都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「篠山紀信展」 東京オペラシティアートギャラリー
東京オペラシティアートギャラリー
「篠山紀信展 写真力」
10/3-12/24

東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「篠山紀信展 写真力」へ行ってきました。
名だたる写真家の中でも抜群の知名度を誇る篠山紀信。各方面での活躍にも関わらず、意外にも美術館では一度も回顧展が開かれたことがありませんでした。
断言します。失礼ながら篠山紀信の写真を殆ど追っかけなかった私でも、この展覧会は驚くほどに魅力的であり、また感動的ですらありました。
さてともかくエネルギッシュでまた生気に満ち溢れた写真を撮る紀信、まずは何を提示するのかと思いきや、冒頭は「GOD:鬼籍に入られた人々」、つまり既に亡くなられた方を捉えた作品です。
紀信は写真家を「時の死」の立会い人であると看破します。

「吉永小百合」1988年
しかしながら亡くなられた方々とはいえ、モデルの生き生きとした表情、また次の「STAR:すべての人々に知られる有名人」にも通じる、言わば最もかっこ良い姿を取り出すのが紀信流。
逆にスターがまさにスターとして輝く「STAR」では、時にスターらしからぬ姿、ようは何気ない日常の仕草を切り取るところも興味深いところです。
人間の持つ日常と非日常、また内と外の双方を抉り取ってのポートレート、まさに全人格的とも言える写真の展開に圧倒されました。
「篠山紀信 at 東京ディズニーリゾート New MAGIC/講談社」
フィクション、つまり作られた空間を、本来的に作られる平面としてある写真へ切り出した「SPECTACLE:私たちを異次元に連れ出す夢の世界」も、写真の本質を問いただす意欲的なシリーズと言えるのかもしれません。
ここで印象深いのはディズニーランドを写したいくつかの作品です。そこには来場者の姿はなく、あの作り込んだ建物とお馴染みのマスコット、そしてキャストだけが登場。まさに夢の国、究極の異世界のみを、何ら違和感なく、有り体に示しています。

「坂東玉三郎 『籠釣瓶花街酔醒』 八ツ橋」1999年
それは歌舞伎を写した作品でも同様。時にアクロバティックな動きをとる生身の人間の身体性も切り出していますが、やはり歌舞伎の世界をまさにワンダーランドとして包み隠されずに演出。
それにしてもディズニーしかり歌舞伎しかり、紀信の捉える写真は何故にこれほど色に力があるのでしょうか。画家ならぬ、写真家としてのカラリスト紀信、舞い乱れる色の美しさ、激しさに酔ってしまうほどでした。

「MANUEL LEGIS」1999年
もちろん「BODY:裸の肉体、美とエロスの闘い」からヌードも圧巻の一言。甘酸っぱい官能を感じながらも、人体とはかくも逞しくまた美しいのか。終始そう思ってなりませんでした。
ラストに控えるのは、一転してモノクロームで統一された「ACCIDENTS:2011年3月11日、東日本大震災で被災された人々の肖像」のシリーズ。いうまでもなく先の3.11で被災された方々を写したシリーズに他なりません。

「大友瑠斗(9) 大友乃愛(7) 名取市」2011年
それこそ全身で向き合うかのように真っ正面から向き合った人の姿。そして背後におぼろげに写る瓦礫の山。無残なまでの状況と、その一方での人の生活。そして静かなる生への意思。
私の拙い言葉で今更どう表現しても虚しいばかりですが、一点一点、必ずしも雄弁ではないにしろ、作品を超えて語りかけてくる人の想いを感じずにはいられません。
ATOKATA(あとかた)/篠山紀信/日経BP社」
写真から伝わってくる時代性や人間の意思。うまく表現で出来ないのがもどかしいところですが、タイトルにもある「写真力」、そうしたものに打ちのめされるような展覧会でした。
「芸術新潮2012年10月号/新潮社」
ミュージアムショップで流される紀信のインタビュー映像がまた見応え十分です。ラストの一言に思わずにやりとさせられました。
会場はかなり賑わっていました。会期末に向けて混雑してくるかもしれません。
「THE PEOPLE by KISHIN/パイインターナショナル」
12月24日までの開催です。おすすめします。
「篠山紀信展 写真力」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:10月3日(水)~12月24日(月・祝)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大・高生800(600)円、中・小生600(400)円。
*( )内は15名以上の団体料金。土・日・祝は小中学生無料。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
「篠山紀信展 写真力」
10/3-12/24

東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「篠山紀信展 写真力」へ行ってきました。
名だたる写真家の中でも抜群の知名度を誇る篠山紀信。各方面での活躍にも関わらず、意外にも美術館では一度も回顧展が開かれたことがありませんでした。
断言します。失礼ながら篠山紀信の写真を殆ど追っかけなかった私でも、この展覧会は驚くほどに魅力的であり、また感動的ですらありました。
さてともかくエネルギッシュでまた生気に満ち溢れた写真を撮る紀信、まずは何を提示するのかと思いきや、冒頭は「GOD:鬼籍に入られた人々」、つまり既に亡くなられた方を捉えた作品です。
紀信は写真家を「時の死」の立会い人であると看破します。

