當麻寺を一通り参拝した後、塔頭である奥の院に向かう。といっても本堂の裏にある赤い欄干のついた階段を30段ほど登ったところにあるのだが。
當麻寺は真言宗と浄土宗の二つの宗派が共存している珍しいお寺でほかには長野県善光寺くらいしかない。奥の院は元々は浄土宗総本山知恩院奥の院として建立されたお寺で最初は往生院と呼ばれていた。起源は知恩院第二代誓阿普観上人が知恩院のご本尊法然上人像を1370年に還座したもので元々當麻寺とは別の寺であった。浄土宗信仰が高まる中、近畿地方を中心に参詣の人は多かったが、場所が當麻寺の奥に位置していたため、いつの間にか『當麻寺奥の院』と呼ばれるようになったものである。
奥の院で参拝料を払い、本堂にお参りする。その後、寺宝が保管されている宝物館に行く。お坊さんに色々と説明してもらうが、まずは当麻曼荼羅の複製品。
その大きさも見事さにも驚くが、天平時代に織られたものは糸自体に染色し、一針ずつ織り上げられたため、風呂敷ほどの厚さしかなく、大変軽いものであったことを知る。本物も寺で保管されてはいるが、さすがに長年本尊として掲げられていたため、傷みが激しく、とても飾ることができないことなどを教えてもらう。また、最新の技術で当麻曼荼羅をCGで再現したものの公開もこの秋にすると聞いた。
ほかにも二十五菩薩来迎像(室町時代)、弘法大師が日本に持ち帰った経本が入れられていた倶利伽羅龍蒔絵経箱(国宝)、中将姫絵伝(江戸時代)、法然上人行状絵伝(重文)などを見せてもらう。
外に出て少し歩き、浄土庭園に行く。二上山を借景に阿弥陀如来像を中心とした池を配した庭園で浄土の世界を再現しようとしたもの。行く途中にはボタンが植えられ、今はサルスベリのピンクの花が咲き乱れていた。
相変わらずクマゼミの声を聞きながらも心落ち着く奥の院である。