見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

葛井寺の千手観音/仁和寺と御室派のみほとけ(東京国立博物館)

2018-03-04 22:48:52 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館 特別展『仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-』(2018年1月16日~3月11日)

 すでに前期を参観した展覧会だが、は後期(2/14-)から大阪・葛井寺の秘仏・千手観音菩薩坐像がお出ましになったので、仏友たちとともに再訪してきた。土曜日、朝9時過ぎに行ってみると、すでに正門の前に黒山の人だかり。友人が8時半頃から並んでくれたので、かなりいい位置をキープして入場することができた。開館時間に先立って、列を崩さぬように平成館の前まで誘導されたが、9時半には、終わりが見えないくらいの長い列ができていた。

 一番見たいものは「葛井寺の千手観音」で意見が一致していたので、2階に上がると、ほかのお客さんとは逆方向に向かい、第二会場の出口から入場する。我々以外にも、同じ行動をとるお客さんが何組かいた。福井・中山寺の馬頭観音、兵庫・神呪寺の如意輪観音、徳島・雲辺寺の千手観音と脇侍仏など、前期と同じ秘仏がいらっしゃるのを確認しながら進むと、円形に区切られた、ステージのような広い空間に、葛井寺の千手観音がいらした。

 第一印象は、記憶より小さな像でとまどった。像の迫力のせいで、この倍くらいある巨像のイメージがあったのだ。天平仏らしい、茫漠としてつかみどころのない表情。こんなに近くに寄って拝観するのは、もちろん初めてのことだ。頭上面の一つ一つが、かなり個性的で表情豊かであることに気づく。千本の小さな手も一様でない。指先を一本だけ曲げているもの、二本曲げているもの、全て伸ばしているものなど、よく見るとさまざまである。前期に買って帰った図録の解説をあらためて読んでみたら、小さな腕は千一本あるそうだ。正面で合掌する手も含め、大きな手は四十本。会場のパネルには持物があらわす意味や、失われた持物の可能性など、面白い解説もあったが、図録には収録されていなくて残念。

 会場では、もちろん背面にもまわってみた。左右の脇手をそれぞれまとめる、二本の柱のような板が台座から立っていて、金具でつながれていた。けっこう舞台裏っぽい仕掛けを見てしまった。柱の間に見える観音のうなじから背中のラインはなだらかで美しかった。脇手は、だいたい縦一列に積み上げられたように重なっていている。ただし左右とも肩から上のあたりは、この縦のラインがかなり崩れているようにも見えた。面白いのは、左右とも再背面の一列の脇手は、腕の長さがわりと短い。たぶん正面から見ると、全く見えない存在だと思う。

 しばらく至近距離で細部を眺めつくしていたが、あらためて少し引いて、全体を視野に入れてみた。すると左右の脇手の厚みが、背面までぐるりと覆っているような錯覚を感じた。舞台裏を見てしまっても、この像の魅力に変わりはないようだ。

 それから第二会場を逆コースで進んだ。開館から1時間くらいすると、だんだん人が流れてきて、第二会場が混み始めた。観音堂の再現コーナーでは、ヘンな壁画を見つけて、いろいろ勝手な解釈を言い合って楽しんだ。第一会場には、小さな秘仏・仁和寺の薬師如来坐像がいらしていた。光背にくっついた脇侍とか七仏とか、台座を囲む十二神将とか、技が細かい。あとは京博の『十二天像』が「毘沙門天」「伊舎那天」に変わり、『信西古楽図』が場面替え(雑技の図)になっていたのもよかった。仁和寺の『普賢十羅刹女像』(鎌倉~室町時代、髪型が唐風)とか金剛寺の『五秘密像』など面白いものもあったが、絵画・書跡はやっぱり前期のほうが各段によかった。

 会場を出た後、平成館・考古展示室で『和歌山の埴輪-岩橋千塚と紀伊の古墳文化-』(2018年1月2日~3月4日)をざっと覗いた。『両面人物埴輪』と『翼を広げた鳥形埴輪』が面白かった。紀ノ川流域には約850基の古墳が分布しているとは、全く知らなかった。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする