見もの・読みもの日記

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凶悪犯との長い戦い/中華ドラマ『漂白』

2025-02-28 23:37:13 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『漂白』全14集(愛奇藝、2025年)

 かなりグロテスクで陰惨な犯罪事件を扱ったドラマなので、万人にお薦めはできないが、私はハマって見てしまった。2002年、雪城市(架空の市、北国っぽい)で猟奇的な殺人事件が発覚する。集合住宅の排水口から発見された人間の遺体の一部。駆けつけた警察官の彭兆林は、不審な男とすれ違うが見逃してしまう。その男、鄧立鋼こそ、バラバラ殺人事件の主犯格だった。

 鄧立鋼、石畢、吉大順、宋紅玉の4人組(男3人、女1人)は、ナイトクラブなどで働く若い女性に声をかけ、監禁して家族から身代金を毟り取った後、女性を殺害して行方をくらますことを繰り返していた。雪城での犠牲者は、それぞれ田舎から出稼ぎに来ていた劉欣源、黄鶯という2人の少女だった。

 同じ頃、雪城市に暮らす真面目な女子高校生の甄珍は、同級生からのいじめに遇い、母親とも衝突して家出してしまう。むかし近所に住んでいた友人を訪ねて南方の灤城市に来てみたが、友人は自分のアパートを別人に貸して、上海の大学に進学していた。行くところのない甄珍は、友人に頼み込んでアパートの部屋をシェアさせてもらい、アルバイトを見つけて生活費を稼ぎ始める。甄珍との同居をしぶしぶ受け入れた本来の借主は邱楓という女性で、甄珍と同世代だが性格は真逆。酒場のホステスをしながら一攫千金を夢見ていた。

 そこへ鄧立鋼ら4人組が灤城市に流れ着く。宋紅玉は邱楓に目を付け、男たちの金回りのよさを見せつけておびき寄せる。ところが、ひとり暮らしだと思った邱楓の部屋を訪ねた宋紅玉は、甄珍に姿を見られてしまう。完璧に証拠を消すため、鄧立鋼らは邱楓だけでなく甄珍も誘拐し、高層アパートの一室に監禁する。

 4人組に強要され、家族に電話をかけて送金を求める甄珍。その電話は、ちょうど甄珍の家を訪ねていた雪城市の警察官たちの知るところになる。直ちに灤城市まで捜査の手が伸びるが、それを知った鄧立鋼は激怒し、甄珍と邱楓の肉体を切り刻んでこの世から消し去る準備を始める。4人組が前祝いの酒宴に興じている間、浴室に閉じこめられた甄珍は水漏れを起こして階下の住人に異変を伝え、小さな天窓から外へ出て、高層アパートの壁伝いに隣室に逃げ込む。警察の助けもあって、なんとか2人は命を取り留めたが、4人組はまたどこかへ姿を消してしまった。甄珍は両親のもとに戻り、邱楓は心を入れ替えて新しい人生を歩み始める。

 2011年、大学を卒業した甄珍は雪城市の警察官となって彭兆林のチームにいた。あるとき彭兆林は、鄧立鋼の弟が病院に現れた噂を耳にする。そこから徐々に現在の4人組の状況が分かってくる。4人は偽名を使い、前歴を「漂白」して綏鹿市に潜んでいた。鄧立鋼はビリヤ-ドとマッサージの店の経営者となり、宋紅玉との間に息子が生まれ、2人は婚姻証明書も手に入れていた。石畢は子持ちの地味な中年女性と結婚し、小さな茶葉店の経営を手伝っていた。吉大順は雑貨店の女主人をたらしこみ、屠畜場で有能な屠畜人として働いていたが、体は末期の癌に犯されていた。

 彭兆林のチームは綏鹿市に乗り込み、ついに4人組を全員逮捕する。しかしここから、彼らに罪を自供させるための戦いが始まる。男たちは罪状を認めたが、宋紅玉は、自分は殺人にかかわっていないと主張。その結果、男たちには死刑が求刑されたが、宋紅玉は無期懲役となった。

 甄珍は、かつての雪城案の被害者・黄鶯が身に着けていたエスニック風のブレスレットを手がかりに、雲南のタイ族の村を訪ね、黄鶯の双子の妹・玉嬌を探し当てる。玉嬌に引き合わされた宋紅玉は取り乱し、殺害を告白してしまう。裁判はやり直しとなり、悪人たちは全て相応の裁きを受けることになった。

 甄珍を演じた趙今麦ちゃん、ドラマ『開端』を思い出したが、本作でも絶対にあきらめない信念と身体を張った頑張りが素晴らしかった。はじめは嫌な感じの邱楓(方圓圓)は、おバカなんだけど根はいい子で、幸せになってくれてよかった。彭兆林役の郭京飛さん、すっかり渋い俳優さんになったねえ。

 本作のおもしろさは、凶悪犯の4人組にも、それぞれ悪事に手を染めた事情があったり、家族のしがらみがあったりすることを丁寧に描いているところだと思う。特に任重さんの演じた石畢は、人付き合いが下手で、稼ぎが悪いとガミガミいう妻を衝動的に殺してしまい、鄧立鋼に死体の始末をしてもらったところから悪の道に踏み込む。しかし後年の偽装結婚では、平凡な妻と連れ子と穏やかな日々を過ごし、彼らの幸せを願って死刑場に赴く。社会への憎悪をエンジンに生きている宋紅玉(王佳佳)も貧乏ゆえに舐めた辛酸が根っこにあり、悪人だけど同情を感じた。


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