滋賀県内の3つの美術館・博物館が連携する企画『神仏います近江』を見てきた。
■MIHOミュージアム 秋季特別展『天台仏教への道-永遠の釈迦を求めて-』(2011年9月3日~12月11日)
たまたま乗った新幹線が、MIHOミュージアム行きバスと接続がよい時間だったので、最初にMIHOに行くことに決めた。石山駅から同じバスに乗車したのは数人。残念ながら、一昨年の若冲展みたいな熱気はない。仏像ブームと言っても、騒がれるのは一部のスター仏だけなんだな、と思う。
冒頭の僧形坐像。灰色の砥石のような質感だが、木造だという。説明に「唐代」とあって、中国ものか!とびっくりする。「善願寺」も分からなかったが、調べたら京都・醍醐寺の南にあるお寺。同じく「唐代」の彦根・千手寺の僧形坐像と、大きさ・造りがよく似ているため、県外から出品になったのだと思う。西明寺の『仏涅槃図』(南北時代)には真っ赤な顔のニホンザルを発見。中国にはいない筈(?)だから、涅槃図が日本化した基準にならないかな、などと考える。
善勝寺の千手観音像立像は、つぶれた団子に目鼻をつけたような異相。顔の左右に大きな面を伴い、向かって右の面は、大きく口を開け、牙を見せる。背後にも顔があるのかしらと疑ったが、図録の解説を読んだら「三面千手」という形式だそうだ。善勝寺は粟東市の"金勝寺文化圏"にあって、無住のお寺らしい。こういう拝観の難しいお寺の仏像を見せていただけるのは、本当にありがたいと思う。
善水寺のふっくらした金色の誕生釈迦仏は、何度か見たもので懐かしかった。西教寺の薬師如来立像は、ざくざくと彫り込んだ背中がよかった。「右手で納衣をつまむ」という特徴ある薬師像が3体あり、うち1体(岐阜・横蔵寺)は墨書によって、入唐僧・最澄とのかかわりが判明している。ん? 同様のポーズを取る渡唐天神図をどこかで見なかったかしら。何か関係があるのかもしれない。
同展は、仏像・仏画・文書などを幅広く集めて展示しているが、掘り下げかたは、いまひとつな感じだった。図録を見ると仏画のいいものがたくさん載っているが、モノによっては10日間程度しか出ない。出品総点数は100件以上だが、1回に見られるのは、その半数程度。う~ん…絵画の公開期間が短いのは仕方ないのかなあ。
■滋賀県立近代美術館 特別展『祈りの国、近江の仏像-古代から中世へ-』(2011年9月17日~11月20日)
初訪問。近代美術館の特別展なので、さらっと見られるだろうとタカをくくっていたら、展示室に入って、ぎゃっと声が出そうになった。見渡す限り、ストイックなまでに仏像だらけなのだ。出品リストによれば、約60件。仏画とか文書は一切なし。
また、キャプションボードの解説が至れりつくせりだった。冒頭、所蔵先の寺院について「長浜の市街地の東郊に建つ神照寺」「天台宗の古刹で湖東三山の一つ西明寺」のごとく、簡単に言及し、仏像の来歴、技法、見どころなどを記す。スタイルが統一されていて、事実に即し、措辞も中庸を得ていて、すごく読みやすかった。
気になった仏像の第一は、米原・惣持寺の木造天部形立像。目をむき、口を大きく開けて吼えている。これは仏像の範疇ではなくて、荒ぶる山の神、樹木の神そのものに見える。でも横顔は鼻筋が通っていて、角度によっては意外と美形だ。
仏師・経円との関係が想定される、愛荘町・仏心寺の聖観音像と地蔵菩薩像(矢取地蔵)は、どちらも腰高でスマートな立像。八頭身以上あるのではないかと思った。愛荘町・常照庵の不動明王二童子像もいい。やや生硬な静止ポーズに力みなぎる不動明王もいいし、個性的な表情の二童子もいい。この辺り、行ったことのない寺院が多いなあ、と思う。
園城寺の金剛力士二像も、常照庵の不動明王に通じる点がある。大げさに身体を反らせたりひねらせたりはしていないのだが、破綻なく、バランスが取れている。筋肉が苦痛にゆがんでいる感じがない。閉館時間ぎりぎりまで粘って、うっとり見ていた。
