見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

「松丸本舗」オープン/丸善・丸の内本店

2009-10-25 20:33:53 | 街の本屋さん
○丸善インフォメーション:丸善×松岡正剛=松丸本舗 松岡正剛氏プロデュースの丸の内本店の中の書店、「松丸本舗」が丸の内本店4階にオープン!(2009/10/23)

 書評サイト『千夜千冊』の執筆者である松岡正剛氏と、丸善が共同プロデュースによる『松丸本舗』が10月23日(金)、丸の内本店4階にオープンした。前日に行われた記者会見で、丸善社長の小城武彦氏は、こんなふうに語っている。

「書店はこれまで、すこしさぼってきました。書店の本の陳列の方法は永く変わってきませんでした。本の形態であったり、出版社名であったり。外形表示にしたがって並べることをずっとやってきました。進化を怠ってきました」

 実際には、そんなことはなくて、本は「社会科学」とか「文学」とか、もっと大きい書店であれば「日本経済」「金融」「格差問題」など、細分化されたジャンルにしたがって並べられている。だが、小城社長の言いたいことはよく分かる。このジャンル別の陳列自体が、うんざりするほど「外形的」なのだ。互いに何の内的な関連性も持たない本どうしが、たまたまタイトルに同じ一語(たとえば「日本」)を有するがために、ミソもクソもごちゃごちゃと並んだ書架は平板で、魅力に乏しい。しかも、全く異なるジャンルの接近遭遇という、楽しいハプニングは絶対に起こりえない。

 図書館の分類別配架も、同じ宿命を背負っているわけだが、書店には、もっと冒険をしてもらいたいと思う。「松丸本舗」は、写真を見ると、ディスプレイにもいろいろ配慮がされているようだ。高さの一定しない書架。押し込まれたり、積み上げられたりした本。管理の悪い図書館みたいだなあ。いや、愛書家の書斎のイメージか。天井まで本でいっぱいだったり、書架と書架の間が狭くて、使いづらそうなのが嬉しい。そうなのだ、本屋や図書館が好きという人間は、一度行って、全てが飲み込めるような、使い勝手のいいところには居着かない。適度に使いづらくて、「私だけが、配列の”内的論理”を理解している」という感覚が味わえるほうが居心地いいのである。

 asahi.comの今日の記事だと、この週末は、かなり盛況の様子。少し人が減った頃に行って見たいと思う。そのときは、4階のカフェで、東京駅に出入りする電車を眺めるのも、この書店の楽しみのひとつ。
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歴史書の隠れた専門店/れきはくミュージアムショップ

2009-07-11 18:05:33 | 街の本屋さん
歴史民俗博物館(千葉県佐倉市)のミュージアムショップ

 なかなか増えない「街の本屋さん」のカテゴリーに久々の投稿。最近、行くたびに感心しているのが、歴史民俗博物館(れきはく)のミュージアムショップにある書籍コーナーである。

 ミュージアムショップは、目立たないが、エントランスホール左手のエスカレーターを下ったところにある。同館のミュージアムグッズにはあまり魅力を感じないのだが(正直ダサい)、併設の書籍コーナーは気合いが入っており、歴史・民俗・人文地理に関する新書・選書・文庫・ムックなど、古いものまでよく揃えている。開館初期の頃に比べて、だんだん書籍の売り場面積が増えてきたんじゃないかと思う。

 さらにエントランスホール右手にも、いつの間にか書籍コーナーが進出してきた。ミュージアムショップが一般歴史書を扱っているのに対して、こちらは、れきはくの刊行物と、全国の歴史系博物館の図録を扱っている。先日、企画展示『日本建築は特異なのか-東アジアの宮殿・寺院・住宅-』(2009年6月30日~8月30日)を見に行ったついでに、この展示図録コーナーをじっくり歩いてみた。全国には、こんな博物館があるのかあ、こんな企画展があったのかあ、という感じで、時間を忘れて楽しめる。いや、売り物をタダ見で楽しんではいけないのだけど、これだけ大量の図録が一覧できる場所は、図書館でも思い当たらない。れきはくの図書室には揃っているのかなあ…。

