◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「万死に値する」の続き。

2011-08-17 20:43:23 | 気になる言葉、具体例
                                 またキョンシー

 14日に「万死に値する」について書いたところ、「罪万死に価する」という例文が辞書に載っているというご指摘を頂き、続きを書くことにしました。私が使っている辞書には「罪、万死に当たる」しか載っていませんでしたから大変参考になりました。
 さて、手元の辞書によれば、「価」は文語で、値段、代金という意味、「価を取らせる」は「お金を払ってやる」という意味だということで例文が載っていました。「あたい」の意味は、1、表記は「値」、ある物の値打ちに相当する代わりのもの。2、表記は「価」、物事の代価の金銭。値段。賃金。3、表記は「値」、値打ち。4、表記は「値」、ある量を、これと同じ種類の一定の量で測ったときに得られる数。一つの記号が代表する数。運算して得た数。
 それから、「万死」には、「死ぬことが絶対に確実であること」のほかに、「1万回の死刑、逃れられない死罪」という意味もあります(~_~;)コワ~。「罪、万死に当たる」というときの「万死」はこれですね。ということは、「罪万死に価する」の「価する」には、「値打ち」というニュアンスはなく、そういう代償(損害を与えた相手に対して差し出すお金、品物、労力)を払わねばならぬという意味になるようです。
 前回挙げた例文を「価する」で考えてみると、「○○法というのがありまして、この法律違反に価するのではないかということで」「ご自身がどのグループに価するのかご確認ください」「差別に価するようなこと」「除名に価する行動ですね」「厳しい非難に価する」・・・どうですか? これは「当たる」が正解ですね。
 「除名」は、言った本人は「価する」のつもりかもしれませんが、テロップは「値する」でしたからね。「非難」も、判決文という特別なものですから、裁判官は「厳しい非難に価する」と書いたのかもしれませんが、ニュースのテロップはやはり「値する」です。テロップ入力作業者の日本語力たるや、それはもうひどいものですから、意味を考えて「価する」と表記できる人はいないのではないでしょうか。
 私も、大勢の人の話を文章化しましたが、「賞賛に値する」「一見に値する」「注目に値する」「値千金」など、「値打ちがある」という意味で「値する」と書いたことしかなく、「値打ち」という意味を持たない「価する」は書いたことがありません。「代価」「価格」「物価」という意味の「価」なら現代でも通用するでしょうけれど、もはや「価する」は通用しないのではないでしょうか。
 そうなると、「価する」が死語ではないとしても、非常に紛らわしいので「値する」だけにしてほしい、そして、「値打ちがある」という意味でないなら「あたいする」と言ってほしくない、「当たる」と言ってほしい、こう思います。
コメント
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