〇奈良国立博物館 わくわくびじゅつギャラリー『いのりの世界のどうぶつえん』(2019年7月13日~9月8日)+特集陳列『法徳寺の仏像-近代を旅した仏たち-』(2019年7月13日~9月8日)+名品展
『いのりの世界のどうぶつえん』は、夏休み企画の子供向け展示だろうとあなどっていたら、展示品がすごいと聞いて、慌てて見に来た。確かに鎌倉時代の『普賢十羅刹女像』(和装の羅刹女)や『春日鹿曼荼羅』など重文クラスがふつうに出ている。平安時代の『一字金輪曼荼羅』はよく見ると画面が獅子だらけで笑ってしまった。
立体では、鹿形埴輪(浜松市博物館)を初めて見た。文殊菩薩騎獅像(文化庁、平安時代)は、やさしいわんこ顔の獅子で、高知・竹林寺の獅子を思い出した。いつも奈良博の常設展(仏像館)で会うのを楽しみにしている、頭上に動物を載せた十二神将立像(東大寺、平安時代)も出ていて、一部の像はお腹にも動物が表現されていることに初めて気づいた。牛頭天王坐像(松尾神社、平安時代)は、右手に鉾を執り、片足を下ろして岩座に座る。右手には鉾。ほぼ同じ大きさの顔を前後左右の四面持つ尊像である。頭上には>牛の首(細面で馬っぽい)を戴く。
摩利支天坐像(大阪・高槻市立しろあと歴史館、江戸時代)もめずらしくて面白かった。まるまるした7頭のイノシシの上に座る尊像。しかしイノシシが全て頭を外側に向けて円陣を組んでいるので、これ動き出したらどうなるんだろう?と余計なことを考えてしまう。
最後に『辟邪絵』の「栴檀乾闥婆」「神虫」「毘沙門天」と『沙門地獄草紙』の「沸屎地獄」。ゆるふわの「どうぶつえん」と思わせて、こんなものを出す根性がすごい。いちおう周囲を囲って別室にしてあったのは、怖い絵を見たくなければ見ないですむよう配慮したのだろうか。
『法徳寺の仏像』の法徳寺は、奈良市十輪院町に位置する融通念仏宗の寺院だが、本展で紹介するのは、近年ここに寄進された約30躯の仏像で、「かつてひとりの実業家が収集した仏像」とだけ説明されている。飛鳥時代の銅造観音菩薩立像、興福寺千体仏と呼ばれる木造菩薩立像20躯など。平安時代の地蔵菩薩立像は、若々しくおだやかな美形。これも興福寺伝来だという。
仏像以外は見る機会の少ない名品展も充実していた。絵画では、西大寺の『十二天像』(伊舎那天・日天・月天)を見ることができて満足。と思ったら、8/20-9/23の名品展は「東アジアの宗教絵画」の特集で、マニ教絵画3点(個人蔵)が出ることを把握してしまった。加えて陸信忠に高麗仏画。これは見に行かなければ…。