都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」 武蔵野美術大学美術館
武蔵野美術大学美術館
「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」
2021/4/5〜6/20

武蔵野美術大学美術館で開催中の「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」を見てきました。
これは戸谷成雄、舟越桂、伊藤誠、青木野枝、三沢厚彦、西尾康之、棚田康司、須田悦弘、小谷元彦、金氏徹平、長谷川さちといった11名の現代彫刻家の作品を公開する展示で、同大教授で彫刻家の三沢厚彦が監修を担当しました。

「オムニスカルプチャー」とは、彫刻の全方位性(=omni)を示す三沢による造語で、各アーティストの作品がアトリウムから展示室へと自在に行き交うように置かれていました。

手前:西尾康之「磔刑」 2021年
いずれの作品も新作を中心としているのが特徴で、大きさも素材もまちまちでありながら、時にあたかも互いの存在を確認するかのように響き合っていました。

戸谷成雄「横たわる男」 1971年
一部には戸谷成雄の「横たわる男」など旧作も展示されていて、新旧の作品を比べては作風の変遷を見ることができました。木材をチェーンソーで刻んだ作品で知られる戸谷の現在の制作からすれば、ともすると同じ彫刻家の作品とは気がつかないかもしれません。

西尾康之や小谷元彦らの大型の作品も目立っていて、天井高のあるアトリウムの空間を効果的に用いたことにも魅力を感じました。なお会場の構成は画家の杉戸洋が担いました。

青木野枝「Mesocyclone I」 2021年
鉄を素材にした彫刻を手がける青木野枝は2点の作品を出品していて、ちょうど天井付近のスロープ上にてまるで自生する生き物のように円を描いていました。

須田悦弘「クレマチス」 2021年
草花などを象った木彫で人気の須田悦弘は、キキョウやクレマチスなどの作品を会場に潜ませるように展示していて、雑草に至っては思わず通り過ぎてしまうほどにひっそりと佇んでいました。

棚田康司「2020年全裸の真理」 2021年
さらに舟越桂や棚田康司の樟を用いた彫像も見応えがあったのではないでしょうか。そもそもこれほど実力のある彫刻作家が一堂に会することからして、大変な貴重な展示と言えるかもしれません。

なお現在、同館では「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」と合わせて、「片山利弘——領域を越える造形の世界」、「膠を旅する——表現をつなぐ文化の源流」の3つの展示が同時に行われています。

いずれも充実していましたが、特に日本画の伝統的画材の膠に着目し、膠の歴史や社会的背景に踏み込んで資料を展示した「膠を旅する——表現をつなぐ文化の源流」が大変に見応えがありました。

特に魚膠を生活にとりこむアイヌなどの北方民族の文化を紹介した展示が興味深かったのではないでしょうか。

丸木位里・丸木俊「原爆の図 高張提灯」 1986年
この他では昨年に同館に収蔵され、修復後に初めて公開された丸木位里・丸木俊の「原爆の図 高張提灯」も大変な迫力がありました。

1つの画材を通して、多面的な文化の諸相を浮き彫りにした好企画と言えるかもしれません。彫刻展に加えてお見逃しなきようにお勧めします。

最後に入場に際しての情報です。同美術館では緊急事態宣言を受けて展示を学内(学生・教職員)へ限定的に開放してきましたが、6月5日より開館日時を変更して、一般(学外)にも再開されました。

但し一般の開館は土日のみに限定され、来館前日までに入館予約フォームにて予め来館日時を指定しておく必要があります。なお1回の予約で開催中の3つの展示を全て観覧できます。
よって一般向けの会期の残りは6月19日と20日の土日の2日間です。完全予約制で当日の受付はありません。最新の予約状況などは同館のWEBサイトをご覧ください。

小谷元彦「Torch of Desire - 52nd Star」 2020年
6月20日まで開催されています。
「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」 武蔵野美術大学美術館(@mau_m_l)
会期:2021年4月5日(月)〜6月20日(日)
休館:火曜日。
時間:月・水・木・金曜(学内限定)12:00〜18:00、土・日曜(一般(学外)限定)①10:00〜12:00、②12:30〜14:30、③15:00〜17:00
料金:無料。
場所:東京都小平市小川町1-736
交通:西武国分寺線鷹の台駅下車徒歩約20分。JR線国分寺駅(バス停:国分寺駅北入口)より西武バスにて「武蔵野美術大学」下車。(所要約25分)
「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」
2021/4/5〜6/20