「吉永小百合」1988年
しかしながら亡くなられた方々とはいえ、モデルの生き生きとした表情、また次の「STAR:すべての人々に知られる有名人」にも通じる、言わば最もかっこ良い姿を取り出すのが紀信流。
逆にスターがまさにスターとして輝く「STAR」では、時にスターらしからぬ姿、ようは何気ない日常の仕草を切り取るところも興味深いところです。
人間の持つ日常と非日常、また内と外の双方を抉り取ってのポートレート、まさに全人格的とも言える写真の展開に圧倒されました。

フィクション、つまり作られた空間を、本来的に作られる平面としてある写真へ切り出した「SPECTACLE:私たちを異次元に連れ出す夢の世界」も、写真の本質を問いただす意欲的なシリーズと言えるのかもしれません。
ここで印象深いのはディズニーランドを写したいくつかの作品です。そこには来場者の姿はなく、あの作り込んだ建物とお馴染みのマスコット、そしてキャストだけが登場。まさに夢の国、究極の異世界のみを、何ら違和感なく、有り体に示しています。

「坂東玉三郎 『籠釣瓶花街酔醒』 八ツ橋」1999年
それは歌舞伎を写した作品でも同様。時にアクロバティックな動きをとる生身の人間の身体性も切り出していますが、やはり歌舞伎の世界をまさにワンダーランドとして包み隠されずに演出。
それにしてもディズニーしかり歌舞伎しかり、紀信の捉える写真は何故にこれほど色に力があるのでしょうか。画家ならぬ、写真家としてのカラリスト紀信、舞い乱れる色の美しさ、激しさに酔ってしまうほどでした。

「MANUEL LEGIS」1999年
もちろん「BODY:裸の肉体、美とエロスの闘い」からヌードも圧巻の一言。甘酸っぱい官能を感じながらも、人体とはかくも逞しくまた美しいのか。終始そう思ってなりませんでした。
ラストに控えるのは、一転してモノクロームで統一された「ACCIDENTS:2011年3月11日、東日本大震災で被災された人々の肖像」のシリーズ。いうまでもなく先の3.11で被災された方々を写したシリーズに他なりません。

「大友瑠斗(9) 大友乃愛(7) 名取市」2011年
それこそ全身で向き合うかのように真っ正面から向き合った人の姿。そして背後におぼろげに写る瓦礫の山。無残なまでの状況と、その一方での人の生活。そして静かなる生への意思。
私の拙い言葉で今更どう表現しても虚しいばかりですが、一点一点、必ずしも雄弁ではないにしろ、作品を超えて語りかけてくる人の想いを感じずにはいられません。

写真から伝わってくる時代性や人間の意思。うまく表現で出来ないのがもどかしいところですが、タイトルにもある「写真力」、そうしたものに打ちのめされるような展覧会でした。

ミュージアムショップで流される紀信のインタビュー映像がまた見応え十分です。ラストの一言に思わずにやりとさせられました。
会場はかなり賑わっていました。会期末に向けて混雑してくるかもしれません。

