〇五島美術館 館蔵『中国の陶芸展』(2025年2月22日~3月30日)
漢時代から明・清時代にわたる館蔵の中国陶磁器コレクション約60点を展観する。同館は、この数年、春先は『中国の陶芸展』というスケジュールが定着しているようだ。私は昨年は見逃したが、一昨年は見ている。特に新しい作品は加わっていないが、名品が何度見ても新鮮なので問題ない。
午前中で、まだお客が少なかったせいか、展示室が広々して気持ちよかった。展示ケースの床には黒いビロードのような布を敷き、白い四角形のベース上に展示品を置く。壁にはバナーや説明パネルの掲示が一切ない。展示室全体が黒と白のシンプルなしつらえなので、展示品の色がとても映える気がした。冒頭の『瓦胎黒漆量』(戦国時代)の艶やかな黒茶色もよいし、展示順としては最後にあたる『茶葉末瓶』(乾隆年製銘)の渋い深緑色にも目を奪われた。解説によれば、「茶葉末釉」というのは鉄釉の一種で、ほぼ茶色(褐色)に見えるが、乾隆年間のものは、緑がかっているので、水から出たばかりの蟹の甲羅の色になぞらえて「蟹甲青(かいこうせい)」と呼ぶのだそうだ。
入口近くの単立ケースには、いつものとおり『青磁鳳凰耳瓶(砧青磁)』(南宋時代)と『白釉黒花牡丹文梅瓶(磁州窯)』(宋時代)。前者は、あまり日本では見ない、スケールの大きいどっしりした青磁瓶、後者は黒の面積が大きいところがお洒落なんだと思う。今季のチラシ・ポスターは、この梅瓶を白とピンクで表現し、黄色の文字を添えるというモダンアートみたいなデザインで、とても気に入っている。
前回気になった『月白釉水盤(鈞窯)』が出ていることを確認。今回は『青磁鉢(龍泉窯)』(明時代)に目が留まった。口径28.5cmというデカさだが、かたちは普通のどんぶりなのだ。解説によれば、箱の貼紙(誰が書いたんだろう)に「鉄鉢」「丼」「深鉢」とあり、鉄鉢とは托鉢僧が使う鉢の意味だという。しかし持ち歩くには重そうで、やっぱり仏前の供え物に使ったのではないかと思う。
コレクションの後半は、明時代・景徳鎮窯のやきものが大半を占める。青花あり、五彩あり、赤絵・祥瑞あり。豪華な金襴手は、確かに素晴らしいのだけど、ああ台湾の故宮や国立歴史博物館でも見たな、と思ってしまった。むしろ赤絵や祥瑞のゆるい魅力こそ日本のコレクションの神髄なのではないかと思う。『青花蜜柑形水指(祥瑞)』に描かれたサルとシカ、大好きだ。
第2展示室は館蔵「日本の名刀」特集。展示ケースの床に畳を敷き、刀掛け台を白い布で覆い隠した展示方法がおもしろかった。私は刀剣は全く分からないのだが、直刃の『短刀(銘・國光)』の姿にはちょっと惹かれた。