見もの・読みもの日記

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建築物で知る台湾/台湾へ行こう!(藤田賀久)

2018-11-28 23:55:54 | 読んだもの(書籍)
〇藤田賀久『台湾へ行こう!:見えてくる日本と見えなかった台湾』(スタディーツアーガイド 1) えにし書房 2018.10

 今年も年末に台湾へ行く計画を立てている。2泊3日のショートツアーだから、見られるものは限られているのだが、そろそろガイドブックでも買おうと思っていて、この本を見つけた。豊富なカラー写真と、一般の観光ガイドでは見たことのない珍しい建物・史跡の数々が気になって購入を決めた。

 実際に読んでみたら、冒頭に「台湾の至る所に残る『過去の日本』に気づけば、日本と台湾の深い結びつきに足を止めたくなります」という一節がある。私は、過去の日本と台湾の深い結びつきを見つけることが、いつも嬉しく懐かしいとは思わない。時には胸の痛みを感じさせるものもある。それから台湾の魅力も、日本との結びつきが全てだとは思わない。基本は中華文化圏だし、原住民文化もあるし、南島文化圏の一部とも捉えられるし、台湾にはいろいろな顔がある。そのように理解した上で、台湾に残る「日本の痕跡」に私は興味を持つ。

 本書は、台北・台中・台南・嘉義・高雄に金門島まで、台湾全土にわたって、日本統治時代と関係する建築物を紹介する。現在の中華民国総統府が旧・台湾総督府であるなど、台北の官庁街に日本統治時代の建築物が集まっているのはよく知られたところ。全く知らなかったのは、たとえば国立中正紀念堂の裏手から大安森林公園までのエリアに、和風建築が多く残っていること。リノベートされた和風レストランや和風喫茶店もあるそうだ。ほかにも西門街の近くには、西本願寺派台湾別院があった場所に日本風の鐘楼が再建されているとか、MRT剣潭駅の近くに圓山水神社の碑と石灯籠が残っているとか、興味深い。

 もっとすごいのは桃園神社で、台湾で唯一社殿が残っている。写真を見ると、日本のどこかの風景にしか見えない。「台湾に残る神社の足跡」には、九份の金瓜石黄金神社(行っていない)や台南の林百貨店の屋上にある末廣社(ここは行った)などが紹介されている。まあしかし、旧統治時代の神社については、荒廃するにせよ復元されるにせよ、現地の人たちに任せてそっとしておくのがいいんじゃないかと思う。

 なお本書には、日本統治とあまり関係のない建築物も混じって紹介されている。台北でいえば、清代の街並みである剥皮寮(ポーピーリャオ)。まあ台湾全土が日本統治時代を経験しているので、この剥皮寮も日本統治とまるで無関係とは言えないのであるが。台南の鄭成功祖廟や安平のゼーランディア城、高雄の鳳山旧城の説明も詳しい。近代の史跡では、桃園に蒋介石・経国父子の眠る両蒋文化園区がある。かつては台湾中に蒋介石像が建てられていたが、次第に嫌われるようになった彫像が各地から集められ、現在219体が展示されているという。これ、木下直之先生はご存じだろうか? ぜひルポを書いてもらいたい。
コメント (2)
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