が行われていました。入口から足を進めると薄暗がりの展示室が広がっていて、遠目ではどのような作品が展示されているか分からないほどでした。また展示室は「探索」、「注視」、「視点」、「パノラマ」、「ヴィジョン」の5つのテーマに分けられていました。
難波田龍起「アブストラクトA」 1954年
いずれも入口で手にするペンライトの光を頼りに作品を鑑賞する趣向がとられていて、明かりを当てることで初めて作品が認識できるようになっていました。
菊畑茂久馬「作品1」 1995年
実のところ初めは戸惑いを覚えましたが、しばらくペンライトをかざしながら見ていくと、明かりの向きや当て方などによって作品の表情が大きく変化することに気づきました。それにペンライトの照度や光の範囲の関係もあるのか、全体よりも細部が際立って見えました。
相笠昌義「みる人」 1972年
ペンライトによって自分の見ている視点なりが視覚化されるのも面白いかもしれません。これまでにはない鑑賞体験を得ることができました。
山本麻友香「three eyes」 2006年
なお本展は当初、ガンダーの個展として企画していたものの、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴って延期されたため、4階のみで予定されていた「ガンダーが選ぶ収蔵品展」を全館規模に拡大して開催されました。ガンダー自身も来日が叶わないために、作品のリストや画像、さらに会場の図面をオンラインでやり取りしながら準備が行われたそうです。
李禹煥「線より」 1976年
ガンダーの個展が延期されてしまったのは残念ですが、現代アーティストとコレクションの協働という新たな視点を盛り込んだ展覧会ではなかったでしょうか。
予約は不要です。但し混雑時は入場規制を行う場合があります。
6月中は通常休館日の月曜日も開館します。6月24日まで開催されています。
「ストーリーはいつも不完全……色を想像する ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」 東京オペラシティアートギャラリー(@TOC_ArtGallery)
会期:2021年4月17日(土)~6月24日(木)
休館:月曜日。但し5/3、6/7、6/14、6/21は開館。
時間:11:00~19:00
*入場は閉館30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大・高生600(400)円、中学生以下無料。
*同時開催中の「project N 82 松田麗香」の入場料を含む。
*( )内は各種割引料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
「ストーリーはいつも不完全……色を想像する ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」
2021/4/17~6/24
イギリスの現代アーティスト、ライアン・ガンダーが、東京オペラシティアートギャラリーの寺田コレクションをキュレーションする展覧会が、同館にて開かれています。
それが「ストーリーはいつも不完全……色を想像する ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」で、3階と4階の2つのフロアの展示室にはガンダーのセレクトした約190点の作品が展示されていました。
さていわゆるコレクション展ながらも、過去に同館で今回ほどユニークな展示手法がとられていたことはなかったかもしれません。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」4階展示室風景
まず最初の「色を想像する」と題した4階の展示室では、故寺田氏が収集のテーマとしていた「ブラック&ホワイト」に因み、モノクロームの作品のみが展示されていて、一部の立体を除き、版画や絵画といった平面の作品にて統一されていました。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」4階展示室風景
さらに独特なのは全ての作品が壁の一方のみに並べられていることで、反対側の壁には対応する作品の大きさを示すフレームとキャプションのみが置かれていました。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」4階展示室風景
これらは欧米の美術館で伝統的な展示方法である「サロン・スタイル」に倣っていて、一見、モノクローム以外に共通項は見れないものの、配置に対称性があるなど工夫が凝らされていました。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」4階展示室風景
寺田氏が「ブラック&ホワイト」をテーマとしたのは、自身の幼少期に映画がモノクロからカラーに変わった際、がっかりしたという経験に基づいているそうです。シンプルなモノクロームの世界ながらも、作品同士の関係など多様に想像を膨らませる展示と言えるかもしれません。
「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」3階展示室風景
*スマートフォンカメラの補正が入っているため明るく見えますが、実際はもっと暗く感じられました。
一方で続く3階の「ストーリーはいつも不完全」も極めて大胆な展示が行われていました。入口から足を進めると薄暗がりの展示室が広がっていて、遠目ではどのような作品が展示されているか分からないほどでした。また展示室は「探索」、「注視」、「視点」、「パノラマ」、「ヴィジョン」の5つのテーマに分けられていました。
難波田龍起「アブストラクトA」 1954年
いずれも入口で手にするペンライトの光を頼りに作品を鑑賞する趣向がとられていて、明かりを当てることで初めて作品が認識できるようになっていました。
菊畑茂久馬「作品1」 1995年
実のところ初めは戸惑いを覚えましたが、しばらくペンライトをかざしながら見ていくと、明かりの向きや当て方などによって作品の表情が大きく変化することに気づきました。それにペンライトの照度や光の範囲の関係もあるのか、全体よりも細部が際立って見えました。
相笠昌義「みる人」 1972年
ペンライトによって自分の見ている視点なりが視覚化されるのも面白いかもしれません。これまでにはない鑑賞体験を得ることができました。
山本麻友香「three eyes」 2006年
なお本展は当初、ガンダーの個展として企画していたものの、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴って延期されたため、4階のみで予定されていた「ガンダーが選ぶ収蔵品展」を全館規模に拡大して開催されました。ガンダー自身も来日が叶わないために、作品のリストや画像、さらに会場の図面をオンラインでやり取りしながら準備が行われたそうです。
李禹煥「線より」 1976年
ガンダーの個展が延期されてしまったのは残念ですが、現代アーティストとコレクションの協働という新たな視点を盛り込んだ展覧会ではなかったでしょうか。
予約は不要です。但し混雑時は入場規制を行う場合があります。
ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展、最終日まであと2週間となりました。休館日無しで会期延長しています。週末は混雑が予想されますので平日のご来館がおすすめです👀https://t.co/95K3eSjnDn pic.twitter.com/p7ExuFUd9Q
— 東京オペラシティアートギャラリー (@TOC_ArtGallery) June 9, 2021
6月中は通常休館日の月曜日も開館します。6月24日まで開催されています。
「ストーリーはいつも不完全……色を想像する ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」 東京オペラシティアートギャラリー(@TOC_ArtGallery)
会期:2021年4月17日(土)~6月24日(木)
休館:月曜日。但し5/3、6/7、6/14、6/21は開館。
時間:11:00~19:00
*入場は閉館30分前まで。
料金:一般1000(800)円、大・高生600(400)円、中学生以下無料。
*同時開催中の「project N 82 松田麗香」の入場料を含む。
*( )内は各種割引料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )