都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「新・晴れた日 篠山紀信」 東京都写真美術館
東京都写真美術館
「新・晴れた日 篠山紀信」
2020/5/18~8/15
東京都写真美術館で開催中の「新・晴れた日 篠山紀信」を見てきました。
1940年に東京に生まれた写真家の篠山紀信は、多くの雑誌の表紙やグラビアを手掛けただけでなく、建物や都市などを撮影しては旺盛に活動してきました。
その篠山の意外にも初めての大規模な回顧展が「新・晴れた日」で、1960年代の初期の「天井桟敷一座」などから2011年の「ATOKATA」、それに近作の「快楽の館」まで全116点の写真が展示されていました。
まず3階の第1部では1960年代の「日米安保条約反対デモ」や「誕生」、そして1975年の「家」などが並んでいて、篠山がキャリアを築き、時代を切り取るべく写真を撮り続けていたことを目の当たりにできました。
そのうちの「誕生」は、篠山が銀座のニコンサロンで初個展を開いた際に展示された写真で、いずれも鹿児島の徳之島を舞台とした自然と女性のヌードを写していました。燦々と降り注ぐ太陽の光の元、自然と人間の造形美が表現されていて、プリミティブな魅力をたたえていました。
第1部で最も多くの作品を占めていたのが、1974年5月から半年間連載された写真を元にした「晴れた日」のシリーズでした。これは「アサヒグラフ」誌において世の中で話題となった出来事を写した作品で、ジャンルも美術、スポーツ、政治、人々の生活から気象などと多岐にわたっていました。
そしてこの「晴れた日」こそ今回の回顧展のタイトルに由来した作品で、篠山は被写体に向き合う際、常にエネルギーに満ちていつも晴れているとして、「新・晴れた日」と名付けました。またあらゆる事象をカメラに収めていった「晴れた日」そのものが、篠山の写真家としての活動を象徴しているといえるかもしれません。
続く2階の第2部ではバブル景気にわいた東京を写した「TOKYO NUDE」をはじめ、東日本大震災の被災地を写真集としてまとめた「ATOKATA」、さらには2017年の「LOVE DOLL」などが展示されていました。
「TOKYO NUDE」の「表参道 結晶のいろ」は、1990年当時、表参道の裏に建てられながら、一度も使われることなく取り壊されたビルを舞台として、魔境のような内部空間の中、モデルらが闖入したかように配されていました。シュールと呼べる光景ではないでしょうか。
この他ではヌードモデルを都市や室内空間にて写した「20XX TOKYO」や「快楽の館」も、篠山ならではの官能性を発露した作品だったかもしれません。ヌードモデルが踊って歌う姿を写した「快楽の館」の制作の現場となったのは、ちょうど今年1月に品川での活動を終えて、展示施設を伊香保に集約した旧・原美術館でした。
おおよそ一人の写真家の手による作品とは思えないほど多種多様な写真を追っていると、1960年代から現代に至る日本の社会のドキュメンタリーを見ているような気にさせられました。また1970年代のパリのシリーズや、「晴れた日」から廃屋を捉えた写真など、静けさに包まれた街角や建物を写した作品に思いがけないほど惹かれました。ともすれば篠山の意外な一面を伺えるような展覧会といえるかもしれません。
篠山自身が解説を記した冊子や、会場外のロビーにて公開されたインタビュー映像も面白かったのではないでしょうか。キャリア初期の苦労話や各シリーズの制作背景などを知ることができました。
東京都写真美術館は緊急事態宣言を受け、5月31日まで臨時休館していましたが、6月1日に再開館しました。
当日でもチケットを購入できますが、オンラインでの日時指定予約が推奨されています。8月15日まで開催されています。
「新・晴れた日 篠山紀信」 東京都写真美術館(@topmuseum)
会期:2020年5月18日(火)~8月15日(日)
休館:月曜日。但し月曜日が祝日・振替休日の場合は開館し、翌平日休館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200円、大学生950円、中学・高校生・65歳以上600円。
*第1部もしくは第2部のみ:一般700円、学生560円、中高生・65歳以上350円
場所:目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
「新・晴れた日 篠山紀信」
2020/5/18~8/15
東京都写真美術館で開催中の「新・晴れた日 篠山紀信」を見てきました。
