かぶれの世界(新)

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

不思議の国ドイツ

2013-12-02 17:29:19 | 国際・政治

 日本はイエレン相場で湧く

 日本株は11月までに15000円を突破し16000円に迫る勢いで上昇し、年初来上昇率51%と米国・ドイツの22%上昇を大きく引き離し世界でも突出した上昇を記録した。欧米の金融緩和で溢れたマネーが日本に向かい株価上昇を演出した、ここに来ての株価上昇は来年就任予定されている新FBR議長の緩和継続を期待するイエレン相場と言われている。一方年前半世界経済をけん引した新興国の株価はマイナス領域に低迷している。

 さて、このブログでは普段滅多に触れることのない欧州の経済情勢、特にドイツについて最近私が感じたことを紹介したい。上記のように欧州危機が一段落し、独仏の経済が水面上に浮上、南欧の財政が改善する兆しを見せ、直近のECBの公定歩合下げが重なり通貨(ユーロ)と株価が急上昇している。とっくの昔に株式投資を止めイエレン相場の恩恵を対岸から指をくわえて眺めていた私だが、ずっと前に塩漬けしたままの欧州株式の信託投資が急に存在感を増してきた。たった数%でも増えれば嬉しいものだ。

 2か月も政権が未定でも揺らがないドイツ

 これがざっくりとした世界の株価情勢だが、欧州で頭抜けて特異な存在のドイツの動向が何かと気になる。先に影響力のある人物としてプーチン、オバマに次ぎメルケル首相が世界第3位に選ばれた。だが、その時彼女の率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は総選挙で第1党の座を維持したが過半数には達せず、惨敗した連立与党(自由民主党FDP)に代わり第2党社会民主党(SPD)と連立協議中でどこまで妥協するかが焦点だった。

 その後連立協議がなり今月半ばには新しく大連立政権が発足する運びとなったが、この2か月間連立政権が未定でもメルケル首相の座は揺らがずドイツは微動だにしなかった。ドイツは不思議な国だなと思った最初に理由がこれだ。ドイツ系のマスコミが何を言っていたのか分からないが、世界のマスコミも騒いだ様子がない。イタリアやギリシャの政権が揺らいだ時は欧州危機再燃の懸念と大騒ぎしたのだが、メルケルの地位は盤石でドイツの不思議なほどの強さを感じた。

 売るだけ売って買わない一人勝ちドイツ

 次に、ドイツの経常黒字が膨らんでいることに対して欧州委員会が調査を実施する方針を先月13日に発表したと報じられた件だ。問題はドイツの貿易黒字が9月に200億ユーロを超え過去最大(今や中国より多)になり、結果的にそれで債務危機のユーロ圏諸国に資金提供したとしても、この突出した一人勝ちに対してドイツは内需を増やしてもっと買え、黒字を減らせという声が周辺国で強まっているという。構造的にドイツ経済はユーロ圏が拡大すると最も大きな利益を売る。

 中国などの新興国経済の減速の一方で欧州経済の持ち直しという背景で、ドイツから欧州域内への輸出が急増しているのが原因だ。だが、ドイツ国民は日本の消費者よりもさらに質実剛健で貯蓄好き輸入が増えず、これが新たな摩擦の種になる恐れがあると私は懸念する。以前かぶれの世界: ドイツが絶対にギリシャを救済なけばならない理由12/5/18)でドイツの成功と表裏一体の関係にあるギリシャを救済すべきと説いたが、今回の欧州委の調査決定はこの延長線上にあると思う。

 EUの構造問題に後ろ向きなドイツ

 3年前に破産状態に陥ったアイルランドの財政再建の努力が実り、ついに今月半ば支援から脱することになった。アイルランド政府が支援要請に追い込まれた直前にEUから支援を受ける調整はついていたが、ストップがかかったと最近明らかになった。ドイツをはじめEU首脳は自国の世論の強い反対を受け支援されなかった。何だかバブル破裂後の日本の住専支援みたいだ。表向きはメルケルが市場と対決姿勢を示し、アイルランドは緊急融資申請発表に追い込まれた。

 各国の経済状態が異なるのに同じ通貨と金融政策に縛られ危機に直面する国がある一方で、そのお蔭で世界最大の貿易黒字を稼ぐ(しかも危機に直面する域内からも遠慮なく)というユーロ圏の構造問題が浮き彫りになった。ユーロ圏にいなければアイルランドはアジア危機後の韓国のように独自の金融政策を取ってもっと早く危機を脱出できたはずだ。

 3年経過した今、アイルランド人の対ドイツ感情は容易に想像できる。アイルランドが支援脱却した今こそ良い機会だと思うのだが、構造問題に積極的に取り組む姿勢を感じないメルケル首相およびドイツ国民にある種の親近感と危惧を感じる。やっぱりドイツと日本は似ている。世界第3位の影響力を持つ首相がいる時こそチャンスのはずなのだが。■

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする