〇大津市歴史博物館 湖都大津十社寺・湖信会設立60周年記念・日本遺産登録記念企画展(第77回企画展)『神仏のかたち-湖都大津の仏像と神像-』(2018年10月13日~11月25日)
昭和33年(1958)に大津市内の観光社寺により発足した湖信会(※ホームページあり)の設立60年と、平成27年(2015)に「琵琶湖とその水辺景観-祈りと暮らしの水遺産-」が文化庁の「日本遺産」に認定されたことを記念する企画展。仏像・神像・書画など約50点が展示されている。
全国の仏像ファンが誰でも知っているような、国宝級のスター仏はいないのだが、地域に根付いた多様な信仰のありかたが窺える、面白い展覧会だった。展示キャプションが非常に詳しく、仏像の形態的な特徴のどこを見れば何が分かるかが、非常に勉強になる。明らかに仏像ファンに向けて書いてくれていると思う。思わずメモしてしまったのは「(立像の)裙(くん)を引きずる表現は13世紀前半から」「裙のあわせめが背面に来るのは快慶工房のくせ」「(体の前で)U字にかかる天衣が膝下にあるのは平安後期以降」「装飾的な臂釧(ひせん、腕輪)は10世紀によくみられる」など。そこに注目すると時代が分かるのかーというのが興味深かった。できるだけメモしてきたが、どうやら全て図録に収録されてるので、これからじっくり読もうと思う。
展示には、1年に1日しか公開されない安楽寺の薬師如来坐像(平安時代)、12年に一度、数日しか公開されない法楽寺の薬師如来坐像(平安時代)、西教寺客殿の薬師如来坐像(白河天皇が建立した法勝寺から移されたもの)などの「秘仏」も含まれる。もちろん初めて拝見した。
「これは見たことがある」と確実に分かったのは、園城寺(三井寺)の訶梨帝母倚像。しかし、訶梨帝母の子供のひとりと思われる愛子像は知らなかった。「お母さ~ん!もっとかまってくださいよ」というキャプション見出しに笑った。ちなみに、楽しいキャプション見出しも全て図録に収録。延暦寺の維摩居士坐像(西域人っぽい)は、先日『至宝展』で見られなかったもので嬉しかった。それから、京都八瀬・妙傳寺の弥勒菩薩半跏像がいらしていた。しれっと「朝鮮三国時代」と紹介されていたが、泉屋博古館で見た『仏教美術の名宝』展によれば、もとは江戸時代の仏像と思われていたものである。
延暦寺の不動明王立像と四明王像(鎌倉時代)は、ソツなく整った造形。同じく延暦寺の四天王立像は「現在は国宝殿に安置」とあったので『至宝展』で見たものかなあ、と首をひねったが、違うみたい。安楽寺の四天王立像は、素朴な造形で親しみやすい表情。「よろいがぱっつぱつなのは、10世紀頃の流行です」という解説に笑った。確かにぱっつぱつで動きにくそうな四天王像っているなあ。
仏画も非常によいものが出ていたことは特筆しておきたい。立木山安養寺の『仏涅槃図』(室町時代)は多くの弟子・動物が精緻に描かれている。隅のほうに白黒ぶちの猫もいる。新知恩院の『阿弥陀二十五菩薩来迎図』(鎌倉時代)は、体をくねらせてノリノリで踊る菩薩たちが楽しい。心なしか往生者(武士)も嬉しそう。石山寺の『文殊菩薩像』(南北時代)は、劣化のせいもあるが金身の文殊菩薩があやしい。延暦寺の『普賢延命菩薩像』(南北朝時代)も金身・二十臂の普賢菩薩で、不思議な色彩感覚の仏画。石山寺の『愛染明王像』は赤と金を基調に、力ある者を豪奢に描いたストレートな迫力が、鎌倉時代らしさを感じさせる。神像は建部大社の女神像をはじめ10点ほど。全体に怖いのだが、表情のあるものもあった。
併設の大津市制120周年記念企画展(第76回企画展)『60年前の大津』(2018年10月2日~11月25日)も駆け足で参観した。大津市には縁もゆかりもないのだが、何度も来ているので、写真に残る風景が懐かしい。特に琵琶湖文化館の屋上のトンボが光を放っている光景には驚いた。
