見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

東博の常設展示から:日本絵画いろいろ

2007-12-14 23:36:34 | 行ったもの(美術館・見仏)
 このところ、秋の特別展ばかり回っていたが、博物館の本当の愉しみは、常設展をゆっくり見ることだと思う。

http://www.tnm.go.jp/

■本館2室(国宝室) 『伝藤原光能像』

 伝源頼朝像、伝平重盛像とともに、日本美術史を代表する肖像画の傑作。京都・神護寺の所蔵で、三幅まとめて『神護寺三像』と呼ばれるそうだ。頼朝像は、神奈川県立歴史博物館で見たことがあって、霊気漂うような写実の迫力に圧倒された。黒目を縁取るような白目の描き方が印象的だった。光能像の目元は、記憶に残る頼朝像とは明らかに違った。赤い唇、太い鼻柱、肉付きのいい首筋など、三像の中では、いちばん貴族的な顔立ちをしている。三像の画像がまとめて見られるめずらしいサイトはこちら

■本館7室(屏風と襖絵)

 伝岩佐又兵衛筆『故事人物図屏風』、長谷川等伯筆『瀟湘八景図屏風』、そして『洛中洛外図屏風』(舟木本)というセレクション。又兵衛の作品は、黒の衣冠束帯姿の人物が、沓を脱ぎ、階を上がりかけたところ。源氏物語の一場面とも、謡曲『住吉詣』とも『蟻通』とも言われるが、よく分からない。ただ、王朝貴族の参内であるべきところ、男っぽい(やや不細工な)表情、力みかえった所作は、敵地に乗り込むヤクザの出入りのように見える。鷹を持つ者、馬を抑える者などの郎党(とは言わないか。随身か)が庭に控える。殿中には姫君が2人。

 『洛中洛外図屏風』(舟木本)は面白いなあ~。見れば見るほど、細部に引き込まれる。歌舞伎小屋に操り小屋。女郎に手を引かれる遊客。若衆に横抱きにされる女。張り店の格子戸の内で客を待つのは少年? 家1軒ほどもある巨大母衣(ほろ)を背負った武将たち(祭礼行列か?)。先頭を行くのは仮面の道化。洋犬を連れた南蛮人もいる。狩野永徳展の『洛中洛外図屏風』(上杉本)に全く近づけなくて欲求不満を感じた皆さん、ぜひこの作品でリベンジを。

■本館特別2室 特集陳列・親と子のギャラリー『版でつくる』

 版画のミニ特集。約束事の多い密教図像(曼茶羅)を正確に作るため、下絵を版木で刷り、彩色を施すことがあったというのを知る。江戸の浮世絵『つれづれ草』は、エンボス加工で白鷹を表した、珍しいもの。ボストンで類例を見て以来である。川瀬巴水『増上寺の雪』の工程(なんと42版の重ね刷り!)を再現したスライドショーは、かなりの見もの。

■本館18室(近代美術)

 久しぶりに今村紫紅の『熱国之巻』が出ていた! うれしい! 感想はそれだけである。展示期間は12/16までかぁ。私は、クリスマスにこの絵を見ることができたら、とても幸福だと思うのに。
コメント
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