■MIHOミュージアム 秋季特別展『天台仏教への道-永遠の釈迦を求めて-』(2011年9月3日~12月11日)
たまたま乗った新幹線が、MIHOミュージアム行きバスと接続がよい時間だったので、最初にMIHOに行くことに決めた。石山駅から同じバスに乗車したのは数人。残念ながら、一昨年の若冲展みたいな熱気はない。仏像ブームと言っても、騒がれるのは一部のスター仏だけなんだな、と思う。
冒頭の僧形坐像。灰色の砥石のような質感だが、木造だという。説明に「唐代」とあって、中国ものか!とびっくりする。「善願寺」も分からなかったが、調べたら京都・醍醐寺の南にあるお寺。同じく「唐代」の彦根・千手寺の僧形坐像と、大きさ・造りがよく似ているため、県外から出品になったのだと思う。西明寺の『仏涅槃図』(南北時代)には真っ赤な顔のニホンザルを発見。中国にはいない筈(?)だから、涅槃図が日本化した基準にならないかな、などと考える。
善勝寺の千手観音像立像は、つぶれた団子に目鼻をつけたような異相。顔の左右に大きな面を伴い、向かって右の面は、大きく口を開け、牙を見せる。背後にも顔があるのかしらと疑ったが、図録の解説を読んだら「三面千手」という形式だそうだ。善勝寺は粟東市の"金勝寺文化圏"にあって、無住のお寺らしい。こういう拝観の難しいお寺の仏像を見せていただけるのは、本当にありがたいと思う。
善水寺のふっくらした金色の誕生釈迦仏は、何度か見たもので懐かしかった。西教寺の薬師如来立像は、ざくざくと彫り込んだ背中がよかった。「右手で納衣をつまむ」という特徴ある薬師像が3体あり、うち1体(岐阜・横蔵寺)は墨書によって、入唐僧・最澄とのかかわりが判明している。ん? 同様のポーズを取る渡唐天神図をどこかで見なかったかしら。何か関係があるのかもしれない。
同展は、仏像・仏画・文書などを幅広く集めて展示しているが、掘り下げかたは、いまひとつな感じだった。図録を見ると仏画のいいものがたくさん載っているが、モノによっては10日間程度しか出ない。出品総点数は100件以上だが、1回に見られるのは、その半数程度。う~ん…絵画の公開期間が短いのは仕方ないのかなあ。
■滋賀県立近代美術館 特別展『祈りの国、近江の仏像-古代から中世へ-』(2011年9月17日~11月20日)
初訪問。近代美術館の特別展なので、さらっと見られるだろうとタカをくくっていたら、展示室に入って、ぎゃっと声が出そうになった。見渡す限り、ストイックなまでに仏像だらけなのだ。出品リストによれば、約60件。仏画とか文書は一切なし。
また、キャプションボードの解説が至れりつくせりだった。冒頭、所蔵先の寺院について「長浜の市街地の東郊に建つ神照寺」「天台宗の古刹で湖東三山の一つ西明寺」のごとく、簡単に言及し、仏像の来歴、技法、見どころなどを記す。スタイルが統一されていて、事実に即し、措辞も中庸を得ていて、すごく読みやすかった。
気になった仏像の第一は、米原・惣持寺の木造天部形立像。目をむき、口を大きく開けて吼えている。これは仏像の範疇ではなくて、荒ぶる山の神、樹木の神そのものに見える。でも横顔は鼻筋が通っていて、角度によっては意外と美形だ。
仏師・経円との関係が想定される、愛荘町・仏心寺の聖観音像と地蔵菩薩像(矢取地蔵)は、どちらも腰高でスマートな立像。八頭身以上あるのではないかと思った。愛荘町・常照庵の不動明王二童子像もいい。やや生硬な静止ポーズに力みなぎる不動明王もいいし、個性的な表情の二童子もいい。この辺り、行ったことのない寺院が多いなあ、と思う。
園城寺の金剛力士二像も、常照庵の不動明王に通じる点がある。大げさに身体を反らせたりひねらせたりはしていないのだが、破綻なく、バランスが取れている。筋肉が苦痛にゆがんでいる感じがない。閉館時間ぎりぎりまで粘って、うっとり見ていた。