昭和33年(1958)に大津市内の観光社寺により発足した湖信会(※ホームページあり)の設立60年と、平成27年(2015)に「琵琶湖とその水辺景観-祈りと暮らしの水遺産-」が文化庁の「日本遺産」に認定されたことを記念する企画展。仏像・神像・書画など約50点が展示されている。
全国の仏像ファンが誰でも知っているような、国宝級のスター仏はいないのだが、地域に根付いた多様な信仰のありかたが窺える、面白い展覧会だった。展示キャプションが非常に詳しく、仏像の形態的な特徴のどこを見れば何が分かるかが、非常に勉強になる。明らかに仏像ファンに向けて書いてくれていると思う。思わずメモしてしまったのは「(立像の)裙(くん)を引きずる表現は13世紀前半から」「裙のあわせめが背面に来るのは快慶工房のくせ」「(体の前で)U字にかかる天衣が膝下にあるのは平安後期以降」「装飾的な臂釧(ひせん、腕輪)は10世紀によくみられる」など。そこに注目すると時代が分かるのかーというのが興味深かった。できるだけメモしてきたが、どうやら全て図録に収録されてるので、これからじっくり読もうと思う。
展示には、1年に1日しか公開されない安楽寺の薬師如来坐像(平安時代)、12年に一度、数日しか公開されない法楽寺の薬師如来坐像(平安時代)、西教寺客殿の薬師如来坐像(白河天皇が建立した法勝寺から移されたもの)などの「秘仏」も含まれる。もちろん初めて拝見した。
「これは見たことがある」と確実に分かったのは、園城寺(三井寺)の訶梨帝母倚像。しかし、訶梨帝母の子供のひとりと思われる愛子像は知らなかった。「お母さ~ん!もっとかまってくださいよ」というキャプション見出しに笑った。ちなみに、楽しいキャプション見出しも全て図録に収録。延暦寺の維摩居士坐像(西域人っぽい)は、先日『至宝展』で見られなかったもので嬉しかった。それから、京都八瀬・妙傳寺の弥勒菩薩半跏像がいらしていた。しれっと「朝鮮三国時代」と紹介されていたが、泉屋博古館で見た『仏教美術の名宝』展によれば、もとは江戸時代の仏像と思われていたものである。
延暦寺の不動明王立像と四明王像(鎌倉時代)は、ソツなく整った造形。同じく延暦寺の四天王立像は「現在は国宝殿に安置」とあったので『至宝展』で見たものかなあ、と首をひねったが、違うみたい。安楽寺の四天王立像は、素朴な造形で親しみやすい表情。「よろいがぱっつぱつなのは、10世紀頃の流行です」という解説に笑った。確かにぱっつぱつで動きにくそうな四天王像っているなあ。
仏画も非常によいものが出ていたことは特筆しておきたい。立木山安養寺の『仏涅槃図』(室町時代)は多くの弟子・動物が精緻に描かれている。隅のほうに白黒ぶちの猫もいる。新知恩院の『阿弥陀二十五菩薩来迎図』(鎌倉時代)は、体をくねらせてノリノリで踊る菩薩たちが楽しい。心なしか往生者(武士)も嬉しそう。石山寺の『文殊菩薩像』(南北時代)は、劣化のせいもあるが金身の文殊菩薩があやしい。延暦寺の『普賢延命菩薩像』(南北朝時代)も金身・二十臂の普賢菩薩で、不思議な色彩感覚の仏画。石山寺の『愛染明王像』は赤と金を基調に、力ある者を豪奢に描いたストレートな迫力が、鎌倉時代らしさを感じさせる。神像は建部大社の女神像をはじめ10点ほど。全体に怖いのだが、表情のあるものもあった。
併設の大津市制120周年記念企画展(第76回企画展)『60年前の大津』(2018年10月2日~11月25日)も駆け足で参観した。大津市には縁もゆかりもないのだが、何度も来ているので、写真に残る風景が懐かしい。特に琵琶湖文化館の屋上のトンボが光を放っている光景には驚いた。