見もの・読みもの日記

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行き交う民族/シルクロード 文字を辿って(京都国立博物館)

2009-07-22 23:12:55 | 行ったもの(美術館・見仏)
京都国立博物館 特別展覧会『シルクロード 文字を辿って-ロシア探検隊収集の文物-』(2009年7月14日~9月6日)

 日曜の午後、肌を刺すような強い日差しを避けて、博物館に逃げ込んだ。本展は、ロシア科学アカデミー東洋写本研究所が所蔵する西域出土資料の展覧会。時代は4世紀から12世紀にわたり、漢文・西夏語・コータン語・トハラ語・ソグド語など、コータン・クチャ・カラシャール・トルファン・敦煌・カラホトで発見された資料を中心に、優品約150件を展示する。と聞いて、西域(→地図)好きの私は、おお!と心が躍ったのだが、たぶん一般的には地味に感じられる企画だろう。

 展示構成は出土地別となっていて、最初がコータン(ホータン)。昨今、何かと物騒な新疆ウイグル自治区の南西部に位置する。私は、10年以上前に1度だけ、旅行会社のツアーに乗って、新疆地区を訪ねたことがある。タクラマカン沙漠縦断バスツアーは、過酷だったけど楽しかったなあ…。さて、ホータン地区の展示資料は、貝葉形の紙本墨書が多く、ウサギの糞みたいな、コロコロしたサンスクリット文字が目立つ。文字はサンスクリットでも、言語は「サンスクリット」であったり、「コータン・サカ語」であったりする。古いものは1-2世紀、新しいものは7-9世紀の文書。于闐(うてん)国と呼ばれた仏教王国の時代に重なるようだ。

 次のクチャ・カラシャール・トルファンは、いずれも西域北道に位置するオアシス都市。クチャ語(文字はブラーフミー文字)、ソグド語(マニ文字)、ウイグル語(ウイグル文字→横書も縦書もある)、さらに漢文、サンスクリット、それらの混在文書など、今も昔も民族と文化の交差路であることを感じさせた。敦煌はやはり漢文が主。しかし、きちんと整った経典や行政文書ばかりでなく、手習いや心覚えの抜書きなど、生身の人間の存在を感じさせる資料が多くて、面白かった。

 最後がカラホト。定番シルクロードを少し外れた内蒙古自治区に位置する。私がいちばん見たかった西夏文字文献がぞろぞろと展示されていて、いたく感激した。日本はもちろん、中国でも、こんな多数の西夏文字を目にするのは初めてのことだ。しかも、西夏文字バージョンの『論語』『孫子兵法』『貞観政要』などが存在することに驚く。そこには、民族の自尊と、文化の交流・融合の2つの側面が見て取れるような気がした。

 なお、この難しい展覧会を子ども向けに解説したリーフレット「シルクロードの文字を探検しよう!」は労作。大人も、これを読むと理解が深まる。また、関連特集展示「中国の写本と版本」も優品多数。京都の寺院が所蔵するものが多くて、私のような関東人には、とても珍しかった。

 18時の閉館放送に促されて、外に出ようとしたら、バケツの底が抜けたような土砂降り。先ごろ、南門スペースにオープンしたインフォメーションセンター(18:15まで)で、小降りになるのを待つ。限定品に弱い私は、旅の途中だというのに、京都国立博物館限定グリコ「お菓子詰め合わせセット」(税込840円)を買ってしまう。それぞれ異なる絵葉書1枚がおまけに入っているので、好きな箱を選び取るシステム。あとで開けてみたら、私の選んだものには三彩馬の絵葉書が入っていた。できすぎ(笑)。

↓ネタバレですが、中身はこんな感じ。

コメント
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