見もの・読みもの日記

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若冲ファン必携/雑誌・芸術新潮「オールアバウト若冲」

2015-04-27 22:55:32 | 読んだもの(書籍)
○雑誌『芸術新潮』2015年4月号「祝!生誕300年大特集・オールアバウト若冲」 新潮社 2015.4

 もう次の号が出ている状態でいまさらなのだが、やっぱり書いておこうと思う。伊藤若冲生誕300年を期しての特集号。考えてみると、芸術新潮が若冲を正面切って取り上げるのは初めてじゃないかと思う。少なくとも、この10年くらいの間では。表紙は、サントリー美術館で公開中の『象と鯨図屏風』(MIHOミュージアム)から白象の部分で、さわやかモノトーン(アクセントにターコイズブルー)でまとめている。

 ところがまあ、中を開けると濃い。しばらく『動植綵絵』の局所拡大図(絹本の目がはっきり見えるくらいの)が続く。ニワトリの頭部、梅と月、白いオウム、雪の中の小禽。妥協のない技、豪奢の極み、緊張感の連続は、満漢全席の趣きである。特に、今まであまり感銘を受けたことのなかった「梅と月」(梅花皓月図)は拡大図を見て、ものすごく感銘を受けた。闇に溶け込むように輪郭線だけで描かれた蕾と花びら。蕾の薄皮が割れる瞬間にだけ、輝く純白の花びらが覗いている。咲きこぼれる梅花は、黄色の雄蕊の中に青(ターコイズブルー)が散らされている。必ず五本あるところを見ると萼(がく)なのかな? この配色の美しさ。

 それから『紅葉小禽図』は、リアルなようで「紅葉の向きが全て同じ」という装飾的な絵空事(琳派みたいだ)の空間で、裏彩色の技法によって、1枚1枚の色調に変化をもたせている。しかし1枚だけ「裏彩色を用いていない」紅葉があり、それが枝を離れて宙を舞う1枚だけの紅葉という凝りよう。特殊な墨色の肌裏紙を入れることで成り立っている『紫陽花双鶏図』に一般的な生成り色の仮裏を入れると印象が一変してしまうなど、『動植綵絵』の秘密が徹底的に解き明かされていて面白い。語り手は、三の丸尚蔵館の太田彩さんとMIHO MUSEUMの辻邦雄館長。

 格調高い名品『乗興舟』が縮小サイズながら全編収録されているのも嬉しい。国文学の池澤一郎先生が解説をつけているが、これは江戸の漢詩文趣味が分からないと、鑑賞できたことにならないだろうなあ。忘れてならない若冲の墨絵については、小林忠先生が楽しそうに語っている。ということで、若冲ファンなら、必ず買っておきたい1冊。

 あと既読の『かわいい仏像 たのしい地獄絵』が紹介されていたのも嬉しく、泉屋博古館で開催中の小川千甕展は、記事を読んで、ぜひ見に行こうと思った。
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