見もの・読みもの日記

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清朝の繊細/住友コレクションの中国絵画(泉屋博古館)

2011-10-15 22:35:46 | 行ったもの(美術館・見仏)
泉屋博古館 『住友コレクションの中国絵画』(2011年9月3日~10月23日)

 大津をあとに京都へ移動すると、道路が大混雑でバスが動かない。ああ、やっぱり連休中日の京都は避けるべきだったな…と、うんざりする。でも仕方ない。何度も見ている住友コレクションの中国絵画だが、「関西中国書画コレクション展」の一環として、やっぱり見ておきたかった。

 入口のポスターを見て、にんまり。大好きな八大山人の『安晩帖』、この日は、まさにポスターの「猫図」の公開日だった。これ分かりにくいけど、白黒ぶちなんだろうか、それとも2匹重なっているのかしら。『安晩帖』の箱書も展示。桑名鉄城の墨書あり。



 本展では、よく見るとキャプションボードの枠が「住友春翠コレクション」「住友寛一コレクション」「内藤湖南コレクション」に色分けされている。『安晩帖』を含め、精神性の高い、独特の明清絵画コレクションを形成したのが住友寛一(1896-1956)。確か、会場の説明ボードには「病弱だったため、事業に適さずとして、絵画収集に専念した」とあって、富豪の坊ちゃんはいいな~と思ったのだが、いまネットで調べると「絵画に傾倒したため廃嫡され」云々ともある。

 石濤の『黄山八勝図冊』は温泉の図が開いていて、楽しそうだった。漸江『竹岸蘆浦図巻』とか龔賢『山水長巻』とか、中国絵画とは思えないくらい、人間の臭いのしない、荒涼・静謐・清潔な風景が描かれている。伝・辺文進『鳩図』は初めて見た。水盤の水に顔を半分まで埋めて、しかし目は開いたまま、水を飲む鳩の図。可笑しいが、ちょっと怖い。岸田劉生旧蔵品で、劉生の死後、夫人の依頼により、寛一が譲り受けたのだそうだ。

 住友春翠(15代当主友純、1865-1926)は、コレクションを見る限り、大らかな実業人で、沈銓(沈南蘋)の『雪中遊兎図』など、華のある彩色の大幅は、来客をもてなすために使用された。一方で、周之夔『渓澗松濤図』などは、茶人としての繊細な趣味があらわれているように思う。現存作例はほとんどないが、浦上春琴はじめ、日本の文人に愛玩された画家だという。

 内藤湖南は、春翠の青銅器収集の助言役(そうだったのかー)をつとめたが、書画収集には関与しなかった。ただ、湖南自身のコレクションは、没後、住友家に寄贈された。解説に、帝大教授の収入では、高価なものは購入できていない、みたいなニュアンスのことが書いてあって、ちょっと笑った。そりゃ、住友家の財力と比べたら、お話にならないでしょ~。

 夜は、また友人と落ち合って、堀川御池近辺で夕食。写真、京都産の「あまない」無糖梅酒。



 この日は奈良に行って来たという友人から「2011秋冬版 巡る奈良 祈りの回廊:秘宝・秘仏特別開帳」のパンフレットを譲り受ける。気になる情報がいろいろある。今年の秋は、奈良はパスするつもりだったのに…。
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