武蔵野美術大学美術館で開催中の「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」を見てきました。
これは戸谷成雄、舟越桂、伊藤誠、青木野枝、三沢厚彦、西尾康之、棚田康司、須田悦弘、小谷元彦、金氏徹平、長谷川さちといった11名の現代彫刻家の作品を公開する展示で、同大教授で彫刻家の三沢厚彦が監修を担当しました。

「オムニスカルプチャー」とは、彫刻の全方位性(=omni)を示す三沢による造語で、各アーティストの作品がアトリウムから展示室へと自在に行き交うように置かれていました。

手前:西尾康之「磔刑」 2021年
いずれの作品も新作を中心としているのが特徴で、大きさも素材もまちまちでありながら、時にあたかも互いの存在を確認するかのように響き合っていました。

戸谷成雄「横たわる男」 1971年
一部には戸谷成雄の「横たわる男」など旧作も展示されていて、新旧の作品を比べては作風の変遷を見ることができました。木材をチェーンソーで刻んだ作品で知られる戸谷の現在の制作からすれば、ともすると同じ彫刻家の作品とは気がつかないかもしれません。

西尾康之や小谷元彦らの大型の作品も目立っていて、天井高のあるアトリウムの空間を効果的に用いたことにも魅力を感じました。なお会場の構成は画家の杉戸洋が担いました。

青木野枝「Mesocyclone I」 2021年
鉄を素材にした彫刻を手がける青木野枝は2点の作品を出品していて、ちょうど天井付近のスロープ上にてまるで自生する生き物のように円を描いていました。

須田悦弘「クレマチス」 2021年
草花などを象った木彫で人気の須田悦弘は、キキョウやクレマチスなどの作品を会場に潜ませるように展示していて、雑草に至っては思わず通り過ぎてしまうほどにひっそりと佇んでいました。

棚田康司「2020年全裸の真理」 2021年
さらに舟越桂や棚田康司の樟を用いた彫像も見応えがあったのではないでしょうか。そもそもこれほど実力のある彫刻作家が一堂に会することからして、大変な貴重な展示と言えるかもしれません。

なお現在、同館では「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」と合わせて、「片山利弘——領域を越える造形の世界」、「膠を旅する——表現をつなぐ文化の源流」の3つの展示が同時に行われています。

いずれも充実していましたが、特に日本画の伝統的画材の膠に着目し、膠の歴史や社会的背景に踏み込んで資料を展示した「膠を旅する——表現をつなぐ文化の源流」が大変に見応えがありました。

特に魚膠を生活にとりこむアイヌなどの北方民族の文化を紹介した展示が興味深かったのではないでしょうか。

丸木位里・丸木俊「原爆の図 高張提灯」 1986年
この他では昨年に同館に収蔵され、修復後に初めて公開された丸木位里・丸木俊の「原爆の図 高張提灯」も大変な迫力がありました。

1つの画材を通して、多面的な文化の諸相を浮き彫りにした好企画と言えるかもしれません。彫刻展に加えてお見逃しなきようにお勧めします。

最後に入場に際しての情報です。同美術館では緊急事態宣言を受けて展示を学内(学生・教職員)へ限定的に開放してきましたが、6月5日より開館日時を変更して、一般(学外)にも再開されました。

但し一般の開館は土日のみに限定され、来館前日までに入館予約フォームにて予め来館日時を指定しておく必要があります。なお1回の予約で開催中の3つの展示を全て観覧できます。
【美術館】【重要】当館では、展覧会の開催を学内に限定しておりましたが、6/5(土)〜6/20(日)までの間、一般(学外)の方への開館を【土・日曜のみ、完全予約制】にて再開いたします。ご予約申込方法等、詳細はこちらでご確認ください↓https://t.co/56FF3IzQKf
— 武蔵野美術大学 美術館・図書館 (@mau_m_l) June 2, 2021
よって一般向けの会期の残りは6月19日と20日の土日の2日間です。完全予約制で当日の受付はありません。最新の予約状況などは同館のWEBサイトをご覧ください。

小谷元彦「Torch of Desire - 52nd Star」 2020年
6月20日まで開催されています。
「オムニスカルプチャーズ——彫刻となる場所」 武蔵野美術大学美術館(@mau_m_l)
会期:2021年4月5日(月)〜6月20日(日)
休館:火曜日。
時間:月・水・木・金曜(学内限定)12:00〜18:00、土・日曜(一般(学外)限定)①10:00〜12:00、②12:30〜14:30、③15:00〜17:00
料金:無料。
場所:東京都小平市小川町1-736
交通:西武国分寺線鷹の台駅下車徒歩約20分。JR線国分寺駅(バス停:国分寺駅北入口)より西武バスにて「武蔵野美術大学」下車。(所要約25分)
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