○若菜晃子『地元菓子』(とんぼの本) 新潮社 2013.5
橋本麻里さんの『変わり兜』を買おうと思って、隣りを見たら、この本が置いてあった。表紙は、水に浸かったカエルの卵みたいな、白いお椀(杯)に入った葛まんじゅうの群れ。あ、小浜の葛まんじゅうだ、と思って、中を見たら、懐かしいお菓子の写真が並んでいる。見たことがある、ない、に関わらず、とにかく「なつかしい」小さなお菓子ばかり。
そして、若菜晃子さんの名前には見覚えがあった。暮らしの手帖別冊『徒歩旅行』の文章を書かれていたライターさんだ。気負わず、気取らず、控えめだけど芯のある、清々しい文章を書かれる方だと記憶していたので、本書も買ってしまった。
巻末の「お店一覧」に並んでいる名前掲は、ざっと120店ばかり。でも、おそらくもっとずっと多いお店の店頭や商品の写真が掲載されていると思う。私が訪ねたことのある街は少なく、知っているお店や商品はさらに少ない。だって、観光ガイドに載ったり、都会のデパートの物産店に招かれるような銘菓でない、その地域の住人にだけ愛される「地元菓子」の写真を、著者は大切に撮り集めているのだ。まさに一期一会のお菓子ばかり。
途中に挟まれた1頁エッセイ「ドロップ」や「お汁粉」になると、どの街のどのお店の話なのかさえ、曖昧模糊として分からない。それなのに、不思議と共通体験を掘り起こされる気がする。
上品な干菓子、「擬似洋風」の昭和な洋菓子もいいけれど、いちばん食べたいと思ったのは、伝統的な餅菓子だ。やっぱり巡礼街道の神社や仏閣の門前で売られているものがおいしそう。丸めたり、延ばしたり、焼いたり。葉っぱに載せたり、くるんだり。中は小豆餡が最高。
久しぶりに、ああ、この国に生まれてよかった、という素直な感慨を持った。
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そして、若菜晃子さんの名前には見覚えがあった。暮らしの手帖別冊『徒歩旅行』の文章を書かれていたライターさんだ。気負わず、気取らず、控えめだけど芯のある、清々しい文章を書かれる方だと記憶していたので、本書も買ってしまった。
巻末の「お店一覧」に並んでいる名前掲は、ざっと120店ばかり。でも、おそらくもっとずっと多いお店の店頭や商品の写真が掲載されていると思う。私が訪ねたことのある街は少なく、知っているお店や商品はさらに少ない。だって、観光ガイドに載ったり、都会のデパートの物産店に招かれるような銘菓でない、その地域の住人にだけ愛される「地元菓子」の写真を、著者は大切に撮り集めているのだ。まさに一期一会のお菓子ばかり。
途中に挟まれた1頁エッセイ「ドロップ」や「お汁粉」になると、どの街のどのお店の話なのかさえ、曖昧模糊として分からない。それなのに、不思議と共通体験を掘り起こされる気がする。
上品な干菓子、「擬似洋風」の昭和な洋菓子もいいけれど、いちばん食べたいと思ったのは、伝統的な餅菓子だ。やっぱり巡礼街道の神社や仏閣の門前で売られているものがおいしそう。丸めたり、延ばしたり、焼いたり。葉っぱに載せたり、くるんだり。中は小豆餡が最高。
久しぶりに、ああ、この国に生まれてよかった、という素直な感慨を持った。