12月24日までの開催です。おすすめします。
「篠山紀信展 写真力」 東京オペラシティアートギャラリー
会期:10月3日(水)~12月24日(月・祝)
休館:月曜日。(祝日の場合は翌火曜日)
時間:11:00~19:00 *金・土は20時まで開館。
料金:一般1000(800)円、大・高生800(600)円、中・小生600(400)円。
*( )内は15名以上の団体料金。土・日・祝は小中学生無料。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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12月の展覧会・ギャラリーetc
少し遅くなりましたが、12月中に見たい展覧会をリストアップしました。
展覧会
・「横山大観と再興院展の仲間たち」 野間記念館(~12/16)
・「我ら明清親衛隊」 板橋区立美術館(~2013/1/6)
#記念講演会:「沈南蘋再考」 日時:12/15(土)15:00~ 講師:板倉聖哲(東京大学東洋文化研究所准教授) 聴講無料、先着100名。
・「馬込時代の川瀬巴水展」 大田区立郷土博物館(~12/24)
・「川俣正 Expand BankART」 BankART Studio NYK(~2013/1/13)
・「はじまりは国芳 江戸スピリットのゆくえ」 横浜美術館(~2013/1/14)
・「桑山忠明展 HAYAMA」 神奈川県立近代美術館葉山(~2013/1/14)
・「ベン・シャーン展 線の魔術師」 埼玉県立近代美術館(~2013/1/14)
・「生誕100年 松本竣介展」 世田谷美術館(~2013/1/14)
#対談:「画家・竣介の実像、生活と芸術と」 日時:12/15(土) 14:00~ 講師:中野淳(画家、竣介の後輩)、松本莞(建築家、竣介の次男) 当日先着150名。講堂にて。
・「森と湖の国 フィンランド・デザイン」 サントリー美術館(~2013/1/20)
・「ゆくとし くるとし 茶道具と円山派の絵画」 三井記念美術館(12/8~2013/1/26)
#展示替えあり→円山応挙「雲龍図」(12/8~12/24)、「雪松図屏風」(1/4~1/26)
・「高山辰雄・奥田元宋 文展から日展へ」 山種美術館(~2013/1/27)
・「この世界とわたしのどこか 日本の新進作家vol.11」 東京都写真美術館(12/8~2013/1/27)
#対談:「作家とゲストによる連続対談」→スケジュール
・「シャガールのタピスリー展」 渋谷区立松濤美術館(12/11~2013/1/27)
・「アートと音楽/MOTアニュアル2012」 東京都現代美術館(~2013/2/3)
#パフォーマンス:「佐々瞬 それらの日々をへて、あの日がやってくる」 日時:12/8(土) 18:15~(当日17:30までに入場する必要あり。)出演:小田原直也、佐々瞬
・「始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語」 東京ステーションギャラリー(~2013/2/24)
・「虹の彼方 こことどこかをつなぐ、アーティストたちとの遊飛行」 府中市美術館(~2013/2/24)
#出品作家トーク、キッズアワー、ベビーカーツアーあり→スケジュール
・「白隠展 HAKUIN」 Bunkamuraザ・ミュージアム(12/22~2013/2/24)
#各種トークイベントあり→「白隠展 関連イベント」
・「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス展」 原美術館(12/7~2013/3/10)
#各種トーク、イベント、上映会あり→「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」開催情報
ギャラリー
・「小林耕平展」 山本現代(~12/15)
・「大庭大介展」 SCAI(~12/21)
・「ignore your perspective 17 HIGH LIGHT 2012/2013」 児玉画廊東京(~12/22)
・「山口藍展 ほし」 ミヅマアートギャラリー(~12/22)
・「中村亮一展」 LIXILギャラリー(~12/26)
・「イケヤン★2011-2012 オーラス展」 ニュートロン東京(12/5~30)
・「世界と孤独 vol.4 岡野智史×佐藤玲子」 日本橋高島屋美術画廊X(12/12~2013/1/7)
・「石内都 ひろしま hiroshima via Vancouver」 カナダ大使館高円宮記念ギャラリー(12/7~2013/1/9)
・「高橋大輔 まぶしい絵具/五年間を振り返る」 アルマスギャラリー(~2013/1/10)
・「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.7 増田佳江」 ギャラリーαM(~2013/1/12)
・「マリオ・ガルシア・トレス展」 タカ・イシイギャラリー(12/15~2013/1/12)
・「風間サチコ 没落 THIRD FIRE」 無人島プロダクション(12/8~2013/1/19)
・「袴田京太朗 扮する人」 MA2ギャラリー(12/8~2013/1/20)
*この項、後日追記します。
展覧会
・「横山大観と再興院展の仲間たち」 野間記念館(~12/16)
・「我ら明清親衛隊」 板橋区立美術館(~2013/1/6)
#記念講演会:「沈南蘋再考」 日時:12/15(土)15:00~ 講師:板倉聖哲(東京大学東洋文化研究所准教授) 聴講無料、先着100名。
・「馬込時代の川瀬巴水展」 大田区立郷土博物館(~12/24)
・「川俣正 Expand BankART」 BankART Studio NYK(~2013/1/13)
・「はじまりは国芳 江戸スピリットのゆくえ」 横浜美術館(~2013/1/14)
・「桑山忠明展 HAYAMA」 神奈川県立近代美術館葉山(~2013/1/14)
・「ベン・シャーン展 線の魔術師」 埼玉県立近代美術館(~2013/1/14)
・「生誕100年 松本竣介展」 世田谷美術館(~2013/1/14)
#対談:「画家・竣介の実像、生活と芸術と」 日時:12/15(土) 14:00~ 講師:中野淳(画家、竣介の後輩)、松本莞(建築家、竣介の次男) 当日先着150名。講堂にて。
・「森と湖の国 フィンランド・デザイン」 サントリー美術館(~2013/1/20)
・「ゆくとし くるとし 茶道具と円山派の絵画」 三井記念美術館(12/8~2013/1/26)
#展示替えあり→円山応挙「雲龍図」(12/8~12/24)、「雪松図屏風」(1/4~1/26)
・「高山辰雄・奥田元宋 文展から日展へ」 山種美術館(~2013/1/27)
・「この世界とわたしのどこか 日本の新進作家vol.11」 東京都写真美術館(12/8~2013/1/27)
#対談:「作家とゲストによる連続対談」→スケジュール
・「シャガールのタピスリー展」 渋谷区立松濤美術館(12/11~2013/1/27)
・「アートと音楽/MOTアニュアル2012」 東京都現代美術館(~2013/2/3)
#パフォーマンス:「佐々瞬 それらの日々をへて、あの日がやってくる」 日時:12/8(土) 18:15~(当日17:30までに入場する必要あり。)出演:小田原直也、佐々瞬
・「始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート 9つの物語」 東京ステーションギャラリー(~2013/2/24)
・「虹の彼方 こことどこかをつなぐ、アーティストたちとの遊飛行」 府中市美術館(~2013/2/24)
#出品作家トーク、キッズアワー、ベビーカーツアーあり→スケジュール
・「白隠展 HAKUIN」 Bunkamuraザ・ミュージアム(12/22~2013/2/24)
#各種トークイベントあり→「白隠展 関連イベント」
・「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス展」 原美術館(12/7~2013/3/10)
#各種トーク、イベント、上映会あり→「MU[無]─ペドロ コスタ&ルイ シャフェス」開催情報
ギャラリー
・「小林耕平展」 山本現代(~12/15)
・「大庭大介展」 SCAI(~12/21)
・「ignore your perspective 17 HIGH LIGHT 2012/2013」 児玉画廊東京(~12/22)
・「山口藍展 ほし」 ミヅマアートギャラリー(~12/22)
・「中村亮一展」 LIXILギャラリー(~12/26)
・「イケヤン★2011-2012 オーラス展」 ニュートロン東京(12/5~30)
・「世界と孤独 vol.4 岡野智史×佐藤玲子」 日本橋高島屋美術画廊X(12/12~2013/1/7)
・「石内都 ひろしま hiroshima via Vancouver」 カナダ大使館高円宮記念ギャラリー(12/7~2013/1/9)
・「高橋大輔 まぶしい絵具/五年間を振り返る」 アルマスギャラリー(~2013/1/10)
・「絵画、それを愛と呼ぶことにしよう vol.7 増田佳江」 ギャラリーαM(~2013/1/12)
・「マリオ・ガルシア・トレス展」 タカ・イシイギャラリー(12/15~2013/1/12)
・「風間サチコ 没落 THIRD FIRE」 無人島プロダクション(12/8~2013/1/19)
・「袴田京太朗 扮する人」 MA2ギャラリー(12/8~2013/1/20)
*この項、後日追記します。
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ブリヂストン美術館ナイトが開催されました
今年、60周年を迎えたブリヂストン美術館を締めくくるスペシャルイベントとして企画された「ブリヂストン美術館ナイト」。