 この1、2年は、戦国ブームを反映して「武将もの」が人気のようだ。仏像関連も多く見受けられるが、これは、どこでもできる企画ではなくて、力のある学芸員がいないと難しいんじゃないかと思う。

 ところで、れきはくのホームページには、ミュージアムショップおよび図録販売コーナーの情報はほとんどない。この充実ぶり、もっと宣伝すればいいのに、もったいない。
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歴史・時代小説の専門店/時代屋(神保町)

2008-06-22 10:41:44 | 街の本屋さん
○歴史時代書房・時代屋(神保町)

http://www.jidai-ya.com/

 久しぶりに「街の本屋さん」を語ろう。神保町に出たら、見慣れない書店を見つけた。大きな看板に「歴史時代書房・時代屋」とある。そういえば、昨年暮れ、「世の若い女性たち、戦国武将ブーム」と題した記事をネットで読んだ。その記事で、時代劇専門の書店があることも語られていたように記憶する。

 私は、読む本の大半がノンフィクションかエッセイで、小説はほとんど読まない。テレビドラマも見ないはずだった。ところが、4、5年前に中国ドラマの古装劇にハマって、日本の時代劇も面白いと思うようになった。苦手だった日本史もだいぶ分かるようになった。余談だが、最近、2000年の大河ドラマ『葵 徳川三代』の関ヶ原合戦シーンがニコニコ動画に上がっているのを見て、いたく感激している。

 そんなわけで、時代劇に関しては、まだビギナーの自覚があったので、この書店に立ち入っていいものか、ちょっと迷った。たまたま店内にいたのも、おじさん数人だけだったし。勇気を出して入ってみると、時代劇・時代小説だけでなく、本格的な学術書から、エッセイ・マンガ・図録・ムックまで、かなり幅広な品揃えであることが分かった。日本史は古代(源氏物語)から近代(東京裁判)まで。中国史もおまけで扱う。森鴎外とか、硬い文学書もあり。広い意味で、歴史関係の書籍を探すとき、使える本屋さんかもしれない。最近はどこの書店も新刊中心なので、こういう専門書店はありがたい。

 2階は「雑貨と茶屋」という表示にも、興味津々なのに、気後れして、迷ってしまった。しかし、結局、上がってみたら、さまざまな戦国武将グッズが並んでいて、楽しかった。手ぬぐい・Tシャツは、デザインに気合いが入っていて、感心した。帰りがけ、1階で、熱心に三国志の本を見ている制服姿の女子高生を発見。ほんとに若い女性も来るんだなあ。
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図書館より、もっと図書館/ジュンク堂の提言

2007-05-02 23:22:22 | 街の本屋さん
○雑誌『情報の科学と技術』57(4) 2007.4 「特集:図書館への提言」

 とりあえず、言い訳――別に読もうと思って手に取ったわけではなくて、回覧物として職場の机に載っていた雑誌である。ついでに言うと、「重要」として付箋が付いていたのとは全く違う記事に、私は惹き付けられてしまった。

 ひとつは福嶋聡氏の「本と人の出会いの場~書店と図書館」である。著者の名前に記憶はなかったが、「私の所属するジュンク堂書店」という一言を見た瞬間、あ、あのひとに違いない、と思い出した。著書のタイトルも忘れていたけれど、内容は鮮烈な印象に残っている。『劇場としての書店』(新評論 2002.7)の著者である。

 ジュンク堂は「図書館型」の書店と言われるそうだ。ただし、はじめからそうしたコンセプトがあったわけではなく、売れ筋の平積みよりも専門書の品揃えを重視した結果、「天井から床近くまで書籍が並ぶ書棚が林立する」店舗となり、誰とはなしに「まるで、図書館のようだ」と言われ始めたのだそうだ。私は、ジュンク堂のユーザー(というのも図書館用語だな)になって日が浅いが、確かにあの書架には圧倒される。

