見もの・読みもの日記

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いつか見た風景/怪しい駅、懐かしい駅(長谷川裕)

2018-03-09 22:48:34 | 読んだもの(書籍)
〇長谷川裕、村上健『怪しい駅、懐かしい駅:東京近郊駅前旅行』 草思社 2013.8

 先日、旅行に出かける前の羽田空港で見つけて(書店ではなくセレクトショップみたいなお店)、荷物になるのでその場では買わなかったが、気になったので、結局、別の書店で探して購入した。東京周辺の16駅を訪ねて、駅の成り立ちや鉄道の歴史、現在の見どころを紹介する鉄道エッセイである。写真はないが、写真よりも雄弁な、村上健氏の水彩スケッチも見どころ。

 取り上げられている駅は、(西東京編)東横線・祐天寺、井の頭線・神泉、東横線/目黒線・田園調布、大井町線・九品仏、山手線・目黒、副都心線・渋谷、(東東京編)東武伊勢崎線・東武浅草、総武線・両国、山手線・鶯谷、東武大師線・大師前、京成押上線・京成立石、(郊外編)中央線・相模湖、都電・旧葛西橋停留所、西部多摩川線・是政、青梅線・奥多摩、青梅線・白丸。

 私は東京生まれ、東京育ちなので、だいたいどの駅も知っている。とはいえ、親しみを感じる度合いはいろいろである。私は総武線沿線の生まれなので、両国駅の章は興味深かった。両国駅がターミナル駅として賑わった時代を、私は少し記憶している。「昭和57年のダイヤ改正で両国駅始発の急行列車はおおかた姿を消し、さらに6年後にはすべての長距離旅客列車の定期運行が廃止」されたのだそうだ。でも、天井の高い、ターミナル駅らしい姿の駅舎が私は今でも好きだ。今のコンコースには、なぜか長谷川と三重ノ海という二人の力士の優初額が掛かっているのを私も覚えているが、かうては歴代優勝力士の額がずらりと並んでいたのだそうだ。そうだったかなあ。もうよく覚えていない。

 渋谷駅は、取り上げられているのは副都心線だが、地上の渋谷駅の風景スケッチが添えられている。現在(2013年)の風景と、昭和36年(1961)頃の風景が添えられているのが面白い。東急渋谷駅のシェル型屋根は昭和39年(1964)にできたものなのか。それ以前の風景はさすがに覚えていない。でも、東急渋谷駅が「ターミナル」でなくなってしまったことは本当に残念。銀座線の高架線は「日本の近代コンクリート建築の権威」阿部美樹志(1883-1965)の手になるもので、立派な産業遺産だというのは初めて知った。また、東急百貨店は、渋谷に集まるあらゆる交通機関を飲み込むように増築・成長したというのも興味深い。さすが五島慶太。

 鶯谷駅の周囲が「聖と俗の大パノラマ」だというのはよく分かる。子規庵も書道博物館も、ラブホテル街に埋もれているものなあ。「三業地」の名残を残す神泉駅も同じ。台湾料理の「麗郷」や名曲喫茶「ライオン」もスケッチが懐かしかったが、今でもあるのだろうか。

 郊外の駅は、たぶん遠足や家族旅行で1回くらい行っていると思うのだが、あまり記憶にない駅が多かった。相模湖駅や奥多摩駅、たまには遠出して、駅舎を見て「駅前散歩」をするのもいいかもしれない。
コメント
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