準備に2週間、告知は僅か1週間ほどしかなかったものの、蓋を開ければ大盛況。ブログ、Twitter、Facebookの各SNSユーザー約100名にお集まりいただきました。
と言うわけで、当日の様子をごく簡単にレポート。まずはホールでのトーク・イベントです。

トークイベント「ブリヂストン美術館開館60周年を振り返って」
ブリヂストン美術館の島田館長のご挨拶、そして司会進行を務めてくださった新畑泰秀学芸課長のお話に続き、第一部として「学芸員対談:ブリヂストン美術館VS三菱一号館美術館」が。
ブリヂストン美術館の賀川さんと三菱一号館美術館の阿佐美さんがご登壇。

第一部「学芸員対談 ブリヂストン美術館VS 三菱一号館美術館」からブリヂストン美術館学芸員の賀川恭子さん
まずはブリヂストンの賀川さんより60周年の展覧会を振り返っていただいた上で、阿佐美さんに三菱一号館の生い立ち、そしてコレクションなどについてお話いただきました。

第一部から三菱一号館美術館学芸員の阿佐美淑子さん
その後はお二人のトーク。三菱一号館の床材のお話やドニの作品が大き過ぎて入らなかったなど、ちょっとした裏話も。ちなみにお二方、そもそもご友人ということで軽妙で気さくなやり取りが続きましたが、規定の時間により終了。もっと突っ込んだお話を聞くために長く時間をとれば良かったかとも思いました。
第二部のセッション、「アートブロガーさんを交えての意見交換会」では、6次元の中村邦夫さん、そしてお馴染み青い日記帳のたけさん、そして不肖私はろるどが壇上へ。

第二部「アートブロガーを交えての意見交換会」からコンスタンティン・ブランクーシ「接吻」(1907-10年)
ここでは新畑さんのお力添えを賜りながら、開催中の「気ままにアートめぐり」から気になる2~3点を挙げていくという趣向。会場の方に挙手を願ったりしながらの進行となりました。
トップバッターは6次元の中村さん。超力作のチャート表「ブリヂストン美術館を10倍楽しむ方法」を元に、現代彫刻と古代彫刻の関係を問いただす鋭いお話が。

「ブリヂストン美術館を10倍楽しむ方法」(荻窪6次元でも無料配布中!)
これがまさに目から鱗。普段、何かと見落としがちな彫刻についての理解が深まります。ジャコメッティなどを引用しながら、現代彫刻がいかに古代エジプトやギリシャを志向しているかということについて語っていただきました。
続いては青い日記帳たけさん。コローとセザンヌの二本だて。

第二部からカミーユ・コロー「イタリアの女」(1826-28年)
「コローを挙げたのは何も三菱の高橋館長がコロー展を企画されたからではないよ(笑)。」との掴みでぐいぐいと「イタリアの女」についてのお話を。
またセザンヌでは「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」を挙げながら、同じシャトー・ノワールを描いた二点の作品をご紹介。

第二部からポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」(1904-10)
このブリヂストン美術館所蔵の作品の特異性、つまりこれだけがサント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワールの両方を描いているということなどについて語って下さいました。
さてラストは私はろるどがカイユボットとザオ=ウーキーを。
カイユボットを引用したのは、もちろんドビュッシーとの関係。実はこのイベント、そもそも6次元で開催したドビュッシー・ナイトから話が膨らんで実現した企画なのです。

第二部からギュスターヴ・カイユボット「ピアノを弾く若い男」(1876年)
しかしながら私は素人。大したお話は出来ませんでしたが、カイユボットの「ピアノを弾く若い男」、ピアノ上に積まれた楽譜集、ドビュッシーの師であるマルモンテルの教則本だということについてお分かりいただけたでしょうか。
また当日、話し忘れてしまいましたが、この楽譜、譜面台のものと同一ではありません。カイユボットの弟がモデルだというピアノを弾く男の口元に注目して下さい。少し開いていることが見て取れるのではないでしょうか。
実はこれ、彼は歌いながら弾いている、つまり譜面は教則本ではなく、歌曲かオペラの一節ではないかということなのです。
カイユボットから弟、そしてピアノ上の楽譜、またマルモンテルを通してドビュッシーへと至る展開。音楽と美術を繋ぐ作品としてお示し出来たのではないかと思っています。

