おはようございます。アドラー心理学に基づく勇気づけの研修(外研修も)とカウンセリングを行う ヒューマン・ギルド の岩井俊憲です。
昨日(10月5日)は、13:30~19:00に第74期 アドラー・カウンセラー養成講座 の7日目を行っていました。
これについては、明日にでもまとめて書きます。
さて、『MIND SET マインドセット ー 「やればできる!」の研究』(キャロル・S・ドゥエック著、今西康子訳、草思社、1,700円+税)からは、勇気づけについても重要な学びを得ています。
第3章の「能力と実績のウソホント」の「危険なほめ方 ― 優秀というレッテルの落とし穴」にこんなことが書かれています。
私たちが勇気づけのつもりで使う言葉が思わぬ結果になることがあるという警告として受け止めていただければ幸いです。
ドゥエックの調査では、8割以上の親が、子どもに自信をつけさせて成績を伸ばすには、子どもの能力をほめる必要があると答えているが、そのことが硬直マインドセットの子どもに有効だろうか、という疑問を持ちました。
そこで、思春期初期の子どもたち数百人を対象に実験を行いました。
まず生徒全員に、非言語式知能検査のかなり難しい問題を10問やらせました。
ほとんどの生徒がまずまずの成績。
終わった後でほめ言葉をかけました。
ほめるにあたっては生徒を2つのグループに分けました(ここからは、本の書き方と少し違うところがあります。
グループ分けした時点では、両グループの成績はまったく等しかったのですが、次の実験をしてみると、
Aグループ(能力群)・・・・その子の能力をほめた。
「まあ、8問正解よ。よくできたわね。頭がいいのね」(有能というレッテルを貼られたことになる)
Bグループ(努力群)・・・・その子の努力をほめた。
「まあ、8問正解よ。よくできたわね。頑張ったのね」(問題を解く努力をしたことだけをほめた)
結果は、
Aグループ(能力群)・・・・硬直マインドセットの行動を示すようになり、次の問題を選ばせると、新しい問題にチャレンジするのを避けて、せっかくの学べるチャンスを逃してしまった。
ボロを出して自分の能力が疑われるかもしれないことは、いっさいやりたがらなくなった。
Bグループ(努力群)・・・・その9割が新しい問題にチャレンジする方を選び、学べるチャンスを逃さなかった。
次に、生徒全員になかなか解けない難問を出したら、
Aグループ(能力群)・・・・自分はちっとも頭がよくないと思うようになった。
Bグループ(努力群)・・・・「もっと頑張らなくちゃ」と考え、解けないことを失敗とは思わず、自分の頭が悪いとも考えなかった。
「生徒たちが問題を解くことを楽しいかどうか」については、問題をうまく解けたあとは、両グループとも楽しいと答えたが、難問を出されたあとは、
Aグループ(能力群)・・・・面白くないと答えた。
自分は頭が良いという評価が崩壊の危機に瀕しているときに、どうして楽しいなんて思えるだろうか。
Bグループ(努力群)・・・・いやになったりせず、むしろ難しい問題の方が面白いと答える子が多かった。
難問が出されてからの問題の出来は、
Aグループ(能力群)・・・・出来がガクンと落ち、その後ふたたびやさしい問題が出されても成績が回復しなかった。
自分の能力に自信が持てなくなり、スタート時よりさらに成績が落ちてしまった。
Bグループ(努力群)・・・・出来はどんどんよくなり、難問に挑戦したことでスキルに磨きがかかり、その後ふたたびやさしい問題が出されたときには、すらすら解けるようになっていた。
ここまでの結論は、次のとおりになります。
この調査は知能検査の問題を用いて行っているので、
◎能力をほめると生徒の知能が下がり、努力をほめると生徒の知能が上がったことになる。
ドゥエックの調査では、もうひとつショッキングな事実が明らかになりました。
生徒全員に「私たちはこれから他の学校に行きます。その学校の生徒に、どんな問題が出たかを教えてあげてください」と言って紙を配りました。
その紙には自分の得点を書き込む欄も作っておきました。
すると、信じがたいことに、
Aグループ(能力群)・・・・生徒の4割近くが得点を高めに偽って書いた。
間違えるのは恥ずかしいことなので、「頭が良い」と言われると、普通の子どもでもウソをつくようになった。
*次回に続きます。
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