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平均寿命世界一のコスト

2009-07-20 22:32:12 | 社会・経済

北海道大雪山系の遭難事故は悲惨だった。死者10人は全て中高年登山者だった。ツアーを企画した旅行会社に落ち度があったかどうか、捜査の結果原因が明らかになるかもしれないが、若者ならこれ程の犠牲者数にはならなかったと思われる。

朝日新聞によると統計を取り始めた1961年以降で、08年の遭難者は最多の1933人になったという。特に増えているのが中高年者の遭難で、08年は60歳以上が52%、50代も入れると71%のも上るという。分母が明確では無いが、遭難者の7割が中高年というのは異常だ。

先週、厚生労働省発表で日本人の平均寿命が伸びたとニュースは伝えていた。女性86.05歳、男性79.29歳で夫々世界一、世界4位だという。これを聞いて、正直なところ私は素直に喜べない、複雑な気がした。と言うか、不幸なことに誰も喜んでいないように感じるのだ。

上記の遭難事故は、高齢化社会が払わなければならないコストと言えなくもない。日本の未来は高齢者化社会で、専門家や当局が描く20‐30年後の日本の風景は、希望の無い悲惨な出来事で満ち溢れている。悪いことにその兆しのいくつかは既に現実に起こっている。

例えば、実家のある自治体の交通事故の6割以上は高齢者だ。高齢者は住民の3-4割といったところだから、高齢者の自動車事故の比率は高い。医療費や年金など社会保険費は年々増加し、国家の財政を圧迫しているのは周知の通りだ。しかし、政治・メディアは高齢者におもねるばかりで、若者の将来収入から前借して支出を増やそうとしている。

総選挙を数ヶ月後に控えポピュリズム化した政治環境下で、政治家もメディアも高齢者がお荷物化しているとは舌が裂けても言えないだろう。次の総選挙の争点は総じてバラマキ競争であり、景気対策も社会保険でも何でも、全ては若者に付回ししようとしているように見える。若者世代がタレント知事のように質問状を出したらどういう返事が返るだろうか。

何時の頃だったか、年寄りは世間様のお世話にならないというのが口癖だった。世間のお世話になるのは恥とする風潮があった。謙虚さは失われたのか。少なくともテレビが取り上げるのは、そんな「恥知らずの人達」(失礼!)だけだ。同じ文脈で、近年高齢者の運転で他人に危害を与える事故が増加傾向にあっても、半数は免許証の返上をする気がないと調査結果は示している。

問題の一つは、高齢者の中にもいずれかの形で社会に貢献している人達が沢山いるはずだが、彼らが脚光を浴びエンカレッジされてないことだ。そういう人達を社会全体が評価し勇気付け、最後まで貢献していく高齢者を増やすこと、プラス志向の高齢化社会に向かうきっかけになる。■

コメント (2)
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