1940年に東京に生まれた写真家の篠山紀信は、多くの雑誌の表紙やグラビアを手掛けただけでなく、建物や都市などを撮影しては旺盛に活動してきました。
その篠山の意外にも初めての大規模な回顧展が「新・晴れた日」で、1960年代の初期の「天井桟敷一座」などから2011年の「ATOKATA」、それに近作の「快楽の館」まで全116点の写真が展示されていました。
まず3階の第1部では1960年代の「日米安保条約反対デモ」や「誕生」、そして1975年の「家」などが並んでいて、篠山がキャリアを築き、時代を切り取るべく写真を撮り続けていたことを目の当たりにできました。
そのうちの「誕生」は、篠山が銀座のニコンサロンで初個展を開いた際に展示された写真で、いずれも鹿児島の徳之島を舞台とした自然と女性のヌードを写していました。燦々と降り注ぐ太陽の光の元、自然と人間の造形美が表現されていて、プリミティブな魅力をたたえていました。
第1部で最も多くの作品を占めていたのが、1974年5月から半年間連載された写真を元にした「晴れた日」のシリーズでした。これは「アサヒグラフ」誌において世の中で話題となった出来事を写した作品で、ジャンルも美術、スポーツ、政治、人々の生活から気象などと多岐にわたっていました。
そしてこの「晴れた日」こそ今回の回顧展のタイトルに由来した作品で、篠山は被写体に向き合う際、常にエネルギーに満ちていつも晴れているとして、「新・晴れた日」と名付けました。またあらゆる事象をカメラに収めていった「晴れた日」そのものが、篠山の写真家としての活動を象徴しているといえるかもしれません。
続く2階の第2部ではバブル景気にわいた東京を写した「TOKYO NUDE」をはじめ、東日本大震災の被災地を写真集としてまとめた「ATOKATA」、さらには2017年の「LOVE DOLL」などが展示されていました。
「TOKYO NUDE」の「表参道 結晶のいろ」は、1990年当時、表参道の裏に建てられながら、一度も使われることなく取り壊されたビルを舞台として、魔境のような内部空間の中、モデルらが闖入したかように配されていました。シュールと呼べる光景ではないでしょうか。
この他ではヌードモデルを都市や室内空間にて写した「20XX TOKYO」や「快楽の館」も、篠山ならではの官能性を発露した作品だったかもしれません。ヌードモデルが踊って歌う姿を写した「快楽の館」の制作の現場となったのは、ちょうど今年1月に品川での活動を終えて、展示施設を伊香保に集約した旧・原美術館でした。
おおよそ一人の写真家の手による作品とは思えないほど多種多様な写真を追っていると、1960年代から現代に至る日本の社会のドキュメンタリーを見ているような気にさせられました。また1970年代のパリのシリーズや、「晴れた日」から廃屋を捉えた写真など、静けさに包まれた街角や建物を写した作品に思いがけないほど惹かれました。ともすれば篠山の意外な一面を伺えるような展覧会といえるかもしれません。
篠山自身が解説を記した冊子や、会場外のロビーにて公開されたインタビュー映像も面白かったのではないでしょうか。キャリア初期の苦労話や各シリーズの制作背景などを知ることができました。
【新着】時代を「激写」した篠山紀信の60年の軌跡を辿る回顧展 https://t.co/R2EFLsbfsv
— Pen Magazine (@Pen_magazine) June 21, 2021
東京都写真美術館は緊急事態宣言を受け、5月31日まで臨時休館していましたが、6月1日に再開館しました。
当日でもチケットを購入できますが、オンラインでの日時指定予約が推奨されています。8月15日まで開催されています。
「新・晴れた日 篠山紀信」 東京都写真美術館(@topmuseum)
会期:2020年5月18日(火)~8月15日(日)
休館:月曜日。但し月曜日が祝日・振替休日の場合は開館し、翌平日休館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200円、大学生950円、中学・高校生・65歳以上600円。
*第1部もしくは第2部のみ:一般700円、学生560円、中高生・65歳以上350円
場所:目黒区三田 1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
交通:JR線恵比寿駅東口より徒歩約7分。東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩約10分。
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