見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2023年6-7月展覧会拾遺

2023-08-07 20:30:04 | 行ったもの(美術館・見仏)

 気がついたら、たくさん書き落としていたので、覚えているものだけでも。

東京ステーションギャラリー 『大阪の日本画』(2023年4月15日~6月11日)

 3月に大阪で見た展覧会だが、また見てきた。再会した作品もあり、初めて見る作品もあった。冒頭には北野恒富が後期だけで9作品来ていて圧倒的だった。悪魔的で妖艶な女性もあり、清純な乙女もあり。四天王寺の聖霊会や浪速天神祭など、大阪の風俗を描いた菅楯彦、生田花朝の作品も、東京で眺めると、エキゾチックな旅情を掻き立てられる。

鎌倉国宝館 特別展『仏画入門-はじめまして!仏教絵画鑑賞-』(2023年5月13日~7月2日)

 おなじみの作品ばかりだろうと思って行ったら、そうでもなかった。「密教系」「禅宗系」「浄土教」などのカテゴリーに分け、絵画は約30件を展示。建長寺の絹本著色『水月観音像』(南宋~元時代)はウェディングドレスのような純白の衣に青い髪をなびかせる。見た記憶はあるが(宝物風入れ?)珍しかった。円覚寺の『五百羅漢図』(元時代)は仏画を掛けて供養する場面のようだった。みんな品のいいおじいちゃんで、恐ろしい異形の羅漢は見当たらなかった。光明寺の『阿弥陀二十五菩薩来迎図』(鎌倉時代)は、豊頬・赤い唇の母性的な阿弥陀さま。画面のところどころに、ピンクや水色などのパステルカラーが使われていて、雰囲気がやわらかい。

上野の森美術館 特別展『恐竜図鑑 失われた世界の想像/創造』(2023年5月31日~7月22日)

  恐竜を描いた絵画を集めた異色の展覧会。私の子ども時代、二本足の肉食恐竜は背筋を伸ばして立っていたが、1990年代には前傾姿勢が一般的になった。本展には、さらに古い時代、19世紀に描かれた、どこか神話的な恐竜の復元図も展示されていた。海外には、古生物を科学的に復元する芸術「パレオアート」の長い伝統があるようだ。そして福井の恐竜博物館からの出陳が多いことも印象に残った。同館、恐竜の化石や骨格だけではなく、恐竜絵画や恐竜模型も多数コレクションしているらしい。行ってみたい!

東京国立美術館・本館 特別1室・3室 特集『儒教の美術-湯島聖堂由来の絵画・工芸を中心にして』(2023年6月27日~8月6日)

 湯島聖堂由来の儀式道具や美術作品を展示。注目は狩野山雪筆『歴聖大儒像』で、明治以来、15幅が東博、6幅が筑波大学に分蔵されてきた。今回は、明治以来、初めての21幅展示となる。ちなみに筑波大学分は附属図書館の所蔵で、昨年、修復完成記念の展示会が開催されていたが、見に行けなかったので嬉しい。「歴聖」には神農・伏羲や堯舜の像もあった。関連で、鎌倉時代や室町時代に日本で制作された絵画『孔子像』が展示されていたのも珍しかった。

ちひろ美術館・東京 『没後50年 初山滋展 見果てぬ夢』(2023年3月18日~6月18日)

 没後50年の初山滋(1897-1973)を回顧する展覧会。大正時代、雑誌「コドモノクニ」に集まった画家たちによって「童画」という言葉が生まれ、初山は「日本童画家協会」の結成に加わる。展示作品で私の記憶に残っていたのは『ききみみずきん』(「うりこひめとあまんじゃく」も所収)。同館の図書室には関連展示で『おそばのくきはなぜあかい』(「おししのくびはなぜあかい」「うみのみずはなぜからい」も所収)も展示されていて、半世紀ぶりくらいに読みふけってしまった。こういう良質の童話・動画を家に置いてくれた母親には深く感謝そている。同館へは初訪問。いわさきちひろさんの自宅兼アトリエ跡に建てた美術館で、大人も子供も気軽に来ていて、居心地のいい雰囲気だった。

神奈川県立近代文学館 企画展『本の芸術家・武井武雄展』(2023年6月3日~7月23日)

 武井武雄(1894-1983)と言えば、私には子供の頃に読んだ絵本や童話の挿絵画家である。一番好きだったのは『九月姫とウグイス』だ。その武井が、童画・版画の創作と並行して取り組んだのが「真に芸術的な本」の創造だった。詞文、画、印刷技法、素材の調和を追究した画文集「武井武雄刊本作品」(ミニサイズの本が多い)を約半世紀にわたり139作品製作し、「親類」と呼ばれる限られた会員にのみ頒布された。初めて知ることばかりでびっくりしたが、岡谷のイルフ童画館、一度行ってみたい。

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