第二部からザオ=ウーキー「07.06.85」(1985年)
最後のザオは駆け足になってしまいましたが、客席でも好きだと言って下さった方が多かったのは嬉しいポイント。
本当はザオとスーラージュが一緒にブリヂストン美術館へ来館したというエピソード、さらにアンフォルメルを通して展示中の白髪一雄や田中敦子といった具体との関係、また作家とも関わりを持つことのできる現代美術の面白さなどをお話したかったのですが、時間の都合で辿りつけませんでした。
少し時間を延長してのトークイベントの後は、特別鑑賞会とカフェでの懇親会へ。

懇親会(一階ティールームにて)
鑑賞会では展示室でギャラリートークも。また参加者と美術館の方との懇親会では終了の20時を過ぎても大勢が残られるほどの盛況となりました。
ブリヂストン美術館では初めてのイベント。幸いにもお手伝いすることが出来ましたが、ご参加下さった皆さん、如何だったでしょうか。次に繋げるためにも忌憚なきご意見を頂戴出来ると嬉しいです。
なおツイッターのハッシュタグ #ブリ美ナイト でイベントの様子を追っかけられます。
それでは改めてイベントに向けての多大な準備をして下さった美術館の方、また当日のスタッフ、そして何よりもご参加いただいた全ての皆さんに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

「気ままにアートめぐり 印象派、エコール・ド・パリと20世紀美術」 ブリヂストン美術館
会期:10月26日(金)~12月24日(月)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(ただし7/16 、9/17、10/8は開館)
料金:一般800(600)円、シニア(65歳以上)600(500)円、大学・高校生500(400)円、中学生以下無料。
*( )内は15名以上の団体割引。
住所:中央区京橋1-10-1
交通:JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。

「シャルダン展 静寂の巨匠」 三菱一号館美術館
会期:2012年9月8日(土)~2013年1月6日(日)
休館:毎週月曜。祝日の場合は翌火曜休館。(但し12月25日は開館。)年末年始(12/29~1/1)
時間:10:00~18:00(火・土・日・祝)、10:00~20:00(水・木・金)
料金:大人1500円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
*「アフター6割引」対象日:平日の木曜・金曜 時間:18時~20時 料金:1000円。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。

準備に2週間、告知は僅か1週間ほどしかなかったものの、蓋を開ければ大盛況。ブログ、Twitter、Facebookの各SNSユーザー約100名にお集まりいただきました。
と言うわけで、当日の様子をごく簡単にレポート。まずはホールでのトーク・イベントです。

トークイベント「ブリヂストン美術館開館60周年を振り返って」
ブリヂストン美術館の島田館長のご挨拶、そして司会進行を務めてくださった新畑泰秀学芸課長のお話に続き、第一部として「学芸員対談:ブリヂストン美術館VS三菱一号館美術館」が。
ブリヂストン美術館の賀川さんと三菱一号館美術館の阿佐美さんがご登壇。

第一部「学芸員対談 ブリヂストン美術館VS 三菱一号館美術館」からブリヂストン美術館学芸員の賀川恭子さん
まずはブリヂストンの賀川さんより60周年の展覧会を振り返っていただいた上で、阿佐美さんに三菱一号館の生い立ち、そしてコレクションなどについてお話いただきました。

第一部から三菱一号館美術館学芸員の阿佐美淑子さん
その後はお二人のトーク。三菱一号館の床材のお話やドニの作品が大き過ぎて入らなかったなど、ちょっとした裏話も。ちなみにお二方、そもそもご友人ということで軽妙で気さくなやり取りが続きましたが、規定の時間により終了。もっと突っ込んだお話を聞くために長く時間をとれば良かったかとも思いました。
第二部のセッション、「アートブロガーさんを交えての意見交換会」では、6次元の中村邦夫さん、そしてお馴染み青い日記帳のたけさん、そして不肖私はろるどが壇上へ。

第二部「アートブロガーを交えての意見交換会」からコンスタンティン・ブランクーシ「接吻」(1907-10年)
ここでは新畑さんのお力添えを賜りながら、開催中の「気ままにアートめぐり」から気になる2~3点を挙げていくという趣向。会場の方に挙手を願ったりしながらの進行となりました。
トップバッターは6次元の中村さん。超力作のチャート表「ブリヂストン美術館を10倍楽しむ方法」を元に、現代彫刻と古代彫刻の関係を問いただす鋭いお話が。

「ブリヂストン美術館を10倍楽しむ方法」(荻窪6次元でも無料配布中!)
これがまさに目から鱗。普段、何かと見落としがちな彫刻についての理解が深まります。ジャコメッティなどを引用しながら、現代彫刻がいかに古代エジプトやギリシャを志向しているかということについて語っていただきました。
続いては青い日記帳たけさん。コローとセザンヌの二本だて。

第二部からカミーユ・コロー「イタリアの女」(1826-28年)
「コローを挙げたのは何も三菱の高橋館長がコロー展を企画されたからではないよ(笑)。」との掴みでぐいぐいと「イタリアの女」についてのお話を。
またセザンヌでは「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」を挙げながら、同じシャトー・ノワールを描いた二点の作品をご紹介。

第二部からポール・セザンヌ「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」(1904-10)
このブリヂストン美術館所蔵の作品の特異性、つまりこれだけがサント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワールの両方を描いているということなどについて語って下さいました。
さてラストは私はろるどがカイユボットとザオ=ウーキーを。
カイユボットを引用したのは、もちろんドビュッシーとの関係。実はこのイベント、そもそも6次元で開催したドビュッシー・ナイトから話が膨らんで実現した企画なのです。