 著者は「図書館を利用する書店人」であることをカミングアウトしているという。著者によれば、すべての商売において、最も重要なことは、自らが扱う商材をよく知ることだ。「本好き」の書店員でなければ、「本好き」のお客様が本を選ぶ時に快適な空間を形成することはできない。お客様が納得する本の配列はできない。とはいえ、片っ端から本を買うのは経済的にもしんどいし、置き場所にも困るから、効率よく図書館を利用するのだという。

 しかし、「お客様と本との出会いを演出する」図書館など、私は不幸にして経験したことがない。著者に倣って言うなら、私は「図書館を利用しない図書館人」である。圧倒的に書店のほうが好きなのだ。

 著者はいう、「書店の棚に収められた数多くの書物が、訪れた読者を自らの世界に誘い込もうとする。その誘惑を受けとめ、試行錯誤、逡巡の末、自らをその読書体験へと誘い込む書物を選択する、すなわち書店で書物を購入するその瞬間こそ、個々の読書体験の第一歩であり、ひょっとしたら最も決定的な第一歩だとも思うのである」と。本との出会いを「至福の体験」として、こんなふうに熱っぽく語ることのできる図書館員がどれだけいるのだろう。むしろ、いまどきの「常識的」図書館人は、「本(情報)を選択する際の試行錯誤、逡巡」なんて無駄なものは、極力無いほうと思っているフシがある。ほんとは「試行錯誤、逡巡」があり、時に「失敗」や「後悔」があるから(恋愛と同じで)いいのにねー。

 著者も認めているように、図書館には図書館の良さがある。図書館の棚の古さ、書店と図書館との間の宿命的な「時差」(この表現はちょっと素敵だ)は、書物にとって大切なものかもしれない、という。でも、やっぱり、私にとって居心地がいいのは、多くの図書館そのものではなくて、ジュンク堂のような「図書館型」書店の空間である。

 ほか、記事のタイトルだけ挙げると、着地点の見えないデジタル技術への不安を率直に表明した津野海太郎さんの「情報は捨てても本は捨てるな」も読み得。鳥取県知事の片山善博氏の「図書館のミッションを考える」も意外と面白かった。
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大学の本屋さん/東大生協・駒場書籍部

2007-03-15 22:57:35 | 街の本屋さん
○東大生協・駒場書籍部

http://www.utcoop.or.jp/CB/topindex.html

 先週、久しぶりに東大の駒場キャンパスに行った。そうしたら、数年前にできた図書館のまわりが、すっかりきれいになっていた。まず、正門から図書館に向かうと、イタリアントマトCafe Jr.と生協食堂(こっちも明るいカフェテリア風)の間を抜けて、図書館の入口に到達する。

 芝生を挟んで、図書館の向かい側に建った新しい建物を見ると、1階のウィンドウ越しに書架の列が見える。あれっ? 図書館はこっちのはずだが...早くも増築したのかしら。キツネにつままれた思いで近づいてみると、向かいは生協書籍部の店舗だった。図書館の向かいが書籍部って、本好きには夢のようなシチュエーションである。

 しかも、この書籍部、広くて、見晴らしが利いて、気持ちがいい。文庫や新書の品揃えも一般書店並みに充実している一方、ちょっと硬めの教養書や、東大の教員の著書、東大の歴史や大学教育に関する本が豊富なのは、さすが大学生協である。普通の書店では見つからないような本が、堂々と平積みになっているのが嬉しい。生協組合員でないと割引は受けられないが、誰でも買い物はできる。

 惜しむらくは、営業時間がAM11:00~PM6:00と短いこと(4月10日以降はAM10:00~PM7:00)。駒場キャンパスには美術博物館もあって、もうすぐ『創造の広場(ピアッツァ)イタリア』と題した特別展が始まるはずである。そのとき、もう一度、書籍部を探検しつくしてみたいと思っている。
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プロからアマチュアまで/紀伊国屋書店

