〇泉屋博古館東京 企画展『花器のある風景』(2025年1月25日~3月16日)
住友コレクションから花器と、花器が描かれた絵画を紹介し、同時開催として、 華道家・大郷理明氏より寄贈された花器コレクションも展示する。ちょっと珍しい視点の展覧会だけど、果たして楽しめるかな?と半信半疑で出かけた。
第1展示室には、江戸~近代の花器が描かれた絵画を展示。村田香谷『花卉・文房花果図巻』には、中国の文人好みのさまざまなうつわ(磁器や古銅や竹籠、ガラスの器も)に彩り豊かな花と果物を自由に盛り付けた姿が続々と並び、豊かで満たされた気持ちになる。藪長水『玉堂富貴図』、原在中・在明『春花図』など、展示作品は中国趣味多めで、必然的に牡丹が多めなのは、大阪の大商人・住友コレクションの特色なのかな。たとえば江戸の庶民には、牡丹ってどのくらい身近な花だったんだろうか?
竹内栖鳳・神坂雪佳の共作『曼荼羅華に籠』は、質素な蔓籠に白いチョウセンアサガオが一輪載っていて、和風な趣きを感じた。椿椿山の『玉堂富貴図』は大好きな作品。元来、玉蘭(白木蓮)・海棠・牡丹の組み合わせを描く中国趣味の画題だが、藤など独自の花を加え、淡彩でまとめた清新な画風は独自の境地を感じさせる。そのほか、確かによく見ると画面の隅に花器が描れている作品が挙がっていて、よく見つけたなあと苦笑してしまった。
第2展示室には、茶の湯の花器を展示。青磁、古銅、竹の一世切などがストイックに並ぶ。しかしこれらは本来「花入」なんだよなあ…と思い返して、花を生けた状態を頭の中で想像してみる。青磁や古銅の花入には、やっぱり牡丹、あるいは椿、サザンカなど、大ぶりで色鮮やかな花を盛り盛りに飾り付けてみたい。舟形の釣花入には、朝顔や桔梗が似合いそう。中には鶴のように首が細かったり、口が狭かったり、何をどう生ければいいのか悩む花器もあった。
第3展示室は「大郷理明受贈コレクション」の花器。19世紀後半~20世紀に制作された金属製(青銅、朱銅、白銅などの種類がある)の花器60件ほどが並んでいて壮観だった。実際に使われた状態の写真パネルが6~7件掲示されていて、それを見ると花器の3倍から5倍くらいある高さの花木を生けている。松とか梅とか、自立する強さを持った植物が多い。そして、植物を固定している水盤は驚くほど浅いのだ。生け花って、極限的に人工的な芸術なんだなあと実感した。
私は雑に投げ入れたような花と花器のほうが安心する。梅原龍三郎の『餅花手瓶薔薇図』『壺薔薇』は、どちらも東アジアふうの磁器の花瓶に、西洋の花である薔薇を山盛りに投げ込んだ感じ。こういう自然な雰囲気のほうが好みである。