見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

カミとほとけの姿(岡山県立博物館)+尾道浄土寺ご開帳、他

2016-09-22 20:30:49 | 行ったもの(美術館・見仏)

岡山県立博物館 特別展『カミとほとけの姿-岡山の信仰文化とその背景-』(2016年9月9日~10月16日)

 三連休中日は岡山からスタート。本展は、彫刻を中心に岡山を代表する宗教美術を紹介するもので、展示替えを含め64件を展示。近年は、こうした展覧会がさまざまな地域で開かれていて、仏像好きにはたいへんありがたい。もっとも、滋賀(近江)や島根(出雲)と違って、岡山と聞いて思い浮かぶ仏像は全くなかったのだけど、とりあえず来てみた。

 受付で「2階から始まります」と教えられる。2階の2部屋と1階の2部屋、要するに常設展示を全て取っ払って、館内全てをこの特別展に使っているらしい。2階の第1展示室は「仏の造形」で15点あまり。倉敷・安養寺の小さな誕生仏像(天平時代)と銅造の如来立像(白鳳~天平)は例外として、平安時代の古仏がけっこうある。整っていて美しいなあと感じたのは、岡山市・明王寺の観音菩薩立像。腰から下の裳と弧を描く天衣の表現がリズミカルで華やか。つぶれたお団子みたいな頭髪の結い方もかわいい。

 第2室は神像。壁に沿った展示ケースには、小さな坐像が並んでいたが、中央に大人の背丈ほどの大きな男神像一対があった。津山市・高野神社(たかのじんじゃ、美作国二宮)の随身立像である。どこで見たのか思い出せなかったが、調べたら、2013年の『国宝 大神社展』で見ていた。随身門に安置されていたものというが、めったな気持ちで門をくぐれないくらい、厳しい顔をしている。

 1階に下り、第3室は浄土信仰を背景にした中世の造形。各時代の仏画も楽しめた。第4室は密教仏。曼荼羅、十二天像など絵画が中心だが、真庭市・勇山寺の巨大な不動明王と二童子像(平安時代)には圧倒された。彫刻としてはバランスが悪く、顔つきも悪相だが、異様な迫力がある。展示図録はいちおう買って帰ったが、もう少し詳しい解説がほしかった。

大本山 浄土寺(広島県尾道市)秘仏御本尊・十一面観世音菩薩御開帳(秋期:2016年9月18日~11月20日)

 開創1400年と平成の大修理完成を記念して、今年は春と秋にご開帳が行われている。本来、ご本尊は33年に一度の開扉で、近年のご開帳は2001年4月13日~15日とのこと。かなり本格的な秘仏である。私が訪ねたのは秋期ご開帳の初日で、午前中は開扉式が行われていたらしく、まだ本堂の外陣に白い布が敷いてあったり、落ち着かない雰囲気だった。机を据えただけの拝観受付で、おばさんが「えっと、本堂と阿弥陀堂と宝物館のセットで○○円、庫裏と庭園(?)を加えると○○円」と早口に説明してくれたので、安い方のコースを選択。本堂のご本尊は小さなお厨子に収まり、幕(戸帳)を左右に分けて中央を開けただけなので、正面に立たないとお姿が見えない。しかし、内陣のお厨子の前まで行けるので、じっくり拝観することはできた。

 平安初期の端正な十一面観音立像。右手は胸の前で水瓶を持ち、長い左手は体の側面に垂らしている。どちらの手も指先に流れる音楽のような表情があって美しい。顔つきにあまり人間味が感じられない(超越的である)のと対照的だ。曖昧な記憶なのだが、もとは左手に錫杖を持つ長谷寺式の十一面観音だったという説明がお堂の中にあったような気がする。

 廊下伝いに隣りの阿弥陀堂に入って、阿弥陀如来坐像(平安末期)を拝観。それから別棟の宝物館に入る。各種の聖徳太子像などがあったが、一番面白かったのは、巨大な仏涅槃図。鎌倉時代の作だというが、集まった動物や鳥の表情が、どことなく蘆雪の画風に似ている感じがした。カピバラにしか見えない動物がいたのだが、イノシシだったのかしら…。



 そのあと、え?ここが道?というような細道に迷い込む古寺めぐりコースをたどって、駅まで戻った。

徳川美術館 特別展『ザ・ベスト@トクガワ』(2016年9月15日~11月6日)

 三連休最終日は名古屋。「ザ・ベスト@トクガワ」とは大きく出たな、と思った。徳川家康(1543-1616)没後400年の記念企画かな?と思ったが、ホームページを見ると、特にそのような趣旨は掲載されていない。よく分からない展覧会である。まあしかし、確かにいつもより名品が多いかなと感じた。無準師範筆『達磨図』(中央)『政黄牛』『郁山主図』三幅対が揃って出ていたり。高麗仏画の地蔵菩薩像(被帽地蔵菩薩)や朝鮮の活字本、『河内本源氏物語』(鎌倉時代、完本として最古のもの)、徳川家康所用の『保元物語・平治物語』など。

 一番びっくりしたのは、岩佐又兵衛筆『豊国祭礼図屏風』右隻(豊国神社社頭における田楽猿楽の奉納)が出ていたこと。8月に福井県立美術館で見た作品とこんなに早く再会するとは! 後期(10/12~)は左隻に展示替えらしい。ほかにも近世の風俗画は『歌舞伎図巻』『遊楽図屏風(相応寺屏風)』『本多平八郎姿絵屏風』と充実していた。『平家物語図扇面』は、根津美術館所蔵の作品を思い出した。唐物漆器のミニ特集も楽しい。しかし、メイン会場が蓬左文庫の展示室で、本館(第7~9展示室)が2017年1月下旬まで耐震補強工事で閉室中なのは、やっぱり数量的に物足りない。早く工事が終わってほしい。

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