圓成寺にお参りした後、やはり庭園が有名な浄瑠璃寺に向かう。浄瑠璃寺は京都府木津川市にあるが、奈良からの方が近い。この辺りは『当尾の里』と言われ、周囲には鎌倉時代の石仏や石塔、さらに恭仁京跡などからも近い。
バス停の横にある駐車場に車を駐めて歩いて寺に向かうが、途中には陶器や仏像を売る店、無人の農産物をうるスタンドなどもあり、つい、珍しい紫色の唐辛子(シシトウの仲間)を買う。
その先には鄙びた門があり、中に入るとすぐに池が現れる。池を中心に横長の本堂と三重塔が対峙するように配置され、三重塔には瑠璃光浄土にいらっしゃるとされる薬師如来像が祀られている。(秘仏のため見ることはできない。)
この三重塔は1178年に京都の一条大宮から移建したものと言われているが、どの寺院にあったものかは不明。こじんまりとした可愛らしい三重塔である。まずはこの三重塔に御参りをして向かい側を見ると本堂。そこには九体佛が収められている。
池の周りを通り、本堂に行くが、入口には猫が2匹、気持ち良さそうに寝ている。
本堂に入り、戸を開けると中尊に少し大きな阿弥陀如来像(国宝)、他にも8体の阿弥陀如来像(国宝)が並んでいる。これは観無量寿経の『九品往生』の考えに基づくもので、上品上生〜下品下生まで9種の極楽往生の仕方があり、それぞれの阿弥陀が迎えに来るという考えに基づいている。東京の九品仏はそれぞれの印相が異なるが、浄瑠璃寺の場合は中尊が右手を上げ、左手を下げる来迎印、他の8体は腹の前で両手を組む弥陀の定印である。11〜12世紀にはこのような九体阿弥陀堂が数多く造られたが、現存しているのはここだけである。当時の人々は往生する際にこのような阿弥陀如来が迎えに来ると信じて手を合わせたのであろう。
他にも四天王像のうち持国天・増長天(国宝)、また、吉祥天立像が、入れられている厨子が置かれている。
吉祥天立像は決まった日にしか見れない秘仏であるが、是非一度お目にかかりたいものである。(写真は1000円切手に使われた吉祥天立像)
そして、池の周りを歩くが、萩や桔梗が咲き乱れ、改めて見ると全体で極楽浄土を表している庭園は美しい。盛夏で訪れる人も少なく、ゆったり見ることができる夏の古寺巡礼もいいものである。