◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「戻るか、引き上げるか」って?

2023-11-12 09:23:14 | 言葉についてあれこれ
                                   進むか、とどまるか

 報道番組の「戻るべきなのか 引き上げるべきなのか」という訳の分からないテロップ( ̄" ̄)。だって、戻る⇔進む、引き上げる⇔引き下げる、ですからね。○さんは、富士山に一緒に登って遭難した仲間2人を探して発見し、救助を要請。その後、2人とも意識不明になり、○さん1人ではどうにもならず、自力で下山を開始。
 意識不明の2人をそこに置き去りにしたのですが、下手すれば自分も死にかねないわけで、この場合はやむをえないでしょう。そう決意するまでに悩んだことを語ったのが「戻るべきなのか、いてあげるべきなのか」で、「戻る」は下山する、「いてあげる」は下山せずに仲間を見守るということです。
 なぜ「いてあげる」が「引き上げる」になったのか、誰も疑問を感じなかった? ちなみに、別の報道番組では「本当に下りるべきなのか、居てあげるべきなのか」となっていました。「戻る」を「下りる」と書き換えたのは「下山」だと分かるようにと考えたからでしょう。テロップは大事です。
 「リーチをかけてるんだから負けられない」と言っているのに「生死をかけてるんだから負けられない」と書いてあるテロップを見たことがあります ( °°)。もちろん、命を懸けるほどのことではないわけで、原稿を書いた人も作業者も、マージャン用語の「リーチ」を知らないのか?
 「僕が正面なんですけど」というテロップ( ̄д ̄)! ルーレットに出演者6人の名前が書いてあり、ルーレットなので円形、ということは、Aさんから180度ずれた位置に別の人(僕)の名前が書いてあるわけで、「僕がAさんの対面(といめん)なんですけど」と言っています。
 「対面(といめん)」もマージャン用語で、自分の正面に座っている人を指します。「といめん」と入力して変換すると「対面」がちゃんと出てきますよ。「正面」と書いた人は、「対面」を知らないのか、「対面(といめん)」と書くのは面倒だ、「正面」でいいと考えたのか、どっちでしょうね。
 「ワイドナショー」(2021/5/23)で、話し手が「基礎も何もできてない男に」と言ったとき、テロップは「基礎も何もできない男に」でした。たった1文字「て」が抜けただけで違う意味になってしまいました。話し手は「基礎を身につけていない素人」と言っているわけで、「基礎はもちろん何もできない男」と言っているのではありません。
 「めざまし8」(2021/7/27)で「貴重な映像」というナレーションに「貴重な影響」というテロップ、意味不明です。巨大ガンダムとトライアスロンが同じ画面に映ったということで、「影響」は全く関係ありませんから、やはり「貴重な映像」です。テロップの作業者も映像を見ていますよね!?
 「マツコの知らない世界」(2022/9/13)で、マツコが「十分お話しになりましたよ」と言ったときのテロップが「十分お話になりましたよ」って( ̄д ̄)! 「リフレッシュ」(2023/9/19)で見た「~の話し聞いてもいいですか」というテロップ、「~の話」でしょ! 「お話しになり」の「話し」は動詞、「お話」「~の話」「話」は名詞です。
 「めざまし8」(2023/4/7)でムツゴロウさんの話をしていて、坂上忍が「なかなかどうして、まねできない」と言ったのに、テロップは「なかなかどうしてもまねできない」って( ̄д ̄)! 予想外の結果に感心したとき、「なかなかどうして」と言うのですが、聞いたことない?
 ただ、30分後、改めて長めにこのセリフが出たときは「も」が消えて「なかなかどうして」になっていました。前に出たのはなぜ直さなかった? また、ムツゴロウさんが「こうやって見てますとね」と言ったときのテロップが「こうやって見てますとですね」だったのにはあきれました ┐( ̄д ̄)г。
 「世界アニマル動画」(2023/4/11)で、「完全に心を許したわけではない」というナレーションに「完全に心を許していない」というテロップ( ̄д ̄)! 違う意味になっています。短くしたいなら「完全には心を許していない」でしょ、たった1文字で同等の意味にできるのですよ <( ̄д ̄)>。
 「映像の世紀 バタフライエフェクト 満州帝国」(2023/4/19)で見たテロップ、「お話によれば」なのに「お話しによれば」って、名詞は「お話」でしょ。「午前10時頃」と聞こえるのに「午後10時頃」って、映像を見ても明らかに昼間ですから、間違いなく「午前」です。どうした? 徹夜続きか?
 能登で地震(2023/5/5)があり、テレビ金沢の夕方のニュースで、住民が「皆さん道路に出てぼう然としてらっしゃいます」と言ったときのテロップが「みなさん道路に出てあ然としています」でした。災害ですよ、倒壊した家屋の前でぼう然としているのですよ、テロップを見てあ然としました。
 「ガイアの夜明け」(2023/6/12)で見た「泣けます」というテロップ( ̄" ̄)。トルコ大地震の被災地で活動する緊急医療チームの看護師の言葉で、家族を亡くした老女の嘆きに涙したのですよ、私には、はっきり「ちょっと泣いてます」と聞こえました。「泣けます」は違いますよね。
 「あ然」もそうですし、こういうのは、単純なミスというより、この場面に「あ然」「泣けます」はないと感じるセンスがないということです。話し手の様子から伝わってくる自然な日本語を捉えることができない、ちゃんと書けない人たちが大勢いる、これが放送業界の現状です。
 「リフレッシュ」(2023/6/12)で見た「くちばしも違がけりゃ~も…」というテロップ、「違」を「ち」と読めというのか!? カモとハヤブサの見た目があれもこれも違う、「くちばしも違えば」と書くのは簡単ですが「違がけりゃ」は難しいですよ、なのに、なぜ? まさか「違わない、違い、違って、違う、違えば」を知らないのか?
 「カズレーザーと学ぶ。」(2023/6/13)で見た「優位な差がある?」というテロップ、「誤差」ではない「有意な差」です。少し後に「有意な変化」というのも出たので「有意」を全く知らないわけではないようなのに、なぜ「優位な差」と書いたのか、なぜ直さなかったのか。放送業界にはすぐに直すという文化はないのかな <( ̄д ̄)>。
 「サイエンスZERO」(2023/9/24)、「都市構造物への影響」というナレーション、「都市構造物の影響」というテロップ( ̄д ̄)! 地震の都市構造物への影響をスパコンで計算するという話。「への」と「の」とでは意味が逆転しますから、内容をちゃんと分かって書いているのか怪しいですね。
 報道番組(2023/9/25)で浦添市の市長が出演するPR動画を見たのですが、動画のテロップが「今回はばかりは本当にまずい」でした。「はばかり」は「便所」の古風な言い方ですから頭が「?」でいっぱいになりましたが、ナレーションは「今回ばかりは本当にまずい」でした。こういうミスは永遠になくならないのでしょうね <( ̄д ̄)>。

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