かぶれの世界(新)

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五人囃子

2015-06-25 17:17:16 | 日記
昼食を終わって居間でくつろいでいると、大声でしゃべる近所のオバサン達の声が聞こえて来た。時々隣の家の庭が井戸端会議場になっているので今日もそうかと思ったが、それにしては直ぐ近くで喋っている様に何時もより声高だった。不審に思って台所からサンルームに入りカーテンを開けると、何と近所のオバサン4人が我家の東屋に座り込んでお喋りしていた。

断りもしないで他人の家の庭に入り東屋に座りこんでいた。だが、以前「いつでもどうぞ」と言った覚えがある。ドアを開けて挨拶をすると賑やかな返事が返って来た。彼女達は、最近軽い脳梗塞で医者に診て貰った、裏山で転倒し背中を傷め今年の田植えを見送った、足が弱って家にこもりきりなり見かけなくなった、等々心配な噂を聞いていた80-90代の後家さんばかりだ。元気な返事が返ってきてホッとした。

最近懇意になった班長さんが昨日来て、いつもの様に特別サービスだといって長々と世間話の相手をしてくれた。彼女はこの集落に住む5人の80-90歳代の後家さんを「五人囃子」と言うんだと教えてくれた。普段の彼女達の様子を知っているので、五人囃子と聞いて誰のことか直ぐに分かった。うまい事言うもんだと思った。

東屋の4人に「五人囃子か?」とぬけぬけと聞くと、そうだと悪げもなく返事が返って来た。残りの一人は誰かと聞くと、私が会社勤めの頃に引っ越しして来た方で、顔を見れば分かるかも知れないが良く知らない人だった。そういうあだ名がついているくらいだから、多分気楽に話しできる人なのだろうと思った。

班長さんとの話は延々と続いた。10年後に生き残っている五人囃子の方は多分いない、その頃になると生きていれば僕が彼女達の年代に近づいている頃だ。まだその年齢に到達はしてないが、施設で介護を受けている可能性もある。他に誰が生き残っているのか心配、もしかしたら集落ごとなくなっているかも知れない、等々。どうにも話が陰鬱になってしまった。しかし、今日の五人囃子はあくまで元気だった。

実家で過ごす時間が増えたこの十年余りの間、こんな田舎町なのにスーパーに行くとずっと外国人を見かけるのが気になっていた。班長さんに聞くと中国やフィリピンの女性達だという。男性は見かけたことが無い。彼女がパナソニックに勤めていた頃、現場に外国人の作業者がいたという。パナソニックの工場はとっくに閉鎖したはずだがと聞くと、この辺には複数の縫製工場があって中国人の作業者が働いているという。

中国人女性がこの集落の中年独身男性と結婚して住むようになれば消滅を免れるかもしれないねと言うと、彼女は無反応だった。余り歓迎している様子ではなかったのでその話題は続けなかった。もはや手遅れかもしれない。五人囃子の後もこの集落が存続していくための道は険しい。隣の集落は親が住宅から子育てまで徹底的に支援して子供夫婦が帰って来て人口が増えたという。オバサンはそんなお金はないとすげない返事、諦めているみたいだった。■
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日経平均ITバブル超えと安保法制

2015-06-25 12:05:57 | 社会・経済
日経平均が昨日2万868円をつけ、2000年のITバブル期の高値を上回ったと報じられた。安倍政権が発足以来2倍以上の上昇率になった。一言で言えば「アベチャン、良くやったね」だ。日本株価倍増は安倍首相のリーダーシップによるところが大きい。だが、それは見かけの話で中身はそれほどシンプルではない。

日経新聞は株価倍増を牽引したのは海外マネーだと報じている。従来の米英に加えスペイン、マレーシア、イスラエル、インド等が日本企業の大株主になった。彼等には今後予定されている米利上げによる円安、株価水準の妥当性(PER=17倍)、安倍政権の安定性などが買い材料になっているという。何しろ海外マネーの取引が全体の7割近く、株主の31%以上が海外だという。

ところが、一方で日本の個人投資家はアベノミクスが始まって株価が上昇し始めて以来ずっと売り越しているという。日本経済の先行きを楽観的に見ておらず、今のうちに利益を確定させようということなのだろう。全体としてはそれ以上に海外や年金・生保など国内機関投資家が株を買って株価を上げている。短期売買をしない海外機関投資家の投資のニュースが聞かれるのは心強い、日本企業への期待が伺われる。

それに反して日本の個人投資家が株を売り越したのは、彼等がマーケットを信頼していないのが主な要因だと思う。80年代のバブル、ITバブル、リーマンショックの度に株価は暴落して立ち直れず、それ以来二度と株に手を出さなくなった人が多いと取引先の証券会社の担当に聞いたことがある。再び株式投資を始めた人も極めて用心深くなっていると思う。

私の考えを総括すると、アベノミクスの株高は国内では冷たく扱われている一方、海外勢に熱く支持(今最もホットな市場)されている。これって何だか今話題の「安保法制」と同じように感じる。安倍首相が執念深く進めている安保法制は国内では根強い反対にあっている一方で、マスコミは報じないが海外では期待する声の方が圧倒的に多い。

日本では世界第二次大戦のトラウマが澱のように残っていて、安全保障に関わる政策には異常な(!)想像力を働かせて反対する。PKOのような平和維持活動でさえ戦争に巻き込まれるとして反対論が沸き起こった。今も、民主党は徴兵制復活まで言い始めたと報じられた。

同様に日本の個人投資家は何度も酷い目にあい被ったPTSDが完治せず、株価倍増の小さな儲けのうちに撤退し、儲けの大半を海外に持って行かれている構図になっている。そんな報道は全く聞こえてこないのは、私のひがみなのだろうか。

日本人とか国は先頭に立って返り血を浴びるリスクは負わず、後からついて行く安全な道を歩きオコボレはしっかり頂こうとする。しかし、余りにもオコボレが多過ぎると非難されるので寄付をして回る。株式投資も安全保障も天邪鬼の私にはそんな風に見える。明治維新を振り返れば日本の遺伝的体質ではないのは確かだが。

かくいう私も実はPTSD が完治してない一人だ。日本株を保有せずアベノミクスの恩恵に預かってない。リーマンショックを前後して日本の株式投資からは手をひいた。だが、投資総てを止めなかった。ゼロ金利の銀行口座で退職金を寝かす気にはなれなかった。毎日株価に一喜一憂する生活は老人には無理だった。よりマクロ経済を反映する海外市場の投資信託とか債券に投資した。大儲けはしないが定期預金よりはましだった。

私には小心な腰抜けと狡猾な勝負師の両方の気持ちが分かっている様な気がするのだが。■
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