○日本橋三越本店ギャラリー 『茶の湯の継承 千家十職の軌跡展』(2016年8月31日~9月12日)
茶道の家元・三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)それぞれの好みの茶道具を制作する十の職家を「千家十職」という。ずいぶん前に、どこかの展覧会で覚えた言葉だ。茶道具には多少の興味があるので、軽い気持ちで行ってみた。会場に入ると、すごい賑わいで、ちょっとうんざりしかけたが、冒頭から利休ゆかりの楽茶碗が出ているというので、お!と俄然、集中する。いずれも長次郎作の黒楽茶碗。
人波の後ろから覗き込んだので、展示順とは逆になるが、『万代屋黒(もずやくろ)』(楽美術館蔵)は、利休の娘婿の万代屋宗安に伝わったもの。土のせいか、使い込んだせいなのか、かなり黄色味を帯びている。そのまま土に返ってしまいそう。『しころ引』(裏千家)はやや大きく、厚みを感じ、肌はつややか。『禿(かむろ)』は、幅に比べて少し丈が高く、細めの印象。凝縮された黒色で、つやがない。
さらに長次郎作の黒楽茶碗『玄翁』(個人蔵)とか赤楽茶碗『住之江』(個人蔵、あまり赤くない)などが、続々と登場する。いや、棗や水指など、ほかの茶道具も展示されているのだが、私の注意力は、完全に楽茶碗にロックオンされてしまった。赤楽茶碗『聖(ひじり)』(個人蔵)は歪み、亀裂などを平然と取り込んだ大胆な造形で、舌を巻いた。長次郎焼とされているが、二代目・常慶の典型作と解説されている。三代目・道入(ノンコウ)は、長次郎の茶碗に比べると、別物のように華やかだな~。黒釉を二か所だけ四角く抜いた(黄抜け)『寿老人』(個人蔵)オシャレでいいわ! 光悦の赤楽茶碗『青顧(せいこ)』(個人蔵)は、青海苔みたいな緑釉を散らしている。
楽家は千家十職の一であるから、取り上げられていて当然なのだが、こんなにたくさん、しかも「個人蔵」の茶碗を見ることができて、本当に貴重な機会だったと思う。以後も四代・一入の『遠山』(個人蔵)、五代・宗入の『三井晩鐘』(表千家蔵)など、当代=十五代吉左衛門に至るまで、個性豊かな歴代の茶碗が出品されていた。
あらためて千家十職を挙げておくと、永楽家(土風炉・焼物師)、楽家(楽焼・茶碗師)、大西家(釜師)、飛来家(一閑張細工師)、土田家(袋師)、中村家(塗師)、黒田家(竹細工・柄杓師)、奥村家(表具師)、駒澤家(指物師)、中川家(金物師)となる。見ていて魅了されたのは、茶の湯釜の造形。大西家歴代の茶の湯釜を展示する「大西清右衛門美術館」という施設があるのか。今度、行ってみなければ。独創的で目を離せなかった『鶴ノ釜』は、同館ホームページのトップにも掲載されている。大西家の釜と永楽家の風炉の組み合わせも絶妙。それから、袋師の土田家の組み紐工芸みたいなものも面白かった。
なお、展覧会会場の外では『茶美×和美の世界』と題して、交趾焼など新作の茶道具の即売会が行われており、本館1階の中央ホール(巨大な天女「まごころ」像の下)では、近代巨匠(魯山人、濱田庄司など)の茶道具展示会が行われていて、本展とあわせて楽しめた。
茶道の家元・三千家(表千家・裏千家・武者小路千家)それぞれの好みの茶道具を制作する十の職家を「千家十職」という。ずいぶん前に、どこかの展覧会で覚えた言葉だ。茶道具には多少の興味があるので、軽い気持ちで行ってみた。会場に入ると、すごい賑わいで、ちょっとうんざりしかけたが、冒頭から利休ゆかりの楽茶碗が出ているというので、お!と俄然、集中する。いずれも長次郎作の黒楽茶碗。
人波の後ろから覗き込んだので、展示順とは逆になるが、『万代屋黒(もずやくろ)』(楽美術館蔵)は、利休の娘婿の万代屋宗安に伝わったもの。土のせいか、使い込んだせいなのか、かなり黄色味を帯びている。そのまま土に返ってしまいそう。『しころ引』(裏千家)はやや大きく、厚みを感じ、肌はつややか。『禿(かむろ)』は、幅に比べて少し丈が高く、細めの印象。凝縮された黒色で、つやがない。
さらに長次郎作の黒楽茶碗『玄翁』(個人蔵)とか赤楽茶碗『住之江』(個人蔵、あまり赤くない)などが、続々と登場する。いや、棗や水指など、ほかの茶道具も展示されているのだが、私の注意力は、完全に楽茶碗にロックオンされてしまった。赤楽茶碗『聖(ひじり)』(個人蔵)は歪み、亀裂などを平然と取り込んだ大胆な造形で、舌を巻いた。長次郎焼とされているが、二代目・常慶の典型作と解説されている。三代目・道入(ノンコウ)は、長次郎の茶碗に比べると、別物のように華やかだな~。黒釉を二か所だけ四角く抜いた(黄抜け)『寿老人』(個人蔵)オシャレでいいわ! 光悦の赤楽茶碗『青顧(せいこ)』(個人蔵)は、青海苔みたいな緑釉を散らしている。
楽家は千家十職の一であるから、取り上げられていて当然なのだが、こんなにたくさん、しかも「個人蔵」の茶碗を見ることができて、本当に貴重な機会だったと思う。以後も四代・一入の『遠山』(個人蔵)、五代・宗入の『三井晩鐘』(表千家蔵)など、当代=十五代吉左衛門に至るまで、個性豊かな歴代の茶碗が出品されていた。
あらためて千家十職を挙げておくと、永楽家(土風炉・焼物師)、楽家(楽焼・茶碗師)、大西家(釜師)、飛来家(一閑張細工師)、土田家(袋師)、中村家(塗師)、黒田家(竹細工・柄杓師)、奥村家(表具師)、駒澤家(指物師)、中川家(金物師)となる。見ていて魅了されたのは、茶の湯釜の造形。大西家歴代の茶の湯釜を展示する「大西清右衛門美術館」という施設があるのか。今度、行ってみなければ。独創的で目を離せなかった『鶴ノ釜』は、同館ホームページのトップにも掲載されている。大西家の釜と永楽家の風炉の組み合わせも絶妙。それから、袋師の土田家の組み紐工芸みたいなものも面白かった。
なお、展覧会会場の外では『茶美×和美の世界』と題して、交趾焼など新作の茶道具の即売会が行われており、本館1階の中央ホール(巨大な天女「まごころ」像の下)では、近代巨匠(魯山人、濱田庄司など)の茶道具展示会が行われていて、本展とあわせて楽しめた。