「エキシビジョン・カッティングス マチュウ・コプランによる展覧会」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「エキシビジョン・カッティングス マチュウ・コプランによる展覧会」 
2021/4/23~7/18



メゾンエルメスで開催中の「エキシビジョン・カッティングス マチュウ・コプランによる展覧会」を見てきました。

ロンドンを拠点に活動するキュレーターのマチュウ・コプランは、展覧会の伝統的な役割や枠組みを揺るがすべく、新たな体験や知覚を提案するような試みを続けてきました。

そのコプランが日本で初めてキュレーションを手掛けたのが「エキシビジョン・カッティングス」で、挿し木や接ぎ木を用いたインスタレーションと映像ドキュメンタリーを展示していました。



まずspaceAの「育まれる展覧会(環境)」と題した展示室では、木の台座やベンチなどが置かれていて、中央の土が入れられたプランターには甘夏の苗が植えられていました。



これらはタイトルの「カッティング」から植物の挿し木や接ぎ木を参照しつつ、他の場所に移植された生命が人工的に育むことを意図したもので、いわば生態ないし環境そのものが築かれていました。



一連の木の什器は音を主軸に美術制作やパフォーマンスを手がける西原尚らが手掛けていて、無肥料や無除草といった自然農法で知られる福岡正信自然農園から土が届けられました。

こうした木と自然を取り巻く環境と同じく重要なのが、木の台座の上など数台のスピーカーから響く音楽でした。



作曲したのはアメリカのミニマル・ミュージックの巨匠の一人として知られるフィル・ニブロックで、全6曲の音楽を展覧会のために書き下ろしました。いずれもチェロやギター、ヴィオラの他、声楽アンサンブルなどによる音楽で、持続音を多用するドローン・ミュージックと呼ばれるものでした。

多くはパリなどで活動するアーティストによって演奏されましたが、1曲は日本のヴォーカル・グループのVox humana(ヴォクスマーナ)が、東京で演奏と録音を行いました。

ともかく音楽はひっきりなしに鳴っていて、音も大きく、音圧にてスペースを満たしていくかのようでした。もはや主役は音楽にあるといえるかもしれません。



一方のspaceBでは、コプランが過去にキュレーションした「閉鎖された展覧会の回顧展」を振り返る映像、「アンチ・ミュージアム:アンチ・ドキュメンタリー」が上映されていました。ここでは過去に様々なアーティストが自らの決断や芸術行為によって閉鎖した展示を取り上げていて、中には日本のハイレッド・センターが画廊を展示初日に閉じて議論を呼んだ「大パノラマ展」などもありました。



自らの展覧会のアーカイブを編集、つまりカッティングしつつ、アートと展示空間のあり方などを問い直す興味深い内容だったのではないでしょうか。コロナ禍において閉鎖を余儀なくされた美術館についても言及していて、リアルタイムな問題として考えさせられるものが少なくありませんでした。



緊急事態宣言を受け、4月25日より5月15日、また5月23日より6月1日まで臨時休館していましたが、6月2日に再開されました。

なおエルメス銀座店の混雑緩和のため、ソニー通り沿いのエレベーターより入館する必要があります。店内用エレベーターでは入館できません。



ガラス越しの光や音楽を浴びる甘夏の苗はどこまで生育を続けるのでしょうか。会期末に改めて見てこようと思いました。



予約は不要です。7月18日まで開催されています。

「エキシビジョン・カッティングス マチュウ・コプランによる展覧会」 メゾンエルメス
会期:2021年4月23日(金)~7月18日(日)
休廊:会期中無休。
時間:11:00~19:00 
 *当面の間、開館時間を短縮。
料金:無料。
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
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