第二部からギュスターヴ・カイユボット「ピアノを弾く若い男」(1876年)
しかしながら私は素人。大したお話は出来ませんでしたが、カイユボットの「ピアノを弾く若い男」、ピアノ上に積まれた楽譜集、ドビュッシーの師であるマルモンテルの教則本だということについてお分かりいただけたでしょうか。
また当日、話し忘れてしまいましたが、この楽譜、譜面台のものと同一ではありません。カイユボットの弟がモデルだというピアノを弾く男の口元に注目して下さい。少し開いていることが見て取れるのではないでしょうか。
実はこれ、彼は歌いながら弾いている、つまり譜面は教則本ではなく、歌曲かオペラの一節ではないかということなのです。
カイユボットから弟、そしてピアノ上の楽譜、またマルモンテルを通してドビュッシーへと至る展開。音楽と美術を繋ぐ作品としてお示し出来たのではないかと思っています。

第二部からザオ=ウーキー「07.06.85」(1985年)
最後のザオは駆け足になってしまいましたが、客席でも好きだと言って下さった方が多かったのは嬉しいポイント。
本当はザオとスーラージュが一緒にブリヂストン美術館へ来館したというエピソード、さらにアンフォルメルを通して展示中の白髪一雄や田中敦子といった具体との関係、また作家とも関わりを持つことのできる現代美術の面白さなどをお話したかったのですが、時間の都合で辿りつけませんでした。
少し時間を延長してのトークイベントの後は、特別鑑賞会とカフェでの懇親会へ。

懇親会(一階ティールームにて)
鑑賞会では展示室でギャラリートークも。また参加者と美術館の方との懇親会では終了の20時を過ぎても大勢が残られるほどの盛況となりました。
ブリヂストン美術館では初めてのイベント。幸いにもお手伝いすることが出来ましたが、ご参加下さった皆さん、如何だったでしょうか。次に繋げるためにも忌憚なきご意見を頂戴出来ると嬉しいです。
なおツイッターのハッシュタグ #ブリ美ナイト でイベントの様子を追っかけられます。
それでは改めてイベントに向けての多大な準備をして下さった美術館の方、また当日のスタッフ、そして何よりもご参加いただいた全ての皆さんに感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

「気ままにアートめぐり 印象派、エコール・ド・パリと20世紀美術」 ブリヂストン美術館
会期:10月26日(金)~12月24日(月)
時間:10:00~18:00(毎週金曜日は20:00まで)*入館は閉館の30分前まで
休館:月曜日(ただし7/16 、9/17、10/8は開館)
料金:一般800(600)円、シニア(65歳以上)600(500)円、大学・高校生500(400)円、中学生以下無料。
*( )内は15名以上の団体割引。
住所:中央区京橋1-10-1
交通:JR線東京駅八重洲中央口徒歩5分。東京メトロ銀座線京橋駅6番出口徒歩5分。東京メトロ銀座線・東西線、都営浅草線日本橋駅B1出口徒歩5分。

「シャルダン展 静寂の巨匠」 三菱一号館美術館
会期:2012年9月8日(土)~2013年1月6日(日)
休館:毎週月曜。祝日の場合は翌火曜休館。(但し12月25日は開館。)年末年始(12/29~1/1)
時間:10:00~18:00(火・土・日・祝)、10:00~20:00(水・木・金)
料金:大人1500円、高校・大学生1000円、小・中学生500円。
*「アフター6割引」対象日:平日の木曜・金曜 時間:18時~20時 料金:1000円。
住所:千代田区丸の内2-6-2
交通:東京メトロ千代田線二重橋前駅1番出口から徒歩3分。JR東京駅丸の内南口・JR有楽町駅国際フォーラム口から徒歩5分。
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「アノニマス・ライフ」 ICC
NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)
「アノニマス・ライフ 名を明かさない生命」
2012/11/17-2013/3/3

NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で開催中の「アノニマス・ライフ 名を明かさない生命」へ行ってきました。
アノニマスと聞いて思い出すのは、しばらく前に話題を集めた国際的ハッカー集団。そもそも「アノニマス」(anonymous)とはギリシャ語の接頭語an(~なしの)にonyma(名前)を組合せ、「名前がない」ということを意味します。
もちろん本展はハッキングの展覧会ではなく、匿名や「名前がない」を意味する広義のアノニマスを問うもの。
名付けえない生命、また社会の諸相(セクシャリティーやアイデンティティなど。)に存在する曖昧な境界、揺らぎに目を向け、それを表現しようという試みです。
新進気鋭、主にメディアアートを舞台にする以下の7組のアーティストが出品していました。
やなぎみわ
渡辺豪
高嶺格
スプツニ子!
齋藤達也+石黒浩
毛利悠子
オルラン
さて初めにチラシのテキストから色々とややこしいことを引用しましたが、ずばり言ってしまうとこの展覧会、感覚的にとても楽しめます。
まずはやなぎみわから代表的な「エレベーターガール」のシリーズが。

やなぎみわ「案内嬢の部屋3F」1998年
狭く閉ざされた空間で溶け出すエレベーターガール。現実と幻の狭間を彷徨うようなイメージ、同じくマネキンのような女性の並ぶ「案内嬢の部屋」(1997)に通じるものがあります。
さて同じく狭間といえば、人間か機械なのか、一瞬迷ってしまうほど精巧に出来た石黒浩の「米朝アンドロイド」(2012)。いうまでもなく桂米朝のアンドロイドに他なりません。

