「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」 東京都現代美術館

東京都現代美術館
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」
2021/3/20~6/22



東京都現代美術館で開催中の「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」を見てきました。

1968年にオランダに生まれ、現在はベルギーにスタジオを構えるアーティスト、マーク・マンダースは、美術館といった建物に彫刻などを配し、全体として人の像を構築するという「建物としての自画像」をテーマに作品を制作してきました。

そのマーク・マンダースの国内の美術館としては初めての個展が「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」で、会場内には主にブロンズによる人物や動物、ないし建物などを断片的に象った作品が展示されていました。


「マインド・スタディ」2010〜2011年

それにしてもこれほど特異でミステリアスでかつ、かつて見たことのないような風景を立ち上がらせるアーティストもほかになかなか存在しないかもしれません。


「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」会場風景

まず会場では展示室を区切らず、大小33点のオブジェが配置されていて、全体として1つのインスタレーションが展開されていました。


「4つの黄色い縦のコンポジション」2017〜2019年

そして足を進めると、薄い半透明のビニールで囲まれた通路とも部屋とも呼べるようなスペースが現れて、その中に巨大な彫刻である「4つの黄色い縦のコンポジション」や「乾いた土の頭部」などが展示されていました。


「椅子の上の乾いた像」2011〜2015年 東京都現代美術館

これらはマーク・サンダースのいわゆるスタジオとして考案されたフロアで、中央の通路上のスペースだけでなく、裏側からもビニール越しに滲み現れる作品を見ることができました。


「乾いた土の頭部」2015〜2016

ともかく一連の彫刻を目にして感じるのは、痛みや苦しみを抱えながらも、瞑想するようかのように内省的な人物の存在でした。またポロポロと朽ち果てていくような彫刻は古代の遺物のようで、しばらく通路を歩いていると、さも遺跡の中を彷徨っているような錯覚に囚われました。


「黄色い縦のコンポジション」2019〜2020年

さらに作家が立ち去った「不在」の痕跡のみが残されていて、時間も限りなく静止しているように感じられました。また一部が欠落した作品など、完成と未完成との関係も曖昧で、そこに見る側としての想像力が入り込む余地が残されているように思えました。


「舞台のアンドロイド(88%に縮小)」2002〜2014年

マーク・マンダースは「建物としての自画像」の構想に際し、自身と同じ名前の架空の芸術家を設定し、その自画像を建物の枠組みの中に築くとしています。


「リビングルームの光景」2008〜2016年

そこにはアーティスト個人の自意識が反映されているとともに、来場者を迎え入れて対話することで、新たな世界が生み出されていくのかもしれません。マーク・マンダースが頭の中にて精緻に組み上げた思考のパズルの欠片が、展示室内に作品として体現しているようにも見えました。


「記録された課題」1992〜1993年

「建物としての自画像は時間がすべて凍結しています。私の作品、私にとってすべての作品は同じ瞬間に存在します。」 マーク・マンダース(展覧会ハンドアウトより)



東京都現代美術館は緊急事態宣言を受け臨時休館していましたが、6月1日より完全予約制のうえ展示が再開されました。チケットはオンラインにて事前に来館する日付を指定する必要があります。


間も無く会期末です。6月は最終日まで休館日がありません。


「4つの黄色い縦のコンポジション」2017〜2019年 (拡大)

彫刻としての圧倒的量感も大きな魅力といえるかもしれません。ひび割れた粘土のようなブロンズの迫力は並大抵ではありませんでした。


「狐/鼠/ベルト」1992〜1993年

一部の撮影が可能でした。6月22日まで開催されています。

「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2021年3月20日(土・祝)~6月22日(火)*会期延長
休館:月曜日。但し6月は最終日まで休館日なし。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500円、大学・専門学校生・65歳以上1000円、中高生500円、小学生以下無料。
 *6月は完全予約制(日にち指定)
 *MOTコレクションも観覧可。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分。都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
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