2006-09-15 22:04:15 | 街の本屋さん
○紀伊国屋書店・新宿南店

http://www.kinokuniya.co.jp/

 しばらく海外に出ていると、留守の間に大きな事件が起こっていないかどうか、気になる。それと同様、私は、何か掘り出し物の新刊が出ていないかも気になる。

 中国旅行から帰ってきた翌日には、まず、新宿ルミネ5階のBook 1st(ブック・ファースト)をのぞいた。ざっと新刊書の棚を眺めて、めぼしい収穫がないことを確認する。ここは足の便がいいので、仕事帰りや買い物途中に、よく利用するが、品揃えには、あまり満足していない。そこで、先週末は、新宿南口のサザンテラスにある紀伊国屋書店(新宿南店)に出かけた。

 紀伊国屋とは、つきあいが長い。悪くない書店だと思う。取り立てて「ここが好き」というポイントもないが、嫌味がない。読書のプロからアマチュアまで満足させる、懐の広い書店である。

 新宿南店は、売り場面積の広さもさることながら、平積みの棚が広いので、新刊チェックには最適である。よそでは平積みの選から漏れる、もしくはすぐに撤退させられそうなタイトルが、堂々と平積みされているのが嬉しい。いつぞや『日本主義的教養の時代』(柏書房 2006)をすばやく発見したのも、ここだった。

 新宿東口の本店は、古い店舗のせいか、ちょっとゴミゴミしていて、どこに何があるのか、分かりにくい。もっとも、その「分かりにくさ」が、リピーターには「私には分かる」満足感を与えてくれるのだ。初心者には少し敷居が高いかもしれないが、老舗の書店らしい雰囲気を失わないでほしいと思う。

 むかし読んだ佐野眞一さんの『だれが「本」を殺すのか 』(プレジデント社 2001)に、紀伊国屋書店の会長・松原治氏のロング・インタビューが載っていた。「本が売れない」時代を迎えて、出版流通関係者のほとんどが悲観的な話しかしない中で、松原氏だけが、際立って自信にあふれていたのが印象的だった。ふーん。この人って満鉄調査部出身で、帰還兵なのか。詳しい自伝も、いつか読んでみたい。

 紀伊国屋書店のサイトで見つけた、下記のイベントも注目。

■第49回新宿セミナー:松岡正剛『千夜千冊』刊行記念トークライブ
http://www.kinokuniya.co.jp/01f/event/shinjukuseminar.htm#seminar_49
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本の森を彷徨う/ジュンク堂書店

2006-08-10 23:02:44 | 街の本屋さん
○ジュンク堂書店(京都店、新宿店)

http://www.junkudo.co.jp/

 先々週、京都に行ったとき、四条通にあるジュンク堂に寄った。むかしは京都の書店といえば丸善だったが、2005年9月に閉店。以来、京都で大型書店に寄りたくなったときは、ここを贔屓にしている。

 ジュンク堂は、比較的、本好きに人気の高い書店ではないかと思う。しかし、東日本には店舗が少ない。本店は池袋だが、池袋は私の生活圏を外れているので、ほとんど行ったことがなかった。2004年、新宿に店舗ができたことに、最近、ようやく気づいて、足繁く通うようになった。

 新宿店は、新宿三越アルコットの7、8Fを占める。初めて店舗に入ったときは、書架の重厚さにびっくりした。いまどき、大学図書館だって使わないような、落ち着いた濃茶の木製書架である。しかも、大人の背丈より高い。お気に入りの書架の間に立つと、ほかのお客とか、キャッシャーとか、広告とか、余計なものが目に入らないので、実に居心地がいい。もちろん、どこかで防犯カメラは監視しているのだろうけど。

 書架の背が高いと、売り場面積あたりの収容冊数が増えるから、当然、品揃えがよくなる。上記のサイトによれば、1,100坪の売り場に常時90万冊の書籍が用意されているという。ふつうの新刊書を探すには面倒くさいだろうが、私のように、マニアックな専門書を漁ることを愉しみとしている読者にはありがたい書店である。

 先週末は、韓国近代史モノを探しに行き、『閔妃は誰に殺されたのか』と『属国と自主のあいだ』を選んで買った。シメて1万円ちょっと。そしたら、併設のカフェで使える400円の金券(コーヒー1杯分)をプレゼントされた。おお、これは嬉しい。チーズケーキをプラスして、一休みして帰った。
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