「米朝アンドロイド」2012年 制作指揮:石黒浩
こちらは桂米朝の米寿記念に作製されたというロボットですが、ともかくしばらく眺めていると、それこそ本物の桂米朝と見間違うほどにリアル。すっと開く口、そしてひくっと動く肩、さらには右へ左へと小刻みに曲がるクビなどが、それこそほぼ完璧なほどに再現されています。
さらに虚が現実を侵食せんとするのが、その横にある桂米朝の舞台の映像。多少の種明かしになってしまうのであえて触れませんが、もはや驚異の世界。その出来に少し怖くなってしまうほどでした。
さて自らの身体へ積極的に介在して「生」の在り方を問うオルランの作品は迫力があります。

オルラン「これが私の身体…、これが私のソフトウェア」1993/2007年
彼女は何と自身の整形手術をパフォーマンスして表現、その様子を写真ばかりか映像に記録して配信します。
切除した肉片までを作品にするという試み。展示はもはやグロテスクですらありましたが、美と醜、その境界とは何ぞやということを身体をはって探ろうとする心意気には感心しました。
展示中、最も華やかでありながら、それでいて社会の根底にある問題に切り込んでいたのが、お馴染みのスプツニ子!でしょう。
作品は3点、「菜の花ヒール」、カラスボット☆ジェニー」、そして「生理マシーン、タカシの場合。」です。

スプツニ子!「菜の花ヒール」2011-2012年
黄色の菜の花がうず高く積まれた「菜の花ヒール」。一見、とてもポップな作品ですが、実はこれ、菜の花には放射性物質を吸収する働きがあることに着目し、ヒールの先に種を埋め込んで、歩くと花が咲いていくというアイデアを体現したもの。
美しい黄色の菜の花に潜む放射能汚染の脅威。言うまでもなく、原発事故の惨劇を思い出してなりません。
「生理マシーン、タカシの場合。」はセクシャリティーの問題に切り込んだ意欲作。
女性に憧れる少年タカシへ何と生理の痛みを実際に経験させるパフォーマンス、夜の街に繰り出したタカシの下腹部に激痛が走る様子が映し出されていました。

高嶺格「Ask for aTrade」1993年
来年、水戸芸術館で個展も予定されている高嶺は映像1点。NYで路上生活を行う人々と衣服を交換しながら友人宅を目指すというパフォーマンスを捉えた「Ask for a Trade」(1993)が出品されています。
ラストを飾るのは今年、MOTのブルームバーグ・パヴィリオンでも展示のあった毛利悠子のインスタレーション、「fort-da」(2012)が。

毛利悠子「サーカス」展示風景(参考図版)2012年 東京都現代美術館
PC、楽器、ライト、電線、歯車、ロープ、その他諸々、一見関係ないような機械や道具が、それこそ人体の神経組織を再現するかの如く有機的に連関。
打ち抜いた壁の向こうから滑車を伝ってやってくるロープ。その動きは淡々と、それでいながら永遠に止まることもありません。まるでこのオペラシティという建物に寄生するサイボーグ、機械生物であるかのようでした。
ICCのオープンスペースでは20点以上のメディアアートも。あわせて楽しむのも良さそうです。
久々にICCへ行きましたが、予想以上にはまりました。おすすめ出来ます。
【関連イベント】
・パフォーマンス「模像と鏡像 - 美容師篇」
作・演出:齋藤達也
出演:リプリーQ2(アンドロイド)、小林慎(美容師)
日時:2012年12月15日(土)15時から。
協力:石黒浩(大阪大学大学院教授)
技術協力:小川浩平(大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻特任助教)
・アーティスト・トーク「齋藤達也×石黒浩」
出演:齋藤達也、石黒浩(大阪大学大学院教授,ロボット工学)
日時:2013年1月19日(土)15時より
定員:70名(先着順)
*ともに会場はICC4階の特設会場。入場無料。(展示を観覧する場合は要チケット。)
2013年3月3日まで開催されています。
「アノニマス・ライフ 名を明かさない生命」 NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)
会期:2012年11月17日(土)~2013年3月3日(日)
休館:月曜日。(月曜が祝日の場合は翌日。)。年末年始(12/28~1/4)、保守点検日(2/10)。
時間:11:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般・大学生500(400)円、高校生以下無料。割引クーポン。
*( )内は15名以上の団体料金。会期中1回に限り再入場可。
住所:新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
交通:京王新線初台駅東口から徒歩2分。
「アノニマス・ライフ 名を明かさない生命」
2012/11/17-2013/3/3

NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で開催中の「アノニマス・ライフ 名を明かさない生命」へ行ってきました。
アノニマスと聞いて思い出すのは、しばらく前に話題を集めた国際的ハッカー集団。そもそも「アノニマス」(anonymous)とはギリシャ語の接頭語an(~なしの)にonyma(名前)を組合せ、「名前がない」ということを意味します。
もちろん本展はハッキングの展覧会ではなく、匿名や「名前がない」を意味する広義のアノニマスを問うもの。
名付けえない生命、また社会の諸相(セクシャリティーやアイデンティティなど。)に存在する曖昧な境界、揺らぎに目を向け、それを表現しようという試みです。
新進気鋭、主にメディアアートを舞台にする以下の7組のアーティストが出品していました。
やなぎみわ
渡辺豪
高嶺格
スプツニ子!
齋藤達也+石黒浩
毛利悠子
オルラン
さて初めにチラシのテキストから色々とややこしいことを引用しましたが、ずばり言ってしまうとこの展覧会、感覚的にとても楽しめます。
まずはやなぎみわから代表的な「エレベーターガール」のシリーズが。

やなぎみわ「案内嬢の部屋3F」1998年
狭く閉ざされた空間で溶け出すエレベーターガール。現実と幻の狭間を彷徨うようなイメージ、同じくマネキンのような女性の並ぶ「案内嬢の部屋」(1997)に通じるものがあります。
さて同じく狭間といえば、人間か機械なのか、一瞬迷ってしまうほど精巧に出来た石黒浩の「米朝アンドロイド」(2012)。いうまでもなく桂米朝のアンドロイドに他なりません。

「米朝アンドロイド」2012年 制作指揮:石黒浩
こちらは桂米朝の米寿記念に作製されたというロボットですが、ともかくしばらく眺めていると、それこそ本物の桂米朝と見間違うほどにリアル。すっと開く口、そしてひくっと動く肩、さらには右へ左へと小刻みに曲がるクビなどが、それこそほぼ完璧なほどに再現されています。
さらに虚が現実を侵食せんとするのが、その横にある桂米朝の舞台の映像。多少の種明かしになってしまうのであえて触れませんが、もはや驚異の世界。その出来に少し怖くなってしまうほどでした。
さて自らの身体へ積極的に介在して「生」の在り方を問うオルランの作品は迫力があります。

オルラン「これが私の身体…、これが私のソフトウェア」1993/2007年
彼女は何と自身の整形手術をパフォーマンスして表現、その様子を写真ばかりか映像に記録して配信します。
切除した肉片までを作品にするという試み。展示はもはやグロテスクですらありましたが、美と醜、その境界とは何ぞやということを身体をはって探ろうとする心意気には感心しました。
展示中、最も華やかでありながら、それでいて社会の根底にある問題に切り込んでいたのが、お馴染みのスプツニ子!でしょう。
作品は3点、「菜の花ヒール」、カラスボット☆ジェニー」、そして「生理マシーン、タカシの場合。」です。

スプツニ子!「菜の花ヒール」2011-2012年
黄色の菜の花がうず高く積まれた「菜の花ヒール」。一見、とてもポップな作品ですが、実はこれ、菜の花には放射性物質を吸収する働きがあることに着目し、ヒールの先に種を埋め込んで、歩くと花が咲いていくというアイデアを体現したもの。
美しい黄色の菜の花に潜む放射能汚染の脅威。言うまでもなく、原発事故の惨劇を思い出してなりません。
「生理マシーン、タカシの場合。」はセクシャリティーの問題に切り込んだ意欲作。
女性に憧れる少年タカシへ何と生理の痛みを実際に経験させるパフォーマンス、夜の街に繰り出したタカシの下腹部に激痛が走る様子が映し出されていました。

高嶺格「Ask for aTrade」1993年
来年、水戸芸術館で個展も予定されている高嶺は映像1点。NYで路上生活を行う人々と衣服を交換しながら友人宅を目指すというパフォーマンスを捉えた「Ask for a Trade」(1993)が出品されています。
ラストを飾るのは今年、MOTのブルームバーグ・パヴィリオンでも展示のあった毛利悠子のインスタレーション、「fort-da」(2012)が。

毛利悠子「サーカス」展示風景(参考図版)2012年 東京都現代美術館
PC、楽器、ライト、電線、歯車、ロープ、その他諸々、一見関係ないような機械や道具が、それこそ人体の神経組織を再現するかの如く有機的に連関。
打ち抜いた壁の向こうから滑車を伝ってやってくるロープ。その動きは淡々と、それでいながら永遠に止まることもありません。まるでこのオペラシティという建物に寄生するサイボーグ、機械生物であるかのようでした。
ICCのオープンスペースでは20点以上のメディアアートも。あわせて楽しむのも良さそうです。
久々にICCへ行きましたが、予想以上にはまりました。おすすめ出来ます。
【関連イベント】
・パフォーマンス「模像と鏡像 - 美容師篇」
作・演出:齋藤達也
出演:リプリーQ2(アンドロイド)、小林慎(美容師)
日時:2012年12月15日(土)15時から。
協力:石黒浩(大阪大学大学院教授)
技術協力:小川浩平(大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻特任助教)
・アーティスト・トーク「齋藤達也×石黒浩」
出演:齋藤達也、石黒浩(大阪大学大学院教授,ロボット工学)
日時:2013年1月19日(土)15時より
定員:70名(先着順)
*ともに会場はICC4階の特設会場。入場無料。(展示を観覧する場合は要チケット。)
2013年3月3日まで開催されています。
「アノニマス・ライフ 名を明かさない生命」 NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)
会期:2012年11月17日(土)~2013年3月3日(日)
休館:月曜日。(月曜が祝日の場合は翌日。)。年末年始(12/28~1/4)、保守点検日(2/10)。
時間:11:00~18:00 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般・大学生500(400)円、高校生以下無料。割引クーポン。
*( )内は15名以上の団体料金。会期中1回に限り再入場可。
住所:新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4階
交通:京王新線初台駅東口